1990年8月12,25日、10月27日、11月7日 ニューヨーク州立劇場
A Little Night Music
主な配役:Desiree=Sally Ann Howes
Madame Armfeldt=Resina Resnik
Frederik=George Lee Andrews
Carl-Magnus=Michael Maguire
Charlotte=Maureen Moore
指揮:Paul Gemignani
オケ:ニュー・ヨーク・シティ・オペラ管弦楽団
演出:Scott Ellis
<感想>
僕が最初に生で観たソンドハイムのミュージカルです。ニュー・ヨーク・シティ・オペラのプロダクションであることからもおわかりのとおり、オペラを観る気分で出かけたのです。そして大変なショックを受けて帰ってきました。
ショックを受けた理由はいろいろありますが、一言で言えば、オペラとミュージカルの幸福な結婚を目の当たりにしたといったところでしょうか。
キャストもミュージカル歌手とオペラ歌手の混成部隊でしたが、見事に溶け合っている。まずレジーナ・レズニクの貫禄と気品に満ちたマダムが舞台全体を引き締める。ちなみに、彼女はカラヤンなどと共演した往年の名オペラ歌手です。
そこに、サリー・アン・ハウズの自由奔放なデジレ、ジョージ・リー・アンドリュースのダンディなフレデリック、マイケル・マガイアの高慢なカール・マグヌス、モーリン・ムーアのひねくれシャーロットなどが絡んでいくのです。
ソンドハイムのスペシャリストと言うべきポール・ジェミニャーニ指揮のオケが、優しく彼らの歌を支えていました。
スコット・エリスの演出がこれまたオシャレで、しかも観客を飽きさせない。特に第2幕。本物のクラシック・カーや2人乗り自転車にも驚かされましたが、特筆ものは客たちが着いたのを知ってあわててデジレ達がピクニックの道具を片付けるシーン。バスケットや日傘を片付けた後、最後に4人の召使たちが絨毯を手際よくたたんでよっこらしょと持ち上げ、退場。思わず客席から拍手が出た日もあるほど。
この公演は11月7日にテレビで生放送されています。
その後台本も買い、テレビの録画ビデオを何度も観ながら、意味のわからないページに付箋をつけ、辞書をひき、それでもわからないところはアメリカ人の知り合いにきく、といったことをしばらくやってました。僕にとっては忘れられないソンドハイムとの出会いでした。
A Little Night Music
主な配役:Desiree=Sally Ann Howes
Madame Armfeldt=Elaine Bonazzi
Frederik=George Lee Andrews
Carl-Magnus=Michael McGuire
Charlotte=Moreen Moore
指揮:Paul Gemignani
オケ:ニュー・ヨーク・シティ・オペラ管弦楽団
演出:Scott Ellis
<感想>
昨年の夢よもう一度、という気分で初日に駆けつけました。主な配役は変わっていません。
もちろんこの時も素晴らしい公演ではありました。でも、残念ながら昨年ほどの興奮にまでは達しませんでした。これは僕自身が観慣れてきたせいももちろんありますが、やはり若干にせよ出演者が替わったために一からアンサンブルを作り直している途上という感じがしてしまったのです。
大きかったのはマダム役がイレーン・ボナッツィに替わったこと。はっきりセリフを発音してくれるのはいいのですが、そのおかげで少々口やかましいマダムになってしまいました。他の歌手たちとのやりとりもぎごちないとは言いませんが、昨年はスムーズに流れていた小川がところどころで小石にぶつかって小さなしぶきが上がるような感じ。
客の入りも今一息。ショー・ビジネスって、厳しいっすねえ。
でも僕自身はまた観に行きましたけどね。
Sondheim - A Celebration at Carnegie Hall
主な出演者:Liza Minnelli
Bernadette Peters
Glenn Close
Patti LuPone
Bill Irwin
Karen Ziemba
指揮:Paul Gemignani
オケ:American Theatre Orchestra
<感想>
このコンサートの模様はビデオにもなってますし、日本でもWOWOWで放送されたことがあるので、ご覧の方も多いのではないかと思います。
僕自身のNY滞在も残りわずかになった頃、このコンサートのことを知ってチケットを買いました。最上階の一番後ろ、正に天井桟敷でした。
ただ、その頃出演予定者の中で僕が知っていた演劇界のスターはライザ・ミネリとグレン・クローズくらい。他にもオペラ歌手が何人か出ていたことが行く気になった理由の一つ。さらに言えば、前述のA
Little Night
Musicを観てなければ行かなかったと思います。
実際行ってみると次から次へとご馳走が出てくる贅沢なコンサートなのですが、僕自身最も楽しんだのは前述のシティ・オペラ公演の再現となった"A
Weekend in the Country"でした。その次は僕の大好きなオペラ歌手、Harolyn Blackwellが歌った"Green Finch and
Linnet
Bird"(「スウィーニー・トッド」より)。
もちろんあの場に立ち会えたこと自体は貴重な経験ではありましたが、後から思えば、その頃の僕にとってこのコンサートは「豚に真珠」だったと言えます。
「リトル・ナイト・ミュージック」(A Little Night Music)
主な配役:Desiree=麻実れい
Madame Armfeldt=東恵美子
Frederik=細川俊之
Carl-Magnus=寺泉憲
Charlotte=安寿ミラ
指揮:宮川彬良
演出:ジュリア・マッケンジー
<感想>
日本に帰ってからしばらくソンドハイムのことは遠い記憶の彼方に去っていました。久しぶりに彼の名前を発見したのがこの公演でした。
はっきり言って不安はありました。僕が最初に出会ったソンドハイムのミュージカル、しかも前述の忘れ難い経験をした名作に日本の俳優たちが挑もうというのですから。
んでもって実際どうだったかですが、一言で言えば、日本でソンドハイムをやるには全ての面であまりにも問題が大き過ぎるという現実だけが、ずしんと重くのしかかりました。これは出演者だけでなく、僕も含めた観客も合わせて文字通り「全て」という意味です。