ソンドハイムの魅力



ミュージカル・ファンの皆さんへ


1.「ミュージカル界の怪人」

 まずソンドハイムは米国最高のミュージカル作詩家兼作曲家です。トニー賞の作曲部門を6回受賞、しかも1971年から73年まで3年連続受賞、さらに作詩及び作曲部門に分かれていた時代に両方の賞を同時に受賞しています。このような作曲家は他にはいません。
 「オペラ座の怪人」ならぬ「ミュージカル界の怪人」、「ミス・サイゴン」ならぬ「ミスター・ミュージカル」と言うべき人です。

2.「サウンド・オブ・ミュージック」

 ソンドハイムのミュージカルは全編サウンド・オブ・ミュージック、つまり音楽(及び詩)で勝負しています。
 裏を返せば、ソンドハイムのミュージカルにはほとんど踊りがありません。にもかかわらず、米国で絶大な人気を誇っているのです。

3.「秘密の花園」

 日本のミュージカル・ファンのほとんどの方にとって、ソンドハイムは未知の作品ではないかと思います。でも、ここまでお読みになれば、魅力溢れる作品の宝庫であることがわかります。正にミュージカル界の「秘密の花園」なのです。

 今ミュージカル大好き、という方には少々違和感があるかもしれません。でも、新しいミュージカルに出会いたい方、あるいは今まで観たミュージカルに飽き足りない方々にはお薦めです。



オペラ・ファンの皆さんへ


1.モーツァルト並の美しさ

 ミュージカル・ファンの間でも知られてないのに、ましてやオペラ・ファンの方々となればソンドハイムを知らなくて当然です。
 でも、彼の作品を観始めると、一度聴いたら忘れられないソロや思わず聴き惚れてしまう重唱がたくさんあることに気付くはずです。メロディ&ハーモニーの美しさは「現代のモーツァルト」と形容しても大げさではないと思います。

2.ベートーヴェン並のしつこさ

 ただ美しいだけではありません。彼の作品には、単純な音型をしつこく繰り返す曲がたくさんあります。これを聴いていると別の作曲家が頭に思い浮かぶはず。そう、ベートーヴェンです。

3.ロッシーニ並のユーモア感覚

 さらに、彼の作品の多くは喜劇です。どこが面白いかと言えば、例えば早口ソング、人間生活に対する鋭い風刺。となると、また別の作曲家のことを思い出します。そう、ロッシーニです。「ミュージカル・ブッファ」と呼びたくなるのがソンドハイムのミュージカルです。

4.ヴェルディ並の生命力

 オペラと言えばまず思い浮かぶのがヴェルディ。彼との共通点もあります。彼の音楽は美しいと同時にストレートに聴衆の心をつかむものがあります。彼のミュージカルを観ていると「生きててよかった」と思う場面にしばしば出くわします。それだけ彼の音楽には生命力が満ち溢れているのです。

5.ワーグナー並の構成力

 もう1人の代表的オペラ作曲家、ワーグナーのファンも聴き逃せません。彼の得意技の一つであるライト・モチーフはソンドハイムにとっても重要な手法です。実に効果的に使っています。

 ソンドハイムは限りなくオペラに近いミュージカルだと思います。その意味でオペラ・ファンの方々にもお薦めです。