<どんな作品?>
子供がほしいパン屋夫婦が自らの願いをかなえるため、魔女の要求するものを集めようとしますが、そのために有名なおとぎ話の登場人物の人生に微妙な影響を与えていく。夫婦は無事子宝をさずかり、おとぎ話の人物たちはハッピーエンドを迎えるが、すぐさま彼らに別の災難が襲いかかる。
シンデレラ、赤頭巾ちゃんなどみんなお馴染みのキャラクターがたくさん登場するので子供でも楽しめるミュージカル、と言いたいところですが、ストーリーはソンドハイム流(正確にはラピン流でしょうが)ここに極まれりと言っていいくらいの凝りようで、ついていくのはなかなか難しいです。特に第2幕は意外な方向に話が進みます。凝り過ぎとさえ言えるかも知れません。
これだけ複雑な作品となると、そこから何を感じるかも人それぞれだろうと思います。人はいかに生きるべきか、幸せとは何か、命とは何か、正しいこととは何か、いろいろなことを考えさせてくれます。観る人の生き様によって感じ方も変わってくる、鏡のようなミュージカルと言えるかもしれません。
<登場人物>
ナレーター
シンデレラ
ジャック
ジャックの母
パン屋
パン屋の妻
シンデレラの継母
フロリンダ:シンデレラの義理の姉
ルチンダ:シンデレラの義理の姉
シンデレラの父
赤頭巾ちゃん
魔女
シンデレラの実母
謎の男
狼
赤頭巾ちゃんのおばあさん
ラプンゼル
ラプンゼルの王子
シンデレラの王子
執事
巨人
巨人の妻
白雪姫
眠れる森の美女
<みどころ、ききどころ>
[第1幕]
○第1場:シンデレラの家、ジャックの家、パン屋
3軒の家が並んで舞台に現れます。
1.プロローグ−Into the Woods
ナレーターがおとぎ話を子供に聞かせるような調子で登場人物を紹介。シンデレラ、ジャック、赤頭巾ちゃん。しかし、そこに私たちの知らない人物が紛れ込む。パン屋の夫婦とその隣りに住む?!魔女。彼らにはそれぞれの望み(wish)があり、それをかなえるために森へ向かう。
内容は以上のように単純ですが、わずか数分のこのプロローグは、ひょっとしたらソンドハイム全作品の中でも最高の出来と言える場面の一つではないかと思います。
全く異なった世界で生きているシンデレラ、ジャック、赤頭巾ちゃん、パン屋の夫婦が最初は"I
wish"を共通の出発点として歌い始め、それぞれの望みをてんでばらばらに観客に訴えかけ、そこに他の人物がからんでいき、一時は混沌とした状態になるのですが、最後には全ての登場人物が"Into
the woods"のキーワードで一つにまとまる。そのありさまが音楽と芝居で表現され尽くしている。ただただ圧倒され、聞き惚れ、見惚れるのみです。
さて、先に進む前に押えておくことが一つあります。パン屋の夫婦は子供がほしいが、それには魔女の呪いを解かねばならない。そのために魔女は三夜の間に以下の4つの部品(portion)を揃えるよう夫婦に要求する。
牛乳のように白い牛
血のように赤いマント
とうもろこしのように黄色い髪
金のように澄みきった靴
(うん?アイコンと物が合ってない?ま、この際細かいことは気にしないことにしましょう。)
ははーん、という感じですね。第1幕の大半はこの部品探しに焦点が当てられます。それを頭に入れておかないと、何を観てもちんぷんかんぷんになります。ここでは節目ごとに、これらの部品がどういう状態にあるかもお示ししておきます。
○第2場:森の中、遅い午後 ☆第一夜☆
まずシンデレラが実母の墓を訪れる。そこには埋葬した時に植えた木が成長し高くそびえている。シンデレラが舞踏会に行きたいという希望をつぶやくと母が現れ、美しいドレスを娘に与える。シンデレラは喜んで退場。
入れ替わりにジャックが牛を連れて登場。そこへ謎の男が現れ、牛を豆と交換するようそそのかして去る。ジャックは不思議がるがそのまま牛を連れて退場。
次に赤頭巾登場。行く手に狼が現れ、彼女の行先やバスケットの中身などを尋ねる。赤頭巾は警戒する様子もなく正直に答え、おばあさんの家の場所まで教えてしまう。
2.Hello, Little Girl
狼のソロ。赤頭巾を誘惑しようとする狼。赤頭巾は止まりかけるが母の言い付けを思い出し、最後は振り切って立ち去る。邪悪な微笑を浮かべる狼。
狼が赤頭巾の後を追って退場した後、様子を見ていたパン屋が現れる。赤頭巾の身を案じるパン屋だが、そこへ魔女も現れ、早くマント=赤い頭巾を奪うようせかす。その時娘のラプンゼルの歌声が聞こえるので、魔女は声の方向へ退場。
入れ違いにパン屋の妻が登場。頼りない夫を助けようと後を付けてきたのだが、パン屋は邪魔扱いする。
2人が言い争っているところへ折りよくジャックが登場。パン屋は持っている豆6粒のうち5粒と牛を交換することに成功。
【獲得】
3.I Guess This is Goodbye
ジャックが牛に別れを告げる歌。
ジャック退場。
4.Maybe They are Magic
パン屋の妻のソロ。牛を得るために2人は「これは魔法の豆だ」とちょっとしたウソをついたわけだが、彼女は何とかそれを正当化しようとして歌う。音楽の美しさとマキャベリズム風歌詞のアンバランスが面白い。
パン屋は妻に帰宅するよう促し、2人は別々の方向へ退場。
魔女が現れ、ラプンゼルの住む城の下にやってきて、彼女の髪をつかんで無理やり昇ろうとする。別の場所では王子がラプンゼルを探している。
また別の一角に変わり、赤頭巾がパン屋に出会う。パン屋は強引に頭巾を奪うが、彼女が悲鳴を上げるので、すぐ返してしまう。赤頭巾はおばあさんの家へ急ぐ。元々お人よしのパン屋だが、ここは心を鬼にして頭巾を再度奪う決意を固め、彼女の後をつけて行く。
おばあさんの家。赤頭巾はおとぎ話どおりに狼に飲み込まれ、狼は一眠りする。そのいびき声がおかしいことに気付いたパン屋はおばあさんの家に踏み込み、狼の腹を切り裂く。中から赤頭巾とおばあさんが出てくる。
5.I Know Things Now
赤頭巾のソロ。彼女がこの出来事で得た教訓、すなわち自分のことは自分の知恵と力で守ることについて、多少斜に構えながら歌う。
赤頭巾は命を救ってくれたお礼としてパン屋に頭巾を譲る。
【獲得】
ジャックの家では、おとぎ話どおり、牛を豆と交換したジャックに母が激怒するが、豆を植えると翌朝天までつるが伸びる。
場面は森の一角に戻る。パン屋の妻が牛を連れて家に帰る途中、城から逃げ出してきたシンデレラに遭遇する。王子が追ってくるので、シンデレラの願いを聞いて妻は王子をやり過ごす。
6.A Very Nice Prince
妻とシンデレラの二重唱。妻はシンデレラに王子のことを訊くが、期待する答えが返ってこない。
そのうち妻はシンデレラの靴に気付く。その隙に牛が逃げ出す。シンデレラも逃げ出す。妻は両者の板ばさみとなるが、結局牛を追う。
☆第一夜経過☆
【紛失により、
のみ獲得】
登場人物が入れ代わり立ち代わり一夜明けた時点の感想を歌い、プロローグ"Into
the Woods"終盤の合唱が繰り返される。
○第3場:森の中 ☆☆第二夜☆☆
パン屋が木の根元で眠っている。そこへお金がどっさり入った袋をかついだジャックが現れる。
7.Giants in the Sky
ジャックが雲上の巨人の国での冒険談を歌う。
パン屋が起きると、すっかり金持になったジャックがいるので驚く。ジャックは金貨5枚をパン屋に与え、牛を返すように言うが、牛はいない。ジャックは牛を探しに退場。
思わぬ臨時収入に満足しかけるパン屋だが、そこへ謎の男が登場し、パン屋から金貨を取り上げ、呪いを解くことに専念するようアドバイスして去る。
怒るパン屋の元に妻が登場。牛が行方不明になったと聞いてパン屋はさらに怒り、妻をなじる。そこへ魔女が念押しする声がするので、2人は捜索再開すべくまた反対方向に退場。
森の中の別の一角。シンデレラの王子とラプンゼルの王子が出会う。2人は兄弟である。
8.Agony
王子たちの二重唱。2人とも求める女性を得られない苦しみを歌う。
彼らが退場した後、パン屋の妻が現れる。続いてジャックの母登場。互いに探し物(牛とジャック)の手がかりを得られず、別々の方向に退場。
パン屋が引き続き牛を探していると、謎の男が牛を連れて現れ、パン屋に引き渡してすぐに姿を消す。
【獲得】
一方妻はラプンゼルの塔にやってくる。王子の振りをして彼女の髪の毛を下ろさせ、その一部をちぎり取る。
【獲得】
妻が走り去ると、運良くシンデレラに再会。走りづらい(当たり前だ、片方しか靴を履いてないのだから)のでシンデレラは靴を脱ぐ。そこへ王子が近づく気配がするので、シンデレラは逃げようとする。妻は靴を奪おうとするが失敗。
シンデレラを追う王子と執事、王子を追うシンデレラの継母たちが妻の元を通り過ぎた後、牛を連れたパン屋が登場。彼はそこで初めて妻が「黄色い髪」を得たことを知る。
9.It Takes Two
パン屋夫妻の二重唱。森で苦労したおかげで、2人は助け合うことを学び、真の夫婦となる。
そこへ金の卵を産む鶏が駆けてきて、ジャックが追ってくる。ジャックは牛を返すようパン屋に求めるが、パン屋は拒否。妻はパン屋がジャックから金貨5枚受け取ったことを非難するが、パン屋もらったものだと弁解。3人が言い争ううちに、牛が死んでしまう。さっきの幸せな二重唱の題名にあやかって?部品も2つになってしまう。
☆☆第二夜経過☆☆
【死亡により、
のみ獲得】
○第4場:森の中
登場人物たちが二晩明けた時点の感想を思い思いに歌う。
○第5場:森の中 ☆☆☆第三夜☆☆☆
死んだ牛を埋めた後代わりの牛をどうやって手に入れるか、またもパン屋夫婦はもめる。2人は反対方向へ退場。
森の別の一角。魔女が娘のラプンゼルに向かい、王子に会ったことを責め立てている。
10. Stay With Me
魔女がラプンゼルをたしなめるソロ。
魔女はラプンゼルの髪を切り、彼女を引きずりながら退場。
入れ代わりにパン屋登場。謎の男がついてくる。牛がいなくなったことを知った男はさっき取り上げた金貨の入った袋をさりげなく落として退場。パン屋は袋を拾って退場。男も退場。
さらに別の一角でジャックと赤頭巾(と言っても狼皮の頭巾をかぶっているのでもはや「赤」頭巾ではないのだが)が出会う。赤頭巾は護身用にナイフを持っている。ジャックは金の卵を産む鶏を持っている。赤頭巾は驚くが、ジャックがさらに金の竪琴の話をすると、目の前にないので信じないと言う。彼女はジャックをうそつき呼ばわりして退場。怒ったジャックは竪琴を得るべく反対方向に退場。
ラプンゼルの塔。王子が彼女の髪をつかんで昇っていくと、何と中にいたのは魔女。魔女は王子を突き落とす。王子は茨のとげが目に刺さって失明する。
入れ違いにシンデレラ登場。
11. On the Steps of the Palace
シンデレラのソロ。ようやく彼女は王子のことを正面から考え、これからどうすべきか悩む。
そこへ妻が現れ、残った豆粒と靴を交換するよう持ちかけるが、シンデレラは豆を捨て去る。しかし、妻は自分の靴と引換にシンデレラの靴を得ることに成功。
【獲得】
執事がやってきてシンデレラの行方を訊くが、彼女はしらを切る。そこへパン屋が別の牛を連れて登場。
【獲得!?】
執事は靴を妻から奪い、取り返そうとする妻に謎の男も加わって争っていると遠くで大音響。続いてシンデレラの王子が靴の片方を持って現れる。執事は靴を妻に返す。
そこへジャックの母が血相を変えて登場。さっきの大音響は死んだ巨人が天から落ちてきた音だったのだ。王子は彼女を落ち着かせ、執事とともに退場。
魔女が部品の確認にやってくる。髪と靴とマントは合格、しかし、牛は白そうで白くない。普通の牛にパン屋が白い粉をまぶしただけだったのだ。
【獲得】
パン屋は確かに白い牛を得たが死んだと魔女に告げると、ならば生き返らせると魔女は言う。パン屋夫婦と魔女は牛の墓へ向う。そこへ金の竪琴を持ったジャックと彼の母も現れる。
魔女が牛を生き返らせる。ついに全ての部品が揃う。
【獲得!!】
さて、これからどうするのか。靴と髪とマントを牛に食べさせ、乳を出させる。ジャックが搾るが何も出てこない。髪をラプンゼルから奪ったことを知った魔女はびっくり。魔女もさっきラプンゼルを責め立てた時に髪に触ってしまった。彼女は4つの部品のいずれにも触ってはならないのだった。
そこへまたも謎の男がとうもろこしを持って登場。皮の中のひげを牛に食べさせると、今度は乳が出てくる。謎の男はパン屋の父であったことがわかるが、間もなく息絶える。
乳を魔女が飲むと、なーんと、若い美女に変身する。
☆☆☆第三夜経過☆☆☆
○第6場
謎の男の衣裳が剥ぎ取られると、実はナレーターであったことがわかる。
12. Ever After
彼が結末を紹介していく中で登場人物たちの歌が加わっていく。
パン屋夫婦は父と死に別れるがめでたく子供を授かる。
シンデレラは王子と再会して結婚し、義理の母と姉たちは偽ってシンデレラの替わりになろうとしたため失明の報いを受ける。
ラプンゼルは双子を授かり、盲目の王子と再会し、彼女の涙が王子の視力を回復させる。彼女の母である魔女は一緒に暮らそうと言うが、ラプンゼルは拒否。魔女は娘を取り戻そうとするが、若さと引換に魔力を失う。
"Into the Woods"のメロディに乗って登場人物たちはハッピーエンドを歌い上げるが、ナレーター1人「続く…」と歌う。シンデレラが捨てた魔法の豆から芽が出てつるが天に伸びていくのを彼らは知る由もない。
[第2幕]
さて、物語は思わぬ方向へ展開するのですが、ご紹介する前に以下の登場人物に印をつけることにします。なぜそんな必要があるのかは、読み進んでいただければおわかりになると思います。
ナレーター=
シンデレラ=;シンデレラの父、継母、フロリンダ、ルチンダ=
シンデレラの王子=;執事=
ジャック=;ジャックの母=
パン屋=;パン屋の妻=
;2人の子=
赤頭巾ちゃん=;赤頭巾ちゃんの母=
;赤頭巾ちゃんのおばあさん=
魔女=
ラプンゼル=;ラプンゼルの王子=
○第1場:シンデレラの城、ジャックの家、パン屋
第1幕同様舞台が3つに分割され、それぞれシンデレラが住む城、すっかり裕福になったジャックの家、パンの材料と赤ちゃん用品で散らかったパン屋が並ぶ。
1.プロローグ−So Happy
それぞれ次の小さな望み(wish)が出てきてはいるが、基本的には幸せな生活を送っている…ところに突然大音響。パン屋の家が壊され、隣りの魔女(正確には元魔女だが…)の庭が荒らされ、大きな足跡が残っている。第1幕幕切れで成長した豆のつるを伝って別の巨人が降りてきたらしい。パン屋はジャックとシンデレラに知らせる。
パン屋が家に戻ると赤頭巾ちゃんが来る。彼女の家が壊され、母がどこにもいないと言う。
(犠牲者第1号=
)
パン屋夫妻、ジャック、シンデレラ、赤頭巾ちゃんは第1幕とはそれぞれ別の以下の目的のために再び森へ向う。
パン屋夫妻=壊れた家から避難するため
ジャック=巨人を見つけて倒すため
シンデレラ=母の墓の様子を観に行くため(お忍びで行くため第1幕冒頭と同じ格好に)
赤頭巾=おばあさんの家に避難するため
(生存者=)
○第2場:森の中
同じ森でも第1幕とは様子が違う。あちこちで木が倒れ、鳥の鳴き声もしない。
魔女はラプンゼルに再会するが、ラプンゼルは魔女の言葉に耳を貸さず逃げ去る。魔女は追う。
ラプンゼルの王子とシンデレラの王子が登場。ラプンゼルは不幸な境遇に慣れ過ぎたために今の幸せに耐え切れず逃げ出したのだと言う。シンデレラは巨人探しに来ている。
2.Agony
第1幕と基本的に同じ曲だが、歌詞は異なる。シンデレラの王子は眠れる森の美女、ラプンゼルの王子は白雪姫を見つけ、今度は彼女たちを得られないものかと苦しむ。全く男ってやつは…
その時遠くで悲鳴が聞こえる。ラプンゼルの王子はラプンゼルを追い、シンデレラの王子も退場。
入れ違いにパン屋夫婦と赤頭巾ちゃんが登場。赤頭巾は森の地形がすっかり変わっているので動揺。そこへ執事とシンデレラの家族たちも登場。城が巨人に破壊されたので逃れてきたのだと言う。魔女も登場。魔女の庭もパン屋の家も破壊されたと言う。
再び地鳴りがする。一同が見上げると、そこに巨人がいる。ジャックに殺された巨人の妻が復讐を果すためにやってきたのだ。彼女は彼らにジャックの居場所を尋ね、いないと知ると彼を連れてくるまでここで待つと言う。
さあこうなると一同は烏合の衆も同然。魔女は、巨人の妻が近眼であるのをいいことに、ジャックの代わりに誰かを犠牲にしようとして周囲のひんしゅくを買う。一同はついにナレーターを犠牲に差し出すことに決める。抵抗するナレーターを彼らは無理矢理巨人の妻に差し出すが、彼女はジャックでないと知るとナレーターを放り出す。
(犠牲者第2号=
)
ジャックの母が現れ、息子の命乞いを始める。巨人の妻が怒るのも恐れずパン屋や王国に責任をなすりつけ、しかも息子は隠したので絶対見つからない、などとわめくので、執事が背後から彼女を殴って黙らせる。
ラプンゼル、続いてラプンゼルの王子も登場。執事はラプンゼルが閉じ込められていた塔にジャックがいると言い逃れするので、巨人の妻は歩き出すが、王子の下から逃げようとしたラプンゼルがちょうど彼女の足元へ。王子は追うが時既に遅し。
(犠牲者第3号=
)
ジャックの母も瀕死の状態。パン屋に息子を守るよう約束させて息絶える。
(犠牲者第4号=
)
(生存者=)
3.Lament
魔女が死んだ娘、ラプンゼルに向かって歌うソロ。"Children won't Listen."子供は親の言うことなんか聞きゃしない。ハ長調の短い歌だが、これで魔女の絶望感を表現してしまうとは。
魔女が歌い終わらないうちに執事とシンデレラの家族たちはパン屋達を残して、「秘密の王国」へ避難する。
(避難?=)
(生存者=)
魔女はあくまでジャックを探し出しに行く。
残ったのはパン屋夫妻と赤頭巾ちゃん。先にジャックを見つけるべく、もめた末に赤ちゃんを赤頭巾に預け、パン屋と妻が逆方向に100歩ずつ歩いて探しに行くことにする。
妻はシンデレラの王子と出会う。森の中1人でジャックを探す妻の勇気に王子は心動かされ、妻にキスする。
4.Any Moment
シンデレラの王子が妻を口説くソロ。
妻はなおも抵抗するが、王子はすっかりロマンス気分で妻を連れ去る。
森の別の一角ではパン屋が歩数を数えながら歩いている。するとシンデレラが破壊された母の墓前で泣いている。パン屋は城に戻ろうとするシンデレラに事情を知らせ、彼女を連れて元の場所へ戻っていく。
他方、シンデレラの王子と妻はすっかりラブラブ状態。しかし、次の瞬間王子は現実に戻る。
5.Moments in the Woods
王子→妻の順で歌うソロ。
王子は巨人を探しに行く。残った妻は、森での出来事は全て束の間のことと悟り、森から出る決心をする。
しかし、そこに巨人の妻が近づいてくる。パン屋の妻は逃げ惑うが、悲鳴を上げて舞台から消える。
(犠牲者第5号=
)
(生存者=)
場面が変わり、パン屋、赤頭巾ちゃん、シンデレラが妻の行方を心配している。そこへ魔女がジャックを連れてやってくる。ジャックはパン屋に妻の死を知らせる。ショックを受けるパン屋。
しかし、悲しんでいる場合ではない。魔女はジャックを巨人の妻に差し出そうとするが、シンデレラと赤頭巾は反対。
6.Your Fault
さあここから、ジャック、パン屋、魔女、赤頭巾、シンデレラによる醜い「責任転嫁五重唱」が繰り広げられる。責める者と責められる者が5人以外の人物も含めて目まぐるしく入れ替わった末、結論は豆を作り出した魔女が悪いということになる。
7.Last Midnight
みなに責められた魔女のソロ。人間と異なる世界に生きる自分に責任転嫁をする彼らに対して最後の呪い、すなわち彼らだけを残して去ることを告げて消える。
(犠牲者第6号?=)
(生存者=)
いざ魔女がいなくなってしまうと、今度は一同、自分を責め始める。パン屋は1人でみなの元を去るが、すぐ死んだはずの謎の男に出会う。パン屋は彼から最初に豆を得たいきさつを知る。妻(つまりパン屋の母)にプレゼントしようと魔女の畑からうっかり摘み取ってしまい、彼女はそのせいで死んだのだと言う。
8.No More
パン屋と謎の男の二重唱。絶望するパン屋に謎の男はなおも希望を持って生きるよう励ます。
再び生きる力を得たパン屋はみなの元に戻る。一同、やっと冷静になってどうやって巨人の妻を倒すか、策を練る。松脂を地面に塗りつけ、そこへ巨人をおびき寄せる。シンデレラの友人の小鳥たちが巨人の目をつつき、ジャックとパン屋が木の上から頭に一撃を与えることに。ジャック、パン屋、赤頭巾ちゃんは退場。
シンデレラが1人で待っていると王子が現れる。彼女は王子に別れを告げる。小鳥から王子の浮気を知ったのが直接の理由だが、同時に彼女は普通の生活を望んでいる。王子は、浮気を止める約束はしないが彼女への変わらぬ愛を告げて去る(それにしても、王子たちはなぜいつまでたっても巨人に出会わないのだろう?)。
赤頭巾がやって来る。準備は上々。しかし、おばあさんが死んだことを知って泣き出し、さらに巨人を殺そうとしているのを知ればお母さんもおばあさんも嘆くだろうと心配し始める。
(犠牲者第7号=
)
(生存者=)
9.No One is Alone
まずシンデレラが赤頭巾に歌いかける。人は1人で何事も決めなければならないが、ひとりぼっちではない。ちょっと禅問答みたいな歌詞である。
木の上にいるジャックとパン屋。そこでジャックは母の死を初めて知り、母を殺した執事を殺そうとする。パン屋は止めようとするがジャックは聞かない。
パン屋がジャックを諭す二重唱にシンデレラと赤頭巾の二重唱も加わって四重唱となる。
さっきは壮絶な責任のなすり合いをしていた4人だが、今度はシンデレラとパン屋が若い赤頭巾とジャックに人の生きる道を優しく教えようとする。"Your
Fault"とともに簡単な音型をしつこく繰り返しながら曲が進んでいくというソンドハイム得意のパターンで書かれているが、同じ手法で「乱」と「和」を見事に表現している。この幕一番の聴きどころかも。
しかし四重唱は巨人の妻の足音で中断される。シンデレラと赤頭巾が松脂の罠へ誘導し、小鳥たちとジャック、パン屋が攻撃し、さしもの巨人の妻も倒される。
結局生き残ったのは、
+
となる。
10. フィナーレ−Children will Listen
既に死んだ者たちも加わってフィナーレへ。2人の王子は思い通りに眠れる森の美女と白雪姫をそれぞれゲット。いい気なもんである。
王子以外の生存者5人は一緒に生活することにする。
魔女は、従わないかもしれないが"Children will listen."と歌う。それをきっかけに一同は、人生には森のように危険や誘惑があるが、注意して力を合わせて希望を捨てずに生きようと歌う。今度こそめでたしめでたし、と思ったら最後にシンデレラが"I
wish!"と叫ぶ。ほんとに終わり?また振り出しに戻るのか?