ZEUSUーゼウスー

 

#1 神と俺

 

「この空はいつまで曇っているつもりなんだろう?なぁ、アポロ。」

『俺にもわからねぇよ、英悟。いつまでも曇っているかもな』

赤い携帯をもち夜空を見上げている少年が言った。

「英悟君、スタジオへ・・・」

「うん、分ってるよ。清吾さん。」

少年は黒い車に乗っていった。

 

「日思井英悟君、入ります!!」

「おはようございま〜す!」

「「「おはようございます」」」

「シーン15から入ります!」

人気ドラマの収録中。

日思井英悟、春日井竜貴、白樺波音の男の子3人組グループ『Wave』。

リーダーの日思井英悟は売れっ子のなかの売れっ子。

テレビをつければどのチャンネルでもでているような人。

そんな日思井英悟も中学生。学校と仕事の両立で忙しい。

「カット!!」

「お疲れ様でした〜!」

「今日はここまでで。」

「次は歌番組の収録です!」

ドラマの収録後、すぐさま歌番組の収録場所へ局内を忙しく動く。

収録場所の廊下で二つの人影が見えた。

「遅い〜英悟!!!」

「時間厳守だといっただろう?」

白樺波音と春日井竜貴だ。

「ごめん!!ドラマが長引いてさ!!」

「まぁ僕も今来たからいいけどね!」

かわいらしく微笑む波音。

その容姿からは女の子に思えてしまうほどの愛らしさだ。

そのせいか、お姉様からの支持がとってもあつい。

「俺もドラマあったけど、ノーミスでやったから余裕でこれたぞ。」

毒舌的なツンツン少年、竜貴。

クールすぎる性格で冷酷少年とよく言われているがどんな役にでもなりきり、すべてをやりきるので評価をえている少年だ。

「『Wave』の皆さんお願いします!」

「は〜い!」「はい。」「ははは〜い!」

楽屋で和んでいるこの日々、この時間が俺には幸せでたまらない。

この日々はなんとしても死守する。

俺はいつもそう思っている。

スタッフの皆さんにつれられて小さな会議室に集まった。

「今回の企画は『SUNDAY』さんとご一緒になります。」

「「「ゲッ!!」」」

そこにいたのは俺たち、『Wave』とはライバル的存在のグループ『SUNDAY』。

女の子3人組の人気急上昇中のグループで、風野伊里、蜂賀六、根尾春の3人組。

明るすぎる風野伊里、冷酷な蜂賀六、ネコのような根尾春。

個性がずば抜けて、今までのアイドルという壁をはらってきた3人は多くの評論家から支持を得ている。

「よろしくお願いしま〜す!『Wave』の皆様。」

「よろしくニャv」

「・・・・・・・・」

こいつらと仕事をすると無駄に力を使う。

「『Wave』×『SUNDAY』のスペシャルユニット『太陽の波』で活動していただきます。」

「「「・・・・・・はい」」」

嫌なものでもそれをこなさなければならないのがプロの世界。

これからは『Wave』と『太陽の波』とを両立していかなくてはならない。

コンサートも倍になることも覚悟して置いておかなければならないなど苦労が頭のなかで多く浮かんでいった。

その後は歌の練習。

POPさを潰さずに少し寂しさなところを気をつけて歌ってください。では、英悟君から」

「はい。」

マイクの前に立てばみんなが真剣な眼差しで取り組む。

『白い雲を通り抜ければ 目の前に澄んだ心が待っている 夢のように儚く散る事の無い心が 空に届け この願い すべての人と願いたい 君の幸せを』

リズムをつかむためにかなりの時間がたっていた。

「あ〜疲れたよ・・・・」

「今日はもう終わりですよ、英悟君。」

「分りました〜」

「明日は午後からだから、午前だけ学校に行けるよ」

深夜2時にやっと家に帰れた。

帰ると寒い空気がブワッと顔をなでた。

明かりもないし暖房も効いていない。

両親は海外に行っていてもう数年帰ってこない。

それにあまり両親との記憶も無い。

好きなようにいつもやってきただけだった。

ベットにもぐりこんだ。

その瞬間、不思議なほどの違和感を感じた。

赤い携帯が震える。

「アポロ?・・・・ZEUSUが動き出した?

赤い携帯は神と俺をつなぐ架け橋。

神は世に存在してはならないものの存在を所有者に教える。

所有者は神に従わなければならない。

使徒として、所有者として。

英悟は違和感の感じるままに外へふらふらと出て行った。

辿り着いたのは多くの古びたビルが立ち並ぶ場所。

流魂街・・・・暗黒街・・・・

様々な呼び名で呼ばれているが定まったものはない。

赤い携帯の待ち受け画面は大きな文字で”Z”と書かれていた。

「ドコ・・・・ZEUSUは・・・」

広い空き地に出てみた。

しかし、目の前に広がるのは古びたビルのみ。

「よぉ・・・英悟。」

背後からの冷たい声。

竜貴だった。

「お前もZEUSU?」

手には真っ青な携帯が握られていた。

彼もまた神の使徒だった。

「ああ。アポロに呼ばれた。竜貴は?」

「同じく。俺もマルスからの指令。そのうち波音も来るだろう」

Wave』人間はすべて神の使徒。

それぞれの神の意思に従う者。

「しっかし・・・・すべてがZEUSUに見える・・・・」

ZEUSU”、神を妨げる物。

人に取り付いたり、取り込んだり。

人々から邪悪を奪い自身を復活させようと考える物。

神の王から成り下がってしまった神々の破片。

これを収集、破壊するのが自分たちの使命。

神にあたえられた本当の仕事。

「今晩は。神の使徒の少年達。今夜は豪華ゲストのオンパレードですね」

闇の中から現れた男は影のように潜んでいた。

竜貴も俺も気づかなかった。

「アポロにマルス・・・・素晴らしい収穫です。我らがZEUSU様に捧げましょう」

影のように黒く透き通っている人。

影から現れた男は言った。

「さぁ、その携帯を下さい。」

「何で?」

「僕が君たちに代わって神の使徒になって差し上げると言っているのですよ」

「別に困ってはいない。マルスとは妙に息が合うんでね」

「・・・・・では、実力でねじ伏せなければならないのですか?無駄な戦いは好みません。」

「じゃあ下がってください。ZEUSUを置いて。」

「残念ながらソレは出来ません。ZEUSU様に反してしまいます。」

彼は残念そうに笑った。

感情の一欠けらも無い笑みで。

「それこそ残念だ。闘わなくてはならないな」

竜貴は真っ青な携帯を夜空にかざした。

戦争の暴悪を司る神、マルスよ!使徒、春日井竜貴と共鳴せよ!!」

輝く光が竜貴を包み込んだ。

「神様の光臨ですか。いいんですか?アポロを呼ばないで。」

「マルスで十分じゃないんですか?」

彼は微笑みを崩さぬまま俺に話し掛けてきた。

そんな俺は言いながらも不安を感じでいた。

余裕しか感じられない笑顔。

何かを隠し持っている、平穏を保てるほどの何かを。

マルスは戦争の神。

戦闘に関してマルスより強い者などいないはず。

居るとすれば神々の王、ゼウスのみ。

「僕は一様ZEUSU様の欠片をもっているんですけどね・・・・」

余裕の原因はソレだった。

2つのガラスの破片のようなものを胸に当てる。

竜貴が携帯をかざしたときのような光が彼を包む。

「アアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」

彼は叫び始めた。

姿がドンドン変わっていく。

邪悪な顔形になっていく。

人間だった彼はもういない。

笑みが張り付いたバケモノと化していた。

「サアハジメマショウ」

バケモノは襲い掛かる。

大きな口を空けてすべてを飲み込もうとする。

「俺がひきうけよう」

マルスの力を受けた竜貴が俺の目の前に立った。

姿は狼のように変化した竜貴。

「コレ、スピード速くてついていけないかもしれないからな。」

速すぎたスピード。

コレについていけるもの・・・は・・・・・

「オソイ・・・・オソスギマス・・・・」

ZEUSUの使徒はそれ以上に速かった。

一瞬にして背後に回り背中にエルボーをくらわせた。

「グハッ・・・・・!!!!」

狼の姿になった竜貴は血反吐をはいた。

「竜貴ッ!!!!!」

苦しむ友達は見捨てられない。

あの平和な時間を取り戻すために。

俺もアポロ様の力を借りないと!!!」

「そうしてくれ。いくらマルスでも欠片2つはキツ・・・・」

光明・予言の太陽神、アポロよ!!使徒、日思井英悟と共鳴せよ!!!!」

赤い携帯を夜空に向ける。

同じように光が英悟を包んだ。

「イマハヨル。アポロイミナイヨ!!!!」

太陽神は夜に弱い。

光のささない場所では力は半減してしまう。

そういうとアポロを狙って襲い始めた。

「あのさ、俺の聖鳥知ってる?」

そういうと片手をバケモノに向けた。

「行け。」

片腕に従うように町中のカラスが一斉に襲い掛かる。

「ウォオオオオオオオ!!!!!!!」

目、顔、手、足。すべてを抉り取る。

攻撃がやむころには何も無かったように肉片だけが残った。

「あ・・・・欠片ドコだろ・・・」

「相変わらず強いな、アポロ。」

マルスの笑みに大きな輝きを持った笑顔を返す。

「まぁな!一様、王の息子だからな!」

その後、光り輝くZEUSUの欠片を2つ取り出して首から下げるために瓶に入れた。

「今晩は。神の使徒さん。」

また闇からドコからともなく現れた一人の男。

また敵なのか・・・・

しかし、今度は腰に紫色のエプロンを巻いている。

黒い蝶の絵の隣には『暗』と書かれたエプロンにニッコリと微笑む顔。

「コレ、いらないんですか?」

その人はカラスのせいでぐしょぐしょになった肉片達を指差した。

「何者ですか?」

神との共鳴をといた竜貴が冷たく聞いた。

「これ・・・・名乗るのが遅くてすみません。暗黒街でちょっと店をやっている者ですよ。名前は黒蝶。是非、御用があったら来て下さいね」

またニッコリ笑うと名刺を取り出して俺と竜貴に渡した。

暗黒街4丁目13番地9 暗黒街物資取り扱い黒蝶商店 店長 黒蝶』

長い店の名前である。

攻撃しようとも考えられず、俺たちは大人しく従った。

携帯も反応しなかったし、適当に肉片をあげてしまった。

その後、黒蝶は数人の少女と少年を使って肉片を運び、どこかに消えていってしまった。

「ねぇ・・・・アポロ・・・」

『んだよ?英悟。』

「さっきの人はなんだったのかな?」

『さぁ・・・・・』

「おめ、予言者だろ?」

『でも知らんものは知らねぇんだよ。』

二人で話した後、俺は目覚ましもかけずに眠ってしまった。

 

次の日は大寝坊だった。

その後清吾さんに送ってもらっても11時45分にやっとこさで教室に辿り着いた。

「すいません!!まだ授業ありますか?!」

おもいっきりドアをひいて教室に飛び込んだ。

「キャアーーー!!英悟君〜〜〜今日来てよかった〜」

「日思井・・・・あと15分だ。」

先生がニッコリと微笑みながら言った。

「そうですか・・・・ソレだけ受けていきます。」

俺はホッとして自分の席に目を向けた。

隣には空いた机ではなく人が座っていた。

顔は何も感情がこもってないかのような顔だった。

声をかけようかと思ったが前の友達に声をかけられてそっちに集中してしまった。

「お前仕事は?」

「終わったから来たんだって〜そういえば彼は転校生?」

「そっ。今日来たんだよ〜」

「ふ〜ん・・・・」

彼から少し懐かしい感じがした。

その瞬間赤い携帯がうずいた。

(まさか・・・・ZEUSU・・・・でも反応の仕方が違う・・・・)

「これで授業は終わりだ。日直!」

「きりーーつ・・・・れい!」

あっという間に時間は過ぎて授業は終わってしまった。

その後の給食も転校生とは喋れずにいた。

昼休みに久しぶりに校内をまわっていたらあの転校生に会った。

「ド〜モ♪転校生さんv日思井英悟と申します。何か探してんの?手伝う?」

まわりをキョロキョロしていたので明るく声をかけてみた。

しかし、何も言わない。

「英悟君、そろそろ・・・・」

「え?モウそんな時間ですか?清吾さん。」

清吾さんが呼びに来た。

もう仕事に行かなければならない時間になってしまった。

落ち込んでいると頭上から殺気を感じた。

「日思井君!その方は?」

感情のこもらない笑顔で転校生は聞いてきた。

あの時のバケモノと同じ顔。

「・・・・・ぼ、僕のマネさんだ・・・けど・・・・?」

俺はテンパリ過ぎて一人称を間違えてしまった。

「そうなんだ!ありがとう!」

今度の笑顔は心からの笑顔だった。

その笑顔が眩しくて・・・・

「今度また遊ぼうよ!江井君!」

いつのまにか俺も笑顔で叫んでいた。

不思議に思う少年が背をむけたその後ろで。

 

 

作者)これって続かなきゃダメ?

ZEUSU全員)あたりまえだ!!!

 

作者より

神との対話の部分がすごい書いてて好きかもです・・・・

今回、波音君も神になってほしかったけど!!

入らなかった・・・・

黒蝶だしちゃった〜〜〜(他の物語のキャラのつもりです。

次回も頑張りますのでお楽しみに〜