G or B 5
No.V 再会というさらなる大波
昼下がりの午
後。
サラリーマンが
昼食を食べ終わり、だらだらと道を歩いてる。
だらけた雰囲気
があふれ出す街中に黒塗のベンツが銀行の前に静かに止まった。
その場にいた人
々は怨ましそうにその車を睨んでいた。
しかし、運転席
から出てきた品の良い執事に目色を変えた。
「いってらっ
しゃいませ。」
黒塗のベンツの
後部座席のドアが蘭によって、開かれる。
そこにはショー
トボブで統一した夜吹と翔夢が出てきた。
今日はいつもの
ゴスロリモドキではなく、スーツのようなスッキリとしたフォーマルな格好だ。
「「ありがと
う、蘭。」」
ニコリと蘭のほ
うを向いて小さく言うと銀行に足を向ける。
銀行の自動ドア
を二人が抜けると注目が一斉に集まる。
そんな人々の視
線をものともせず、受付カウンターへ向かう。
「斎藤さんをお
呼びいただけますか?」
かわいらしい微
笑みを浮かべた夜吹に受付嬢は戸惑った。
こんな少女がこ
こにいていいのか・・・・・?
「えっと・・・
お母さんかお父さんはいらっしゃいますか?」
「父も母も、頼
りになりませんの。とにかく、斎藤さんを呼んでいただければお分かりいただけますわ。」
「は、
はぁ・・・・少々お待ちください。」
受付嬢は二人の
気迫に押されながら、事務を行っている斎藤という女性のもとへと小走りに向かった。
「斎藤さん、な
んかすんごいかわいい女の子が呼んでますよぉ〜」
「・・・・あ
ら、久々・・・・ありがとう。今、行くわ。」
コピー機をフル
稼働していた斎藤が受付のほうをチラリと見ると少し微笑む。
そばにいた部下
に書類を押しつけ、夜吹が待つ受付まで走っていった。
「夜・・・じゃ
ないわ・・・伊都、伊乃、お待たせしてごめんね。」
「「いいえ。こ
ちらこそ、いきなり呼び出して・・・・大変、失礼しておりますわ。」」
「取り敢えず、
応接間に移動しよっか。」
二人を奥の応接
間に案内する。
背後で上司が何
か言っているが、「ラビリンスとドラゴンアットっていうブランドの社長なんですぅー」と言うと、口をパクパクしながらペコペコと腰をまげていた。
「さてと・・・
また、おとんとおかん?」
どっかりとソ
ファーにふんぞり返るように座る斎藤。
その姿は一介の
銀行員には見えない。
「「うん、そ
う。」」
「ちょ・・・い
きなり素に戻んないでくれる?・・・ギャップありすぎだって。それでも、坊っちゃんかよー」
双子にツッコミ
ながら、ケラケラと笑う。
「渚ねぇも警察
官にみえないって。」
斎藤、それは偽
名だ。
本名は岳永渚、
刑事課で働くまさにできる女を絵に描いたような人間で、警視長官から「最高の部下」という評価を得るほど、すご腕の刑事である。
現在、この銀行
に会社員として乗り込み、内部告発とこの銀行で行われている闇取引の証拠を探している。
「そんないい加
減さでよく、刑事やってますよねぇ〜」
出されたジュー
スをすすりながら、翔夢が言った。
いつも飲んでい
るようなジュースではないが、口にあわないこともない。
「ウフフ、実力
主義なのよ〜公務員って。ところで、私にどうしてもらいたいのかしらん?」
「別件で大変だ
ろうけど、ちょっと警察で調べてもらいたいんだよね。」
夜吹が胸ポケッ
トから小さな紙切れを岳永に差し出す。
その紙を岳永が
開くと「にんじん、鶏肉、卵、タマネギ」の文字。
「・・・・・・
参ったわ〜・・・・私の推理力じゃ何言ってるかわからないわ。」
「「・・・・・
アッハッハッハッ〜ヤバい、僕たち殺人事件のひとつでも起こしそうな気分だぁ〜」」
そういう双子に
はこの事件(?)の発端であろう人物像が浮かんでいた。
渚に会う、1時
間前、双子たちは出かける準備をしていた。
「え、お前ら出
かけんのか?!」
双子の母親であ
る倉富爽を送り届けた柏木がたまたま廊下を通りがかると、双子たちが洋服部屋という名の長ったるしい部屋で、双子たちは出かける用意をしていた。
「「うん、そ
う。ちょっと野暮用ぉー」」
頭を悩ませた
末、適当に済むようにシ自分たちのブランドである、ラビリンスの女物のスーツを身に着けることに決定した。
今回も柏木はこ
き使われながらも、それぞれの洋服の位置などを覚えてきていた。
前回よりも格段
に洋服を探すスピードは上がり、スッキリと着替え終わった双子は紙切れを柏木に渡した。
「「これから、
髪の毛やってくるから預っといてね!!」」
「はいはい。」
柏木は軽く流
し、自分のポケットにねじこむ。
数分後、すっか
り女の子仕様の双子たちに急かされ、ポケットから無造作に先ほどの紙きれを渡した。
ようは、この時
に入れ替わったとしか考えようがないのだ。
「「カーーーー
シーーーーワーーーーギーーーーーーー!!!!」」
渚が引きそうに
なるほどのスピードで携帯の番号を打つ。
すぐに鳴った
キャッチ音から数秒で百合の声が響く。
「どうかなさい
ましたか、夜吹様、翔夢様?」
「今すぐ、柏木
をコチラに寄越してくれ。」
眉間にしわを思
いっきりつけた夜吹の声はドス黒かった。
10分もしない
うちに柏木が銀行の応接室にやってきた。
「・・・・・・
ンだよ、我儘野郎ども。」
「「柏木君、
ちょっっっっっっと座ってくれるかな?」」
ニコリと笑った
双子たちの背後には確実に閻魔大王か何かがしょわれている。
そんなスマイル
を浮かべられて逃げ出せる人間がいたらみたいものだ。
蛇に睨まれたカ
エル如く、小さく「・・・・はい。」と柏木はつぶやき、おとなしくソファーに腰掛けた。
壁に寄りかかる
ようにその様子を隅で眺めている岳永は笑いを必死に堪えていた。
「ねぇ、ちゃん
と預れって僕、言ったよね?」
「・・・・・は
い。」
夜吹のドスの利
いた声にドンドン身が小さくなる。
ここぞとばかり
に翔夢も顔を出す。
「じゃあ、なん
でオムライスの材料がこの紙には書いてあるんだろうね?」
「・・・・・俺
が間違えたからで・・」
おずおずと小さ
くなってくる柏木に双子たちの怒涛の攻めが容赦なく降り注ぐ。
「「そうだ
ねー・・・・・僕たちの貴重な8分35秒16をどうしてくれるんだろうね?」」
「・・・・・・・。」
「「本当、柏木
の馬鹿野郎ッ!!!」」
「そのくらいに
しときなよ、お坊っちゃま。」
見兼ねた岳永が
苦笑しながらも小さくなりまくりの柏木の代わりに双子たちにストップをかけた。
ふくれながらも
岳永の言葉を素直に受入れ、引き下がる双子。
「あー・・・・・・
助かったぁ〜ありがとござ・・・あれ?委員長?」
頭をあげるとど
こか懐かしい顔。
高校の時にいな
かったっけか・・・この顔。
「ああ、久しぶ
り〜柏木気づかないかと思ったわ〜」
「「へ?知合い
なの?」」
「「うん、コイ
ツ、高校時代の同級生。」」
双子はこんな馬
鹿とスゴ腕刑事が混合する高校ってどんな高校だ、と思った。
柏木を含め、4
人になった応接室。
「で、今日は何
をしにきたんだっけ?」
「「柏木、
紙。」」
「あ・・・・
えっと・・・・コレか?」
無表情で手を差
し出した双子の手に胸ポケットから出した紙切れを乗せる。
そのまま、双子
たちは渚に差し出した。
紙には双子が演
じる山吹姉妹の基本データが書かれていた。
「「渚ねぇに
ちょっと戸籍作ってもらおうかなって。」」
横でギョッとし
ている柏木など気にしないで、双子たちは笑顔全開で「簡単だろう」とでも言うように言った。
「うはー簡単に
言うね、君たち。どれだけ大変かわかってるわけ?」
「だって、その
『人間』も偽物戸籍持ってるでしょ?」
岳永が今、なり
変わっている斎藤という人物も岳永渚とは別の戸籍を意図的に作りだし、完璧な変装をとげている。
「そりゃ、採用
してもらわないといけないからねぇ〜・・・・で、そこまで追い詰められちゃってるわけ?」
「「うん、目を
付けておくって言ってるからね。」」
「あの人たちの
情報収集能力には頭が下がるものね。」
ブルーリッチの
情報は全て、母の爽が担当している。
それはもう、情
報屋でもやっていけるほどの能力と技量を持っている。
なぜなら、昔、
彼女は飛び級で学校を卒業していってしまったため、かなりの時間があまってしまった。
そこで、自室に
あったパソコンでネットサーフィンを繰り返すうちに高度な情報収集能力とハッキング能力を取得してしまったのだ。
「なん
か・・・・・全くついていけてないのって、俺・・・だけ?」
なんだかよくわ
からない世界の会話が広がるなかで、柏木はボソボソと呟き始めた。
それに気づいた
双子が柏木を見て、ニッコリと笑う。
「「そうだね、
柏木。だから、少し黙ってろ。このクソ野郎が。」」
「わぁー素敵な
笑顔〜」
引きつる笑みを
浮かべたが、もう、この類の罵詈雑言は慣れている。
柏木は魂が抜け
たかのように肩を落としながら、笑った。
「そんじゃ、2
人分、作ればいいの?」
黒い携帯をスッ
と取り出した渚は、メールを打ちながら聞いた。
「いや、お母様
とお父様も欲しい。」
「余裕があるな
ら、兄も。あ、これ、柏木がやるから。」
「は?!何そ
「はいはーい。じゃ、3人分追加ー」
「ええ
えッ!!!俺の意見無視ッ?!完璧?何もなく?!」
もう、完璧に存
在は否定されている。
あきらめろ、柏
木!もう、いないと思え、柏木!
「「で、いく
ら?」」
「んー・・・・・
5人分で1億ってとこかな。」
サラリと言った
金額が半端ない。
お金持ちってな
んで「億」単位で話を進める傾向があるんでしょうね。
「ひ、1人分が
2千万・・・・ッ!!」
1人分の金額で
も柏木はのけぞるほどだった。
2千万は柏木が
5年働いて手にできるかどうかの金額である。
っていうか、お前、よく瞬時に計算を・・・・。
そんなつっこみは気にしないことが柏木ポリシーですよ。
「「あれ?そん
なもんだったけ?んじゃ、僕たちの口座から引いといて〜一括で。」」
「い、一括ぅう
うう?!」
一括とは、文字
どおり、1回で払える者のみが言えるセリフである。(柏木脳内辞書より)
しかも、1億を
「そんなもん」呼ばわり。
柏木にとって
は、史上最強の金持ちのセリフである。
その言葉だけで
のけぞっている柏木であった。
「「それでは、
よろしくお願いしますわ。」」
「かしこまりま
した、お嬢様方。」
ピクピクしてい
る柏木を引きずりながら、双子と岳永は応接室を出て行った。
その途中、店長
が何やら大量の書類を抱えていたが、双子たちは目もくれず、蘭の待つベンツへと帰っていった。
「ふーん・・・
山吹ちゃんたちはお兄ちゃんがいるのねぇ・・・・」
「ん?ハニー、
何かわかったのかい?」
赤い床にシャン
デリアがぶら下がる部屋のなかで、パソコンが4台、1人の操縦者を囲い込むように並び、フル稼働していた。
その真ん中で倉
富爽はカタカタとキーボードを叩き、ハッキングを繰り返していた。
ネット犯罪が叫
ばれているなかで、ここまで堂々とできているのは絶対にバレないという自信があるからだ。
権力でねじ伏せ
ることも可能だが、そんなことに権力を使うことは怪盗としてのプライドに反するのだ。
「ええ、家族構
成は両親、兄1人に姉妹よ。業績もすばらしいわね。両親と兄は紳士服のグランドスタイル経営、姉妹2人で新ブランドも立ち上げてるわ。」
大手紳士服メー
カーである、グランドスタイル。
「誰も表せない
アナタカラー」をテーマに展開している洋服メーカーで、お金持ちの人間から庶民向けにもフォーマルに商品を売りだし、成功している。
何より、ブラン
ドの看板であるブランドのエンブレムに人気が集中している。
それ故にエンブ
レムをあしらったサイフなどのグッズもかなりの売り上げを誇っている。
「へー・・・・・
あのオーナー不明のグランドのオーナーの娘たちか・・・おもしろい。」
「ちょっと、こ
れから国家のサイトにハッキングするから。」
「はいはい。が
んばって、ハニー。」
気合いを入れ直
したSにチュッと投げキッ
スをするとHはどこかへ
去っていった。
「俺は俺なり
に、彼女たち対策しないとかな。」
あとがき
ごめんなさい。
更新日過ぎてしまって・・・・OTL
でも、どうだっ
たでしょうか。
今回は山吹姉妹
確立話だったのですが。
相変わらずの柏
木の同級生はかなりのエリート。
たぶん、渚さん
は家から近いからとかいう理由で柏木と同じ高校を選んだんだと思います。
そんな感じしま
せんか?(笑
というか、そん
ないい加減さが感じていただけていたら、自分、上出来b
今回は百合さ
ん、出番ナシ。
ごめんなさ
れーーーーー許して!!
G
or Bと言えば、ボイスドラマのほうは見ていてくださっていますでしょうか?
夏木さんをはじ
めとするCVの皆様の美声
が!!
特に主役格の双
子は力を入れてもらっているようでございます!
それに、書き下
ろしました!!
ボイス用に小説
を!!
その原作は柏木
も入っております!
柏木の声はまだ
知らないので、どうなるのかなーと楽しみです。
柏木とあとは、
ボイス限定キャラクターも出てきますよ!!
是非、CMが近日に公開されるようですので、聞い
てみてください!
L.R 明日路.S 2007年8月14日書き終わり。