助けろ、九星主様〜ナインアンビラー〜
『現状況ノ説明ヲ、死匠。』
暗く広い部屋に大きなモニターが二つ。その前に跪くメガネをかけた長髪の男と園蘭。
片方からは合成音とともに男の声がもれ、その指示を聞いた男はカルテのようなものを片手に持ち、現状の説明する。
「前任務を園蘭、凍狼が失敗。まぁ、そんなに期待していませんでしたので想定内ですが、我々の存在を知られてしまったのが痛いですね〜」
「主様、すみません。私の不注意で凍狼は重傷です。」
『ン〜イイヨ〜下カラ数エタホウガ早イ奴ナンテ捨テ駒ダカラネ〜』
モニターに映った男はニッコリと微笑む。
「「恭介ぇ〜」」
「ンだぁ〜双子。」
日が昇り始めた。一緒に眠気も頭を汚染していく。
朝の全力疾走が効いたようだ。
「なんか生徒会長が呼んでるよ。」
「悪いことでもしたのか?!過去見ちゃおっかな〜」
ニンマリと微笑む七赤はほっといて、恭介は生徒会長が待つという会議室まで足を運ばせる。
途中まで双子が「「何したの〜」」と詰め寄ってきたが、完璧に無視をした。
双子にかまっていたら生徒会室の扉が目の前にあった。
「失礼しま〜す。」
寝癖がまだ残る頭を書きながら現れた恭介を迎えたのは、あからさまに顔は不良っぽい少年だった。
顔に似合わずにきっちりと制服を着用し、眼鏡をきらつかせているが、ツンツンの頭が不良オーラを爆発させていた。
「五黄先輩、何用ですか?俺に。」
「今日は九星使徒としてお前を呼んだ。」
「は・・・・?なら同級生で九紫先輩がいるじゃあないですか。」
「あいつに話せと?!俺がか?!無理だ!!!絶対に!!!あんなネジがはずれてプーでパーでこんがら「あ〜はいはい!!すいませんでした!!早く話しを進めて下さい。」
話が長くなりそうなので恭介は途中で突っ込んだ。
(『変体』と名高い九紫先輩の名を出した俺が悪うございましたぁああッ!!!)
恭介が心の中で叫ぶのと同時に五黄は口をあける。
「『+@』という組織を知っているか?」
「知りませんけど?」
「じゃあ昨日、お前たちを襲った二人組みは覚えているか?」
「覚えてます。」
俺はそんなに記憶力がいいほうではないが、あのインパクトの強い二人組みは脳裏から突き放そうが、離れない。
「あいつらは最強の解体団体、『+@』のメンバーだ。」
五黄は特に能力という能力は持ちあわせていないが、情報収集能力はずば抜け、どんな事でも知っているというある意味恐ろしい人物なのだ。
(下手するとあの双子よりたちが悪いからな・・・・)
入学当時、恭介は五黄によって酷い目にあわされていた。
「研究のためなら誰が死のうが関係はないという連中達だ。しかも、裏と表の顔の区別をしっかりつけているからまたややこしい・・・・」
「ハァ」とため息をつくと頭を抱え込む。
「九紫にいったらなんていったか分るか?」
どうやら原因は九紫だったようだ。
「「カイタイ?貝で鯛という素晴らしい魚介類のことか?」っとか言うんだぞッ!!!ありえないだろ?!なんだよ貝なのに鯛って!!!魚か?!貝か?!わかんねぇだろ!!!」
愚痴を言い出した五黄は強い。永遠と喋り続ける事昼休みが終わるまで、5分前。
「あの要件は・・・・?」
言われてやっと気づいたのか、五黄は要件を口にした。
その時にゼハゼハと息を乱していたことは気にしないでおいてあげよう。
「『+@』の今回の目的は“星の分解”だ。そのために俺たちを狙っているらしい。必ずアレだけは守れ。特に攻撃系のアレだけは渡すな。」
厳しい表情でみつめられる。“アレ”・・・・使徒だからこそ持っていられる物体。
ソレが他人の手に渡ったらと考えたら冷や汗しかでなくなった。
「連絡をまわしておいてくれ。」
何も言わずにうなずいたら、昼休みを終えるチャイムが鳴った。
全速力で教室へむかう五黄を笑いながら見送った。
(アレねぇ〜・・・・)
授業中、先生の懸命な声も耳から入って耳から出て行く。
頭の中はさっきの話でいっぱいだった。
アレは『星の欠片』と言われ九星使徒の能力源と言っていいほどの代物。
姿は宝石くらいだが、威力はビルがまるまる一個破壊できる爆薬の5,6倍。
それを体内に宿すのが九星使徒である。
(あげてもいいんだけどさ〜・・・・器がないとな〜)
『星の欠片』は器がなければ暴走する。
暴走させた事がないので分らないが何か大変な事が起きると分る。
だから、恭介達が器となり暴走を止めている。
(あ〜・・・なんで俺の中に入っちゃったかな〜・・・・コレ。)
(んじゃ、頂戴。)
「はぁ」とため息をつく恭介の心の中に誰か恭介でないものが現れた。
少女の声が頭に響く。
「あんた誰だッ!!!」
驚いた恭介は思わず叫んでしまった。
「え・・・・?先生は先生だよ・・・?」
「ハ・・・・・あ〜・・・そうですよね〜アハハハ〜気にしないで下さい!!!気持ち悪いんで保健室行って来ますッ!!!!」
さっきの叫びをごまかしながらダッシュで教室から飛び出す。
双子の教室からなぜか笑い声が聞こえたが気にしないでおこう。
(あんたのせいで・・・・っていうか誰!!!)
(ん〜・・・・コム。コムチの名前はコムだよ。)
姿は見えないが笑顔満開で言っているのだろうと分るくらいに声が弾んでいた。
「『+@』か・・・・?」
「ピンポンピンポン大正解ぃ〜!」
正体を見破った瞬間にその姿が現れた。
その姿はまだ幼い少女でミニスカのワンピースに小さな傘をクルクルまわしていた。
「コードゼータ!ネームコム!よろしく、お兄さん。」
ニッコリと微笑むとクルリと一回周ると傘を折りたたむ。
折りたたんだ傘から出てきたのはあの幼い少女の姿ではなく、乙女の姿になっていた。
その姿に恭介はポカンと口を空けていることしかできなかった。
「えへへ・・・その顔好きぃ・・・コムチは驚いた顔を解剖するのが好きぃ〜・・・・だからそのまま殺されて?」
そんな言葉に恭介が黙っているわけもなく。怒鳴り込んだが、
「あうあお!!!」
言葉が出ない。っというか目線がおかしくなっている。
今までコムを見下ろしていたのが見上げている形になっている。
「あんだえ?(何で?)」
「コムの力は相手の歳を食べる事ぉ。今は立場逆転なんだよ、ガキッ!!!」
目線、口調、その他もろもろを考えて今の歳は3歳くらいだろう。
そんな恭介を見下ろしてクスクスと笑うとコムは傘内臓の銃を撃ち放つ。
「おあおやらえてあかりじゃななよ!!!(俺もやられてばかりじゃないよ!!)」
右手を赤く光らせ、廊下の床に手をつく。
いつもなら学校半壊の勢いで放った力だが、3歳の力はわずかだった。
少し大きめの小石を投げられた程度の打撃しかない。
「痛いなぁ〜・・・・躾しないとダメなの?僕?」
また放たれる銃撃に戸惑いながらも走る。
廊下が焦げ付く中で急いでどこか九星使徒がいないか探す。
このままでは確実に殺される。この3歳の力ではどうにもならない。
「あれぇ〜・・・・ンかチビがいるじゃあん・・・」
全身をなめるような言い方をする男がガムをクチャクチャと食べながら堂々と廊下を歩いてくる。
制服のボタンはすべてはずし、中には紫色のパーカーを着ていた。
完璧なる校則違反。右耳にはピアスまでしていた。
無論、中学3年になど見えない。
エレベーター式学校で受験がないとしても気を抜きすぎであろう。
「ホントだぁ〜・・・ん〜・・・かわいいv」
その後ろから甘ったるい声が聞こえる。
その子も制服のなかには白円のなかにHと書いてある水色のパーカーを着込んでいた。
最初の男にくらべると背が低く、頭を撫で回したくなるほどに可愛かった。
「あ!きゅういしゃんはい!!(あ!九紫先輩!!!)」
「あんた誰・・・?」
3歳の恭介は叫び、コムは暴言を吐く。
「シャンハイ・・・上海?・・・・あ〜上海料理食べてねぇじゃねぇか・・・最近。」
「だねぇ〜僕は上海より広東派だにゃ〜」
恭介の心叫びを裏切るようにこの変体は勘違いを繰り返す。
その隣にいる少年も救いの手は差し伸べない。
「そんなことはいいわ!あなたたちは何者かと聞いてるわ!!」
さっき、さらりとスルーした話題をぶり返すコム。
しかし、またまた話題はそれていく。
「はぁ・・・何者?・・・俺ッチは俺ッチ。シロはシロ、アンタはアンタ。」
「フフフ」と不敵な笑みを浮かべながら風船ガムをふくらます。
そして、「俺ッチ今いいこと言った〜」と自己満足に浸っていた。
「そうだよ〜あんたバァカ?キュウちゃん良いこというね〜スゴイたまに。」
九紫の自己満足を邪魔するかのようにシロと呼ばれた少年はさらりと言う。
「おぉん・・・シロもそんなこというようになっちゃったのね〜悲しいわ〜」
「大人の階段上るぅ〜君はまだシンデレラさぁああ♪」
熱唱する少年の後ろでコムは相手に去れず(無論、恭介も)怒りに身を包んでいた。
わなわなと傘を握り締めながらコムは傘の先を二人に向ける。
「コムチを無視しないで欲しいしぃ〜・・・・皆、解体されちゃえッ!!」
傘から莫大なエネルギーが放出されようと黄色い傘がいっそう黄色く輝く。
その瞬間に大きな怪物といえるほどの大きさをした黄色いウサギが学校の3階より上の2階ほどを破壊した。
おもむろに足をあげると、二人をめがけて足を下ろす。
ズドォオンという
音を立てて下の階までもを破壊する。
しかし、生徒が誰も怪我をおってはいない。
「五黄に頼んで生徒を非難させておいたかいがあった〜」
「だな、流石俺ッチ・・・!!改めて名乗ろうか、お姉さん。九星使徒九紫兎火。」
「同じく、伊土八白!」
「「名乗ったからには反撃をッ!!」」
九紫は手を重ね、巨大ウサギに向ける。
「火道衝撃火球ッ!!」
火の玉がウサギに襲い掛かり、ウサギがよけようと横にずれる。
それを狙っていたかのようにニンマリと笑うと「シロッ!!」と叫ぶ。
「分かってるぅ〜」
そういうのと同時にムズッと巨大ウサギの足をつかむとウサギはひっくり返る。
その小さな体のどこから力があふれるのか、謎であった。
その二人の姿をただ呆然と見守る幼い恭介。
その背後から手が伸びた。
されるがままに抱き上げられると恭介はハッと後ろを向いた。
「こおうしゃんはい!?(五黄先輩!?)」
「えらい目にあったね、二黒。」
にっこりと微笑んだその顔は何故かあまり似合ってはいなかった。
だが、少しいつもの五黄にやさしさが加わったような気がした。
「今、戻してあげるよ。」
微笑が消えた瞬間、恭介はもとの姿に戻り、コムももとの少女の姿に戻った。
恭介は五黄の手を離れると礼を言う。
「反撃してこい、二黒。今回は半壊までなら許す。」
その顔を見て安心したのか、五黄がニンマリと言う。
「了解ッ!!」
勢いよく飛び出した恭介の後ろで今までがんばりぬいていた二人が野次を飛ばす。
「五黄ちゃ〜ん俺ッチたちは?」
「そうだよ〜こんなに珍しくキュウちゃん働いてるのにぃ〜!!」
「伊土先輩、九紫先輩がかわいそうですから・・・・」
右手を赤くしながら恭介は言った。
地面に右手をつける。
その瞬間に巨大ウサギの地盤が崩れ落ちる。
『ズガガガガッ!!!』
巨大ウサギが消えるとコムは恐怖で身を震わせていた。
青ざめた顔から涙が零れ落ちる。
「いやぁあ・・・助けて・・・主様・・・・」
崩れるようにひざまずくとコムは叫んだ。
それに答えるように折れたスピーカーから機械の合成音が聞こえてくる。
『コム、アンタ要ラナイ。死ヌキで殺ラレナイヨウニ頑張ッテネ』
ブチリという音が聞こえるとコムは勢いよく立ち上がる。
「そ、そんなッ!!・・・・主様ッ!!!!」
叫びむなしく、スピーカーからもう声は聞こえなかった。
もう助けがないとわかったのか、ギロリと睨むと「ハァアア!!!」と叫び傘の先を向ける。
「無駄なことはやらない主義希望。」
「キュウちゃんと同じく。」
「無駄なことをやるのは馬鹿だけだ。」
「うわ〜先輩方厳し・・・・まぁ限界を知らない人なんじゃないんですかね?」
口々に文句がもれるが、冷静さを失ったコムには聞こえない。
傘内蔵の銃をぶっぱなす。
しかし、4人にあたるはずはなく。
「「「「だから、無駄。」」」」
「右斜め70度から攻撃がくる。後方によけて火球をうて!」
「了解、五黄ちゃん!!」
五黄のいうとおりに右斜めから攻撃が向かってくる。
それを軽くよけると九紫は火の玉を放つ。
コムの足元に火の玉が焼き付ける。
「二黒!!」
「はいはい〜」
言われた瞬間に恭介は地を揺るがす。
しかし、いたずらな風が恭介の手を地から放させた。
そのせいで振動がコムに届く前になくなってしまった。
「アッハッハッ!!おもろいことしてんな〜ロクもまぜてぇ〜」
屋上から少年は白い体操服をちらつかせながら笑っていた。
「木戸君・・・!!」と五黄は頭を抱え、
「ロクちゃん・・・・!!」と八白はその辺に転がっていたであろう石を素手で破壊し、
「キッド・・・!!!」と九紫はふくらんだガムがベチャリとつぶれ、
「木戸先輩・・・!!」と恭介は拳を振るわせた。
「アッレェ〜?お邪魔でしたん?」
それに気づかないソイツは明るく笑った。
「木戸君、あなたのせいで重要な情報源である敵を殺すどころか逃がしてしまいましたよ・・・・・」
次の日の生徒会室に屋上で笑っていた少年と恭介、鋼野兄弟、三碧、八白、九紫、それにはじめてみる少女が五黄の目の前に腰掛けていた。
「エヘェ〜悪いね〜みんなv」
「わたくしの水を使ってでも洗い流せないことをしてくれましたのね、木戸四緑。」
誤るという態度をとらない木戸に少女は言う。
気品があふれたその言動のとおりに姿も純白のように整っていた。
「アンタ、誰?」
ふぅ、と息を吐くその少女に楓はパシリと言葉を投げた。
「・・・お言葉づかいには気をつけなさい、三碧楓。わたくし、3年の川野水一白と申します。以後お見知りおきを。」
華麗にお辞儀をすると黒髪をかきあげる。
「ロクは木戸だよ〜キドシロクv」
「きいてないよ、先輩。」
でしゃばる木戸には手厳しい楓であった。
あとがき
3000Hitありがとうございました。
次回、このお話が出てくるのは多分4000Hitなんじゃあないんでしょうか!!
それまでサイトがもつかどうか!!そこが問題です。
九星というのだから九人いるんだなというのはお分かりのとおり、その通り。
やっとでてきましたね〜
そして楓は出ているのに影が薄くて出てない感が・・・
4話くらいまで書きたいな〜と思っているので完結するのは5000Hitの時。
でも5000Hitは節目だからまたお世話になった人に書きたいと思ってます。
だからまぁ・・・・6000Hitかな〜完結。