LIVE LOVE
fourth death 過ぎた真 昼間の苦痛
路地のひんやりとした空気が僕達を包んで、その中で影は喋りだす。
「さっきの奇跡の子って僕。分るよね?・・・・・・
今日はいい天気だ。真昼の日差しが温かい。
しかし、昼の日差しは大嫌いだ。
僕の頬を照らすこの光は嫌いなんだ。
焼けるようなあの暑さと身にしみてくるような心地よさ。
何がしたいのかわからない存在。時に優しく、時に辛さを与える。
まるで僕なのか・・・・・雨をも否定する僕なのか。
ビルとビルの間の空き地の工事で使われてあまり、そのまま放置されたであろう材木の山に腰掛け、太陽を眺めていた。
ようと
「陽虎!!」
憂鬱な時を打ち切るかのごとく僕の背中をたたくと眩しく笑った。
さとる
「・・・・哲・・・・」
唯一の友人がビルとビルの間からひょっこりと飛び出した。
手にもったバイトの情報広告の山を持ちながらどっかりと僕の隣に座った。
僕が少し笑うとさっそく集めてきた広告の山を広げ出す。
「俺的にはコレがベストだと思うんだけどよ〜」
『アルバイト募集中 カフェテラス「夢中」』
「ずばり、怪しいだろう・・・」
「そうかぁあ??」
いつものように時は流れ、笑いは止まらず、あのまぶしい光は優しくオレンジに変わる。
「そろそろ帰るよ」と哲は大きく手を振りかえっていく。
僕は行きたくも無い場所へと足を向かわせるほか行くところも無いので仕方なく歩みだした。
大きな白い家が目の前に広がる。
数人の使用人が僕を迎えるために並んでいた。
いつものように、規則正しく一寸の狂いもなく同じ事をする。
「陽虎ッ!!」
「母さん・・・・」
「こんな時間まで何してたの!!」
そんなに時間はたっていないはずなのに母さんは怒鳴り散らした。
おずおずと使用人たちが去っていく中で母さん淡々と一方的に話をしていた。
「学校もあなたが選んだところにいかせてあげたわ!!もっと母さんのことかんがえてくれにかしら?!『奇跡の子』なんてはやされているんだから!」
自分勝手にもほどがあるくらいのことを言い放ちながら、母さんは僕と使用人をつれておくの部屋へ行った。
『奇跡の子』。なんでも僕は昔から何でも出来ている子だったらしい。
TV、ラジオ、新聞、雑誌、あらゆるメディアから注目され、将来を勝手に期待されていた。
「あなたも兄様のようになりたくないのなら、真面目になさい。」
「はい。」
僕が『奇跡の子』と呼ばれる代償のようにたったひとりの兄は『呪いの子』と言われ、どこかへ捨てられていった。
「分ったのならばこれからやる事は分るでしょう?急いでおやりなさい。」
「はい。」
この時の僕は母さんの言うことだけを聞いていればこの世界でやっていけると思った。
だから、勉強もした、校則も忠実に守った、なにより母さんの言うことはすべてやった。
操り人形のように『奇跡の子』を演じた。
演じ切れなかった兄さんの分までも・・・・そう、捨てられた兄の分までも・・・・
「何をやってるの?陽虎?はやく自分のお部屋に戻りなさい!!」
「・・・・・・」
いつのまにかこいつのせいで世界は狭められていたんだ。
コイツのせいで・・・・コイツさえいなければ・・・・!!!
「陽虎!!!・・・・・?・・・・陽虎・・・・・?返事をしなさい!!陽虎!!」
「母さん・・・・・僕、もう操られたくないや〜」
「陽・・・・・・・と・・・・・?」
気づけば、僕の目の前には動かなくなった母さんとにんまりと微笑む赤い操り人形だけが僕を眺めていた。
『ヨウト君、是非、ゲームに参加しない?今なら特典でコレつけちゃう♪』
赤い操り人形の後ろから黄色い長髪をした青年が顔を出した。
「あなたは何者なんですか?」
『あんれぇ〜神としたことが名前言ってませんでしたか〜気まぐれのナイスガイ!キーロと申します。以後お見知りおきを、ヨウト君。』
赤い操り人形を抱きかかえ、キーロは陽虎の影の上に置いた。
赤い操り人形が影に吸い込まれ、同化した。
『はい、完成。これが君の能力。“赤い影”君はゲームに参加することを強制する。何しろ素質あるから、君。あとついでにHNも考えておいてね〜以上ッ』
「は・・・・?」
そういうと消えていた。
HNを『昼苦』ときめると僕はいつのまにかゲームに参加していた。
次の日から知らないやつに殺されかけるし、能力者と名乗るものたちに狙われるしでボロボロになっていった。
「つ、疲れた・・・・」
「・・・・・風見陽虎君ですか?」
疲れ果ててヘバっていたら歳が一つぐらいしか違ってないだろうな・・・と思うくらいの少年が立っていた。
久しぶりに『昼苦』という名ではなく本名を呼ばれたので少し驚いた。
こくりとうなずくとすごい気迫で「アンタの母さんはドコだ?」といわれた。
「殺しました。」と即答すると少年はぐったりと倒れこんだ。
「あなたは何なんですか?」
「お前・・・変わったな・・・知らない人にも声をかけられるようになった・・・・キーロに頼んでよかった・・・・」
昔、僕は人に声をかけるなど勇気をすべて出さないとできないことだった。
そんな昔のことを知ってる人・・・そしてはにかんだ笑み・・・・
「兄さん・・・・・?」
「あたり。」
にっこりと笑うと僕の頭をなでた。
「今は黒蝶だけどね〜」そういうと僕の手を引いてこの店につれこんだ。
・・・・こんなんでどうかな?」
一息おくと赤い影は笑った。
「僕もお前殺す勢いだったんだけどさ・・・・なんかダメだったんだよね・・・」
『うん、黒蝶らしい。』
ああ・・・・なんか笑うとこの二人似てるな・・・
僕ははじめて思った。
隣にいた赤帽君は帽子を深くかぶりなおすと「さき帰ってるッス」と言ってどこかに行ってしまった。
その直後だった。「クスクス」と笑い声が頭に響き、赤帽の帽子が宙を舞った。
「赤帽君ッ!!」
倒れた赤帽の前には遊園地でよくみかける着ぐるみサイズのくまさんが立っていた。
赤帽の手にはうさぎのぬいぐるみが握られていた。
「クスクス・・・・いいこと聞いちゃった〜謎の人の謎が一個解けたよぉ」
少女がビルから飛び降りると大きなくまさんがキャッチする。
静かに下ろされた少女は赤帽からうさぎのぬいぐるみを抱きながらニッコリと微笑んでいた。
「ぬいぐるみのエアー参上ぉだお☆」
黒蝶さんが隣で叫んでいる中で少女はにんまりと不敵な笑みを浮かべた。
あとがき
やっと終わったッ!!二人の過去ッ!!
そしてやっと入れる!!!殺し合いッ!!
ちなみにエアーにもちゃんとパートナーがいますのでお楽しみに。
やっと微妙にキーロさんが・・・・
前に夏木sにバトンをもらったときに答えてしまった人です。
この後すごい重要人物なので要チェック。
ヒルクさんはどうしたかったんだ・・・・気にしないで!!そこの人!!
そして、いつ黒蝶がキーロに会っていたのか、キーロ中心になったときに分ります。
また謎を残しつつ終わってしまいますが・・・次回で解き明かされる事を願いましょう。
では次回は九星主様のお話でお会いしましょう。
水蓮明日路