4月1日、それは不幸の始まりだった。
ー黒林檎姫【クロリンゴヒメ】ー
ねぇ、エイプリールフールって知ってる?
知らないの?エイプリールフールはね、悪い
ことしていい日なんだよ♪
「チガイマスヨ、姫。」
なんで?ウソつきは泥棒のはじまりでしょ?
泥棒は悪いことでしょ?
「ソウデスガ・・・・そういう意味ではない
んですよ、姫。」
なんでー?ダメなのー?
じゃあ、法律かえちゃおっか。
エイプリールフールは悪いことしてもいいっ
ていう法律!!
「そんなことをしたら姫も殺されてしまいま
すよ?」
大丈夫〜だって、殺されるとしたら白林檎の
ほうだもん!
カウンターの雑音しかならないラジオからあ
る日、不気味な法律が発表された。
「臨時ニュースをお知らせします。今、王宮
で何か起きたようです。中継の直原さん?」
「はいはーい!コチラ、お城の前の直原優衣
でぇーすッ!どうやら新しい法律が発表されるようですよぉ!・・・・・あ、白姫様が!!」
キャーという黄色声とアナウンサーの声が入
り交じる。
「お静かに!!お静かに!!」という声が響
くと、シンと静まり返る。
「皆様、お集まり頂ありがとうございます。
今日は、新しい法律を発表したいと思います。この国は厳しいことで有名となり、厳しさ故におこりうる犯罪が多発しております。」
王宮のテラスから発表されていると思われる
その声はラジオからだと、少し遠く聞こえる。
しかし、この姫の発言は本当だ。
この国は法律は代250条まであり、そのことを窮屈に感じた人間が
法を破り、どうせ捕まるならと狂ったように人間を殺す。
そんなことは日常茶飯事だ。
「そこで、わたくしは考えました。明日の4月1日のエイプリールフールは悪いことをしても
良い日とします!!」
アナウンサーの声はその場にいた、野次馬の
声で消え失せた。
ねぇ、シルク〜今日はエイプリールフールだ
よ。
「そうですね、姫。」
一体、何人の人間が死ぬと思う?
「・・・・さぁ?私には難しすぎてわかりま
せん。」
私の予想はねぇー・・・・・半分くらいか
なぁー
特にぃー白林檎には死んで欲しいなぁ〜
「そんなことを言ったら、姫も死にます
よ?」
何言ってんのさ〜死なないためにシルクがい
るんでしょ?
「はいはい、いつも通りのわがまま姫様。」
わがままじゃないもーん!!それがあなたの
仕事でしょ?
昨日の発表で、この国は変わった。
今日の私の店はガラーンとしていた。
いつもだったら、隣のおじさんやらなんやら
でいっぱいなのに。
それもこれも、昨日の法律のせい。
今日の国に安全な場所はない。
私には親も親類もいないからいいけど、他の
一般の人は大変なことになっているだろう。
こういうときは天涯孤独っていうのもいいも
のだ。
「・・鈴!よかった!生きてるか!!」
「いらっしゃい、零。」
「この国は狂ってる!!外でたか?」
「ううん。今日は引きこもってた。」
零はしたたる汗をぬぐいながら、私に聞いて
きたが、私は零ほど焦ってもいない。
「俺の親父はもうダメだ・・・金貸しのリグ
レットに殺されちまった・・・!!」
「ふーん・・・・」
金貸しのリグレットという人間はそれはも
う、傲慢を絵に描いたような人間。
意地汚くて、気持ち悪い、最悪を集めたよう
な人間だった。
「これから、俺は姫を殺しに行く!!お前も
いっしょに行かないか?!」
特にこれと言ってやることがなかった私は、
零について行くことにした。
うわー・・・すごいよーシルク!!
こんなに人が集まってる!!
みーーーんな、白林檎を殺しに来たのか
な?!
「そうでしょうね。あんな法律をだしたとな
れば、殺されて当然でしょう。」
だよね〜・・・・馬鹿な人。
「・・・白林檎様はあなた自身じゃないです
か。」
違うよー白林檎が馬鹿なんじゃなくって、白
林檎を殺そうとしてる人間が馬鹿なの。
「・・・なるほど。あなたを呼び起こすこと
になるのですからね。」
そそ。自分でいうのもなんだけど、ゲームと
かでいうラスボス並に黒林檎ちゃんは強いんだからね!
「はは。ご自分のことをよく存じてらっしゃ
る。」
王宮の前にはとてつもないくらいの人間がい
た。
誰もが、この新しい法律を下した姫に殺意を
抱き、協力をしはじめている。
「姫をだせーーー!!!」
「お前の作った法律で殺してやる!!!」
そんなことをいっても姫は出てこないという
のに。
これで出てきたら馬鹿だろ?
そう、私が思った矢先だった。
「騒がしいですね。何かご用ですか?」
あの姫が現れた。
真っ白なドレスに煌めく冠。
まさに、姫様。
「姫が出てきたぞー!!!殺せ!!殺せぇ
えッ!!!!!!!
パンパン!!
銃声の音が耳元で聞こえる。
それと同時に、姫の体がふんわりと浮いたよ
うに見えた。
テラスの姫は無数の銃弾によって、殺され
た・・・ように見えた。
「やーーほーー!!晴れて自由の身の黒林檎
ちゃんだよーーー!!!」
白く見えたドレスは真っ黒に染まり、穏やか
じゃない空気が立ち込める。
「はいはーい!今、姫ちゃんに発砲した人出
ておいでぇー!」
そんな空気をものともせずに、姫はしゃべり
続ける。
しかし、そんな明るい声を掻き消すようにま
た、銃声が鳴り響く。
「これで死んだだろう!!!」
私の隣にいた男が発砲したようで、火薬のに
おいが鼻を突き抜ける。
「・・・・これで死んだだと?黒林檎をなめ
てんのか、このクソ野郎!!!」
血を一滴も流さない姫は口が裂けそうなほ
ど、笑った。
「白の世界はもう終わり!!!あんたたちが
白を殺したから、黒林檎の世界のはじまり!!黒林檎ちゃん殺されたくないなら、一生殺し合いな!!」
世界は嘘のように、血に染まっていった。
・・・・・・ねぇ、そういう話ってどう?」
桜も満開の道。
女子高生二人組みは歩いていた。
「やだよー・・・・超不吉じゃん。」
「そー?なんかありそうじゃんかぁ。」
「黒ちゃん、なんかおかしいよ?」
女は隣で楽しそうに笑い出した友人に目を向
けた。
「・・・んー?黒ちゃんって誰?私は黒林檎
ちゃんだよ?」
END