GorB 4

IIII 親子喧嘩という破壊活動


「あー・・・・店長、暇ですよー。」
いつものバイト先ではいえないことを言いた くなる今日このごろ。
双子の両親であるブルーリッチさんたちの パーティーを仕立てあげた俺だが、なんだかどっと疲れてきた。
あのあと、自分とは世界の違うパーティーの 光景が俺の目には痛すぎて、百合さんに頼んでどうにか帰してもらった。
そのおかげで、バイトもサボらなくて済んで いる。
あのパーティーはどうなったか知らないし、 双子も二日がたった今、まだ、このコンビニに顔を出していない。
「ひーまー・・・・・」
別に田舎のコンビニでも、ないのに客はめっ きりだ。
今日は平日だからかな。
そう思いながら、俺がレジに体をふせた時 だった。
「痛ッ!!!」
「「起きろ、柏木ッ!!」」
俺の世界はまたカムバックしていった。

「「パーティーは助かった。お父様も、お母 様も黙らせることができた。」」
ズルズルといつもの壁の前まで連れてこら れ、これまたいつもの応接間で、向かい合うように座らされて話を始める。
蘭が良い香りのする紅茶を淹れて持ってくる と、応接間のなかは紅茶の匂いに包まれる。
また、俺は戻ってきてしまったらしい。
「でもさー・・・・・また、やられちゃった んだよねぇ〜・・・・・・・・あのクソ両親め!!!」
ガシャンと机の上に置いてあったカップたち が浮き上がる。
「そうそう。どうしてこう・・・捕まんない かなぁあッ!!」
ボフンと双子の間に置いてあったクッション が、へこむ。
「・・・・・あー・・・・・・キャラが変 わってるぞ?」
「「ああああああああああああああああ あッ!!!ウザッ!!」」
「あれ?無視ですか?・・・あれれ?」
柏木を無視しして、双子の物体破壊は続く。
「柏木は途中で帰っちゃったから知らないと 思うけど。あーあー・・・・・・・ダイヤモンド★スターの商品ゲットのチャンスだったのにぃー・・・・!!!」
「新作って、パープルフィナーレだっけ?紫 色の石って珍しいのにー!!!」
もがきはじめる双子だったが、柏木にはチン プンカンプン。
ハテナマークのオンパレード。
「・・・・・・・蘭さん、コイツら何語 を?」
「日本語ですが。」
思わずでたアホな質問に、蘭はそれでもにこ やかにかえした。
「ハハハ・・・・・全くわから ねぇッ!!!」
「「はぁ?!ダイヤモンド★スター知らない のッ?!」」
柏木のつぶやきに気づいた双子が、声をあら だける。

ダイヤモンド★スターという宝石会社は、双 子の両親がやっている会社。
世界中に支店を持つ、世界規模の店である。
双子たちがこんなに金持ライフを送っている のはそのおかげといっても過言では無い。
しかし、「親類には売らない」というおかし な決まりで、双子たちは両親のプレゼントでしかダイヤモンド★スターのものが手に入らないのだ。
「「本当、知っててよねー。常識知ら ずぅー」」
「あ、そうそう。お前らの名字って何?」
「「・・・・・・マジ、死んで。」」
ガックリと項垂れた双子。
「ダイヤモンド★スターの時点で普通はわか るはずなんだけど・・・・・倉富だよ、ク・ラ・ト・ミ。」
「ストラハウスって会社知らない?それは僕 らの会社のひとつだけど、英語って倉っていう意味だよ。」
「あ、ストラハウスは知ってるぞ!バカに高 いぬいぐるみメーカーだろ?」
ストラハウスは「一生の憩の存在」という テーマで展開し、ぬいぐるみにも拘らず大粒のダイヤモンドやルビー、サファイヤなどの宝石を散りばめ、「世界で一番高いぬいぐるみ」とギネスからも認めら れている程の超高級ぬいぐるみ製造会社。
双子たち曰く、宝石などは両親たちから安く 取り引きしてもらえるため、上質かつ、安く提供できるというわけだ。
世間一般には、社長愚か、店員を除く社員た ちすらも顔が知れていない謎の業者として報じられている。
「「そうそう。僕らの会社を知っててくれる なんて光栄だね。」」
そんな謎業者の社長さん(たち)がこんな身 じかにいたとは、驚きである。
「失礼いたします。夜吹様、翔夢様、お客様 がいらっしゃっるお時間ですわ。」
話にやっとはながさきはじめたころに、百合 が終了のチャイムを鳴らした。
いや、終了したのは会話だけであって、柏木 の仕事はここから始まったといった方がいいかもしれない。


ドキドキとスーツ姿の女の心臓が高鳴る。
今日は雑誌記者として、今、話題の双子探偵 の山吹姉妹に取材にきている。
しかし、おどろくほどきらめく部屋中の装飾 品たちに圧倒されて、書けるものも書けやしない雰囲気だ。
となりのカメラマンはいつもと変わらぬよう に、カメラを研いていた。
「お待たせ致しました。山吹伊都ですわ。」
「山吹伊乃ですわ。」
そんな雰囲気のなかで、山吹姉妹は劣らずに 輝いていた。
渋谷で見掛けたことがあるといっていた若者 がいたが、それは嘘だろう。
色違いのワンピースにショートボブの髪。
アクセントに胸に飾られた薔薇と同じ髪飾 り。
どこの姫様だと思う程にしっくりしていた。
「初めまして、今回は取材にご協力いただき ありがとうございます!!」
ガタンと音がなりそうな程慌てて、立ち上が る。
正反対に双子はふんわりと席につくとニコリ と笑う。
「いえ、私たちも宣伝になりますので。」
「私たちを選んでいただき、こちらこそあり がとうございますわ。」
「い、いえいえ!!!・・・・・・えっ と・・・・・そちらの・・・」
二人の笑顔に圧倒されながらも、その後ろに ついてきたと思われる一人の青年に眼を向ける。
あまり、上品とは言えない顔立ちだが、来た ときに案内された男よりは若い。
「「あら・・・・・こちら、私たちの執事の 柏木ですわ。」」
「初めまして。お二人の執事を勤めさせてい ただいております、柏木凌です。お邪魔でしたら下がりますが?」
さっきの思考を消去したい。
十分なほど上品な人間じゃないか。
「い、いえ!!いてくださって結構で すッ!!」
こうして、ドキマギな私の初取材は始まっ た。
「えっと・・・お二人しゅ、趣味なんかあり ますか?」
「「そうですね〜・・・・・・」」
声をそろえて考え込むところなんか双子なん だなと思う。
「「・・・・・・ぬいぐるみかしら?」」
「ぬ、ぬいぐるみ?」
「ええ。ストラハウスさんとは仲良くさせて いただいているので。」
「ああ、あの高級ぬいぐるみ会社の!!!」
うわ・・・やっぱりお金持ちの交友関係って わからないんだな〜・・・
二人の美貌と話の壮大さに見とれている私 は、パシャパシャとカメラのシャッターオンで我にかえった。
はしゃぐ記者の後ろの壁によりかかって、取 材を聞いていた柏木は思った。
(何が『仲良くさせてもらってる』だ。お前 らが社長だろってーの。っていうか、そもそも俺はここにいなきゃならねぇの?!マジで。あの記者が『邪魔ですので』とか言ってくれれば自由の身ってやつ だったのによー・・・・・)
ジェスチャーで「出ていってもいいか?」と 双子に聞くと、翔夢がニコリと笑って、わからないように親指を下へ向けた。
顔には「そんな勝手なことをしたら殺す。」 と書かれていた。
柏木は大人しくその場で耐えた。
「ああ、そうだった!!お二人は会社もお持 ちになってるんですよね?」
「ええ。私、伊都は『ラビリンス』という洋服会社を。」
「私は『ドラゴン・アット』という同じく洋 服会社を。」
まだ、そんな会社を持っているのかと柏木は 驚いた。
しかし、「ドラゴン・アット」といえば、前 に洋服をとらされていたではないか。
あれも自家製というわけか。
「あ、私、『ラビリンス』大好きです!! ちょっと高いけど、うさぎがかわいくって!」
「うふふ・・・・嬉しいですわ。あのウサギ は私が考えましたの。」
本当に嬉しそうに笑う伊都。
その横でむっとしたように伊乃が話に入り込 む。
「男物ですが、『ドラゴン・アット』もお願 いしますわ。」
そのあとも、数十分の質問攻め。
柏木は耐えに耐え抜いた。
「それでは、ありがとうございました!!」
「「いえ、こちらこそ。蘭、お送りして。柏 木は残ってね。」」
双子はニコリと微笑みを浮かべながら、蘭と 一緒に一歩を踏み出した柏木を引き留める。
蘭と記者、カメラマンが姿を消すと、 「はぁ」と溜息をつき、女装姿のままで男モードに入った。
「柏木、テメー何が出っててもいいか? だ!!!」
「ダメに決まってるだろう!!それでも倉富 家執事か?!」
スカートにもかかわらず、足を大きく開く。
お前ら、パンツが見えんぞッ!!みたかねぇ けどなぁああッ!!
「いや、執事でもねぇし。ちゃんとお前らの 言ったとおりに言ったんだからいいだろ?あの『お邪魔でしたら下がりますが?』は、我ながら気持ち悪くて死にそうになった。」
突っ込みの衝動にかられながらも、柏木は 言った。
「「そのまま死んでしまえばいいのに。」」
紅茶をすすりながら、双子は声を揃えて言っ た。
かなり、まじめな顔で。
「不吉なことを言うなッ!!これは例え だ!!そんなんで死なねぇッ!!ッたりめーだろぉッ!!」
「「やだわー大声なんて。大人げないわ、柏 木サン?」」
柏木のあせりの突っ込みにケラケラと笑いな がら、双子は棒読で告げて、紅茶のカップを置き、去っていった。
「・・・・・勝手にいなくならないでほし かったりするんだけどねぇ・・・・・・」
「・・・・・・柏木君かしら?」
ぐったりとした柏木の目の前に見慣れないオ レンジ色の髪の女が爽やかに微笑んでいた。
どっかでみたことがあるような顔だが、覚え ていない。
「・・・・はぁ。柏木ですが・・・・・・ど ちら様でしょうか?」
「うっふっふっ♪やっぱり覚えてないよう ね。一回会ったことあると思うんだけど。夜吹と翔夢の母様でーす!」
黙っていたときに吹いた、爽やかな風が押し 戻される程の明るい声でその人、倉富爽は話した。
「もうさー・・・兄弟ったら、ひねくれもの じゃない?ダーリンも手を焼いててね〜・・・あ、私は全然なんだけどね。」
「はぁ。」
どっかりとソファーに座り、柏木に反応の時 間をあたえないが如く、喋り出す。
「男じゃなくて、女の子だったらよかったの にー・・・・フリフリブリフリ着せ放題じゃない?!男の子だとフリフリもブリブリも着せられなくってね〜つまらないわ、男の子。何度、女装させちゃおうか 悩んだわ。ま、顔がよかったから女装も似合うんだけどね。ねぇ、紅茶いれてくれない?」
「はぁ。」
かなり自由な性格らしく、柏木がその圧力に 押されているのにもかかわらず、紅茶を求める。
「怪盗をついでくれればいいのに ねー・・・・・・探偵さんなんて。正反対にも程があるわ。」
「はぁ。」
コポコポと蘭が置いていった紅茶のポットか らティーカップにいい香りの漂う紅茶を移す。
「本当、酷いわ〜柏木君は親不孝なんかし ちゃいけないわよ〜・・・・あ、ありがと。」
「「柏木ー早くこ・・い・・・・って、お母 様?」」
柏木から紅茶を受け取り、カップに口をつけ ようとした瞬間、ドアを開けた男姿の双子。
「あら、兄弟じゃない〜今日はタキシード じゃないのね。」
夜吹は黒いフード付きのトレーナーにブルー ジーンズ。
翔夢は長袖にフード付きのジャケットにジー ンズ。
二人共ラフな格好をしていた。
「「・・・・・何故、こんなところに?」」
「なぜって、そりゃあ、愛息子の顔を見に来 たに決まってるでしょ?」
爽は二人に向かって、ウインクをとばした。
それを見た双子は「ウゲェ」と顔をしかめ た。
「ねぇ・・・・・山吹姉妹って知ってる?」
「へ?知ってるも何もこい 「「あーーーーーーーーッ!!!!!テレビで見ましたよ!!!」」
柏木がケロリと答える声を塞ぐように双子は 叫んだ。
「「柏木、僕らが山吹姉妹だっていうのは両 親を欺くためだって言ったでしょ?」」
爽に聞こえないように小さな声で柏木にささ やいた。
「あの姉妹ったら、やっかいで ねぇ・・・・・最近、邪魔なんじゃないかっていう報告が来てるのよ。」
「「へぇ・・・・そんなに優秀ですか?彼女 たちは。」」
双子は笑うが、少し、笑みが引きつってい る。
それを内心、大笑いしながら柏木は黙って見 ていた。
「そうねぇ〜・・・・なんだか遠回しにきそ うで・・・・兄弟ちゃんも負けないようにね。」
「「ええ。あなたたちに関しては誰にも負け ませんよ。」」
「んふふ・・・・いいことが聞けちゃった わ〜そんなに私たちのことを思ってくれてるなんて・・・ママ、嬉しいわ。じゃ、柏木君、よろしくねぇ〜ん!」
「あ、ちょ・・・勝手にいかないでくださ い!!」
そう、言い残すと勝手にドアから出て、どこ かへ去っていってしまった。
まさに嵐のように自分勝手にはしゃぎ、これ また自分勝手にいなくなる。
はた迷惑な人だった。
そのあとに柏木が叫ぶように追いかけていっ た。
二人がいなくなった静かな室内で、夜吹はつ ぶやいた。
「・・・そろそろ勘づかれてもおかしくない ね、翔夢。」
「そうだね、そろそろ・・・・完璧な山吹伊 都と伊乃をつくていかなくちゃだね。」
同時に顔を見合わせて、頷くと双子も外へと 飛び出した。


あとがき
疲れた・・・・・・・・・
超特急GorB
でした。
本当は、これから続くのも書こうかなと思っ たんですが、やめました。
更新日を守りたい!!
ただ、それだけです!!(かっこええな〜 (笑
たまに、かっこいい明日路ですよ。
やっと、お母さんが出てきました ね〜・・・・
私のなかでは、この人が一番好きなんです よ。
やん、も・・・はじけさすでぇええ!!って 気合いを毎回いれてあげてるキャラですし。
書きがいのあるキャラですね。
あと、双子パパも。
これからでてくる新キャラは、結構重要なポ ジションにいる方なので、お楽しみに。
では、5話に。