gV 初仕事という島勤務
「いや〜も〜久々に僕たちに驚かない人間にあったよねぇ〜翔夢。」
「同感ッ・・・・貴重な人材だよね、僕らに驚かない人間。」
その貴重な人間が死にそうなんですが?!
波風に髪をなでられながら、彼らは笑っていた。一人を除いて。
僕たちことお騒がせ双子、翔夢&夜吹は一介のコンビニ店員である柏木凌をつれ、私有の島へとこれまた私有のフェリーにのって向かっていた。
「何ですか・・・・あの島は?」
「「だから、僕たちの島。」」
「それはさっきの説明でわかった。で、なんであんな異物な形をしているのかと聞いてる
んだけど?」
その島はなぜか二つのこぶがあり、そのこぶには大きく『S』と『Y』と書いてある。
まぁ・・・・なんとなくわかるが・・・
「「イニシャルをかたどっているんだよ、バカ店員。」」
あ〜・・・はいはい。どうせ馬鹿ですよ、馬鹿店員ですよ。悪いか、このへそ曲り双子。
付き合いきれなくなった柏木は双子に背を向けた。
「そういえば、もうお前は僕たちに雇われたんだから役目をやらないとだよね〜・・・・」
いつ、俺は雇われたんだ、いつ!!
背を向けたまま、聞こえてくる会話に心のなかで突っ込みをいれつつおとなしく聞いてみる。
「そうだね〜・・・翔夢はどういうのがいいと思う?」
「ん〜・・・・メイドは百合だし・・・執事は?」
「夜吹様、翔夢様、執事には私がいるではないですか!!」
どこから沸いてきた?!このおっさんは?!
同乗もしていないはずの蘭が船の上に突如現れた、蘭に戸惑う柏木。
それを横目に3人は当事者をおいて話をすすめる。
誰も蘭がどこから沸いてきたなど気にはしない。
「でもさ〜今回、両方ともくるんだし・・・なんか紹介しにくいじゃん、コンビニのバイトの人ですってさ・・・」
「そうだよ〜いくら蘭だからってそれをごまかすのは無理でしょ?」
「そうですね〜・・・じゃあ執事見習いっていうのはどうでしょうか?」
いやいや、だからなんで俺は雇われてることになってるのかを誰か突っ込め!!
柏木の心の叫びむなしく着々と話は進み、結局執事兼パーティーデザイナーとなった。
「いっとくけど、そんな資格もってねぇぞ、俺。」
「雇われたからには敬語を使いなさい、柏木。」
いつのまにか蘭の口から柏木の“様”が抜けた。
「いつ雇われたかわかんないし、書類とか何にもサインしてないんで拒否権はあると思うんですが?」
正当意見をいいながら、下のアングルでにらみつける。
蘭はすこしたじたじになっている。
「「そんなの僕たちの権力で阻止できるにきまってるじゃないか」」
しかし、双子は仁王立ちで「アッハッハッ」と笑いこけている。
なんやかんやで船から飛び出そうとしたが寸止めされたり、双子を殴ったらボディーガードなのか黒人の男にぶっ飛ばされたり、キャビンの中で拘束されたりなど
お蔭様で船のなかでさまざまな体験をさせていただきました。
「あ〜・・・・もう島についたじゃないか・・・・」
頭を抱えたくなるような島についてしまった。
どこに自分のイニシャルをつけた島があるんだっつーの!!!まぁ現実としてここにあるんですけどね!!
自分の踏みしめている地面の土がそんな自己中島だとは思いたくない。
しかし、船からでて、島を見渡せばなんてこともないプライベートビーチの大きい版。
リゾートホテルのようなビルと南国の雰囲気爆発の木々のジャングルと白い砂浜。
ビーチパラソルの傘下でそこいらのVIPがくつろげるようにイスがおかれていたり、もういたれりつくせりでどうにでもしてくれ〜っというほどだ。
今日はこんなところでパーティーがあるらしい。
しかも仕切るのは自分。
何の資格ももたないこの哀れな俺が何ができると思っているんだか・・・・ハァ。
自然にため息も漏れる。もらさずにはいられない。
「さてと、あの双子が主催者なんだから・・・・双子っぽさをだしてやりたいよな〜」
とはいいつつも与えられた仕事はいやでも仕事。
やらなくてはいけないという責任感はある。
着せられたスーツの袖口をまくりながら指示を待っているそれこそメイドに指示を出す。
「テーブルにはクロスを二枚重ねでかけてくれ、双子が主催だから右は青だぞ!!!」
「チーフッ!!左の夜吹様イメージカラーは赤でよろしいんですか?」
「違う、緑だッ!!さっきいったぞ!森本ッ!!そこは飴細工がのるからおくな!!」
あわただしく会場をセッティングしていく。
素人とは思えないほどのセンスとスピード。
それを横から見ている双子はニコニコと大満足で微笑んでいる。
「「いい仕事するね〜」」
声を重ねてほめ言葉は言われたくない。ほめられている気がしない。
双子はもう女の子ルックで、翔夢はさっきセッティングした色と同じいろの青のフリル付のタイトスカートにすっきりとしたななめにフリルのついたノースリーブを着ている。
夜吹は木の妖精のような緑のふわふわのワンピースを着ていた。
男に見えない容姿に俺もだまされてしまったんだッ!!
右手に花をもちながら心の中で叫んだ。
「チーフッ!!飴細工が届きませんッ!!」
自ら花を彩っていたら、奥からあせったようにスタッフが駆け寄ってきた。
そんな状態にも何にも驚かずに冷静に答える。
「・・・・しょうがないな、この屋敷内に色違いのぬいぐるみとかはないのか、蘭。」
「ございます。翔夢様、夜吹様がそれぞれデザインされました試作品段階のものが。」
「それを急いで持ってきてくれ。それを飴細工の変わりに使う。ほかに問題は?」
無言でうなずく蘭をみると柏木は安心したようにうなずき返すと確認を取る。
なんでこの男はこんなにも冷静なんだろうと誰もが思った。
「今のところございません。」
「そうか・・・・早く仕事についてくれ。」
スタッフたちが唖然としながら柏木を見つめる中、手をパキパキと動かし、仕事をする手を休めない。
「柏木ってこういうのやったことがあるんじゃないの?」
「同感。絶対なんかやったことあるよ、コイツ。」
双子たちが疑いの眼差しを向ける中で着々とパーティー準備は進み、終了した。
当初、設定されていたものとはかなり異なったが、柏木の斬新さがあふれていた。
ちょうど準備がすべて終了したところに派手派手な服を着た女性と男性が現れた。
「あら?レスト君はどうしたのかしらね、ダーリン。」
「知らない人がセッティングされたようだよ、ハニー。」
うあ・・・んだこの馬鹿夫婦は?!
柏木が立ちくらむ寸前に双子が口を開いた。
「「お母様!お父様!!」」
「はぁあ?!」
まぁ納得できるけど・・・できちゃうけど・・・・
それはもう双子の両親といわれればうなずくしかない。
「あら?夜吹、翔夢。今日はあなたたちがデザインじゃないはずじゃあないじゃないの?」
「「僕たちが参加するなら僕たちの自由にデザインさせてください。」」
本当は俺が担当するんじゃあなかったのかよ!!!
柏木は自分の身のつらさをまた知った。
「父様と母様が目立てないじゃないか。」
理由が不順だぁあああ!!!!
あやうく柏木は花をへし折りそうになってしまった。
「「そんなの関係ありません!!」」
「まぁいいわ。で、どちら様かしら?蘭、説明をしなさい。」
さっきまで馬鹿そうに見えていた女の顔がスッと気品あふれる顔に変わる。
少しの恐怖さえある顔だ。
「奥様、こちらは執事兼パーティーデザイナーの柏木凌という者でございます。」
淡々と喋る蘭は執事だな〜と思えた。
これが小説なんかに出てくる執事ってやつなんだろう。
「「僕たちが雇ったんだから口出し無用だからねッ!!」」
仁王立ちでかわいい顔を膨らませる。ツンデレかわいいな〜とその辺の美少女マニアなら寄ってくるだろう。
「口出しはしないさ。でも計画が崩れてしまったよ、マイスイート息子(サン)。」
「「あたりまえですよ!!!」」
腰に手を当て、両親に指を突き刺す。
「「怪盗ブルーリッチを捕まえたいんですからッ!!」」
怪盗ブルーリッチ・・・・ああ、なんか聞いたことあるよ。
違法宝石と呼ばれるものばかりを盗むために警察も手が出せないとか言うやつだろう。
新聞などのメディアでも騒いでいたな。
でもブルーリッチなんてこの場にいないじゃないか・・・
どうかしたかという表情で悩む柏木。
そこにどこからともなく現れたメイドの百合が現れた。
「夜吹様と翔夢様のご両親は怪盗ですよ、柏木さん。」
「はッ?!」
驚いた。親は怪盗なのに息子たちは探偵なんて。
「夜吹様と翔夢様は幼いころから怪盗業の修行をされていましたわ。でも、親の後ろにはついていかないといきなり申されまして・・・・いつのころか探偵業なんかをはじめられましたの。」
軽く説明されてやっとわかった。
あいつらあんな過去のなかで生きていたのかよ・・・・
少し驚いた。あんな若さでいろいろ経験してるし。
俺なんかそれの一握りも経験をしていない。
あー・・・・人生不公平。
「まぁ・・・俺には関係ないな。」
柏木は背を向けて完璧に彩られた会場から去っていった。
あとがき
お疲れ様でした。
今回、バタバタとしたなかでお送りしましたG or Bでしたが、まぁそこそこいけたと思っています。
構成はすんなりいったんですが、文にするまでに時間がかかってしまいました。
まだまだこれから柏木の戦いは続きます。
というか初回のG or Bのときと同じことを最後のほうは言っていますが、気にせずに。
そういえば、友達から「G or Bってどういう意味?」と聞かれたので説明を。
ちゃんと意味があるんですよ、何気なく。
夜吹&翔夢兄弟は男なのに女になったりしているので、『Gils or Boys?(女の子?それとも男の子?)』ということになるわけです。
もうお分かりかと・・・・・つまり略です。
ただ単にいちいち書くのがめんどくさかったので頭文字だけを取らせていただきました。
ただそれだけ。初期設定のときは世の中を渡り歩く謎の少年少女で女なのか男なのかさえもわからないという内容だったのでこの題名だったんですが、練りこんでいくうちに変わってしまいました。
そういう流れもあるんですよッ!!(笑
では、また違うお話で。