暗黒街4丁目13番地9 暗黒街物資取り扱い黒蝶商店
「いらっしゃいませぇ〜」
光のあたらない路地の一角にある店。
周りをほうきで表をはいていたロリ少女が小さな小人に声をかけた。
小人は小さな紙切れを渡すと消えていった。
「・・・・店長ぉ!!!!」
少女は何も喋らないで帰った客に対して、奥のほうへ走っていった。
長身の男がちゃぶ台の上でお茶をすすっている。
「何〜?魔莉ちゃん?・・・・もしかして!初めてのお使い?!」
「ンなわけないさ〜こんな暗い店に初めてのお使いはこないッスよ・・・」
ガラガラと古びた扉を開ける音が響く。
ヘルメットをはずした少年が遠くから声をかける。
「あ〜赤帽君。お使いお疲れ様〜大丈夫だった?」
「うッス。」
縁側に腰をかけると紙切れを拾おうとした。
その横から白い手が伸びてきた。
「ソレ使い魔ですよ、店長。」
大きなダンボール箱を抱えていたもう一人の黒髪の少女が一つも表情を変えずに二人の目の前を通り過ぎながら言った。
「ファオちゃん、本当?!さっきの使い魔か〜へぇ〜」
「アンタそれでも店長ですか?」
「そうだよ。それで何か?リョウ君。」
壁に寄りかかったピアスの少年が後ろから攻撃した。
天然という技にあえなく相殺されていたが・・・・・
「もぎたてハンドとミニ骨女、注文です。」
いきなり無表情でいいだすファオ。
「・・・・・・いきなりなんだよ、ファオ。」
「だから、注文。」
どんなことがおきても表情は変えずに冷静に仕事をこなす。
「了解、了解。」
「店長も普通に行かないで下さい!!」
「うるさいよぉ〜リョウ〜」
魔莉に言われたらすべてが終わりである。
「もぎたてと〜〜ミニ・・・・・・」
「どうかしたんですか?店長。」
奥のダンボールをごそごそいじっていた店長の動きが止まった。
どうやらミニ骨女がなかったようで、苦笑していた。
「・・・・どうするんですか!?」
「平気、肉は手に入るから。」
そういうと店長はリョウ、ファオを連れて出て行った。
一歩踏み出すと店に向かって叫んだ。
「赤帽君、店番よろしくね〜」
大きく手をふって叫ぶ店長は店長にみえなかった。
子供っぽい店長である。
「ウィ〜ッス!!」
「店長!!魔莉は?!」
でしゃばり屋の魔莉が赤帽を吹き飛ばして叫んだ。
「もちろん」というように笑って答えていた。
「店長平気かな〜?」
「平気だよ。店長だから。」
二人は大人しく店の縁側に腰掛けていた。
そのころ店長、リョウ、ファオは古びたビル街にきていた。
そこではカラスたちが二人の少年の前でバケモノの肉が引きちぎられていた。
店長以外の二人は表情を変えざるをえなかった。
「店長、アレ・・・・獲物ですか?」
「そうだよ。リョウ。」
「毎回ですが、気持ち悪いですね。」
古びたビルの陰から覗き込んでいると、カラスがパッと攻撃を止めた。
1人の少年が肉片の中から綺麗なかけらを取り出した。
「終わったようだね。」
そういうと一歩を踏み出し、少年たちに近づいていった。
「今晩は。神の使徒さん。」
キッと睨みつけた目は殺気にあふれていた。
リョウとファオはびくついた。
しかし、店長はいつものような笑顔で話し掛ける。
「コレ、いらないんですか?」
「何者ですか?」
ツンツン頭の少年が冷たい返事を返す。
あははと笑うと気を取り直したように話を切り出す。
「これは・・・・名乗るのが遅くてすみません。暗黒街でちょっと店をやっている者ですよ。名前は黒蝶。是非、御用があったら来て下さいね」
いつもの笑顔で名刺を渡す。
これが店長の武器なのかなと二人は影から思った。
「店長ってさ・・・・俺らにもわからない時ってすごいあるよな・・・・」
「ええ、それは同感ね。」
暗い夜空の冷たい風が二人の心に染みていった。
二人がすっかりひたっていると、店長が影からひょこっと現れた。
「二人共ッvお手伝いしてねv」
すこし怒りがまざった笑顔でこちらをみていた。
「はい・・・・」「すみません、店長。」
肉片と少しばかりの骨をもって帰路についた。
これでミニどころか普通の骨女でも作れてしまうだろう。
「ただいま〜」
コンビニにでも行っていたような軽さで帰ってこれるのは店長である黒蝶ぐらいであろう。
店につくやいなや、骨女を作るために骨組みに肉をつけていく。
「うん、できたよ。仕上げ、魔莉ちゃん頼んだよ。」
「はいは〜い!魔女ッ子にお任せアレ♪」
ビー玉のような小さな玉を店長から受け取り、組みあがった骨女に押し込む。
「ウリャ!!・・・・オッケ!!店長!!完成!!」
「はいはいはい〜ファオちゃん、使い魔さん呼んでくれる?」
「もう呼んでいます。というか遅くて来てしまったようです。」
もうさっき来ていた小人がファオの手の上に乗っていた。
その体のわりには大きな袋を持っていた。
「あら〜そりゃごめんなさいだね〜じゃあ渡すね。勘定は後日でいいからね。」
大きな袋に自分より大きなミニ骨女ともぎたてハンドを持って帰っていく。
テコテコと動いている後姿がかわいらしい。
「あれ、袋やぶれないんでしょうかね・・・・」
赤帽がボソっとつぶやいた。
「ウハアアアア!!!!」
その瞬間、店長が叫びだした。
「どうしたんですか?!」「なんですか?!」
店員が全員振り返る中で店長がからになったポテチの袋を逆さにしながら泣いていた。
「新発売ポテチが・・・・カラーメが・・・・超カラーメが・・・・」
激辛ポテトチップスカラーメ。
店長は超激辛カラーメ限定発売の味を楽しみにさっきの仕事をこなしていた。
しかし、現在残っているのは空っぽのカラーメ。
「誰?!食べたの?!」
こうなった店長は恐ろしいほどに目がきらめく。
殺気に満ち溢れた目で相手を見つめる。
「お、俺は店長と一緒にいたじゃないですか!」
「私も違いますよ。」
残るは魔莉か赤帽か・・・・
「魔莉は辛いのダメだし・・・・」
「お、俺も違うッスよ!!!」
しかし、食べ物の恨みは怖かった。
ミイラのようにさまよい続けていた。
そんな恐怖の塊と化した店長にさっきの商品の勘定が来た。
「て・・店長・・・犯人、わかりましたよ。」
「ナヌッ?!」
敏感に反応する店長。
「使い魔でしたよ。ほら、毛が残っています。」
「・・・・・客?」
「そうですね。」「ですねぇ〜♪」「だそうですよ。」
がくりと肩を落とす店長。
赤帽はそれをみて昔を思い出していた。
そういえばここにやとわれるきっかけもアレだったかな・・・・
ほほえましく和む空間の中で何かがうごめいた。
「ア・・・・・骨が・・・・」
骨女の肉ナシ版、骨が動き出す。
どうやら魔莉の力が近くにあった骨にまで移ってしまったようだった。
「・・・・赤帽く〜ん!!閉じ込めてぇえ〜」
商店の店内は今もバタバタしているのであろう。
それをほほえましく見つめていられている事が続くのかな?
作者より
黒蝶は好きなんですけどね〜おしかったです〜(涙
でも双子ちゃんも好きだからいっか〜(笑