“死ぬ”、“あの世”、“現世の記憶”。

生きているときには分からない、理解できない事。

それは死んで、自分で目にしなくては分からないものだ。

死すべき時の人間姿

―シ タ―

 

自分が死んでみるとよくわかる。

今まで自分を支えていたであろう、この地球のすべての姿が。

“丸い”、“青い”などと言われてきたが、ドス黒いじゃないか。醜いじゃないか。

青い?キレイ?美しい?

嘘つけ。黒い、汚い、ヘドが出る。俺を殺した車の排気ガスの色だ。

こんな世界に住んでいたのか、俺は。

ある一人の男が事故死した。

無論、その男は現在、この世にはいない。

男は死後世界に来て、宇宙のような空間から地球を見下ろしていた。

「醜いですよね〜・・・・僕も同感です。」

いつの間にか隣には背の高い男が俺の隣にたたずんでいた。

その男は触るだけで骨がポッキリ折れてしまうんじゃないかと心配になるくらいに細くて華奢な体をしていた。

この世界にいるということは、どうやら男も死者のようだ。

しかし、絶望していた俺より生き生きとなんだかこの地球を見慣れているように思えた。

「そういえば名前、聞いてませんでしたよね。僕はカミノセ カオルといいます。よろしく。」

カミノセはそういうとにっこりと微笑んだ。

それはもう可憐な微笑を。

ごっそりと“自信”というものを抜かれた俺も自分のできる限りのかっこいい笑顔で答えた。

「こちらこそ、よろしく・・・・っていっても死後世界で何ができるんだって感じだけどな。俺はシドウ リキョウ。リキョウでいいぞ。」

「わかりました、リキョウさん。では僕のことはカミノセと呼んでください。では、いきますよ。」

カミノセに導かれるままに真っ黒な地球を背にし、突然現れた白い道を歩き出す。

しかし、その白い道も進んでいくうちに黒く、狭く、冷たい道へと変貌していった。

すれ違う人、追ってくる足音、そんな自分たち以外の音は聞こえてはこなかった。

無言で歩いていく二人。

そのせいか。雰囲気でさえも冷たくひんやりしていく。

そんな状況にリキョウは耐え切れずに唐突に口を開いた。

「死んでいくものはみんなあんな黒い物体を見ていくんだな。」

「そんなことはないですよ。」

カミノセはリキョウの言葉を否定した。

それは今まで多くの死者に立会い、経験をつみ、今、リキョウとみた地球とは違う地球もみてきたような言い方だった。

それを事実として受け入れさせようというかのごとく、カミノセはしゃべり続けた。

「人によって地球は変わる。前に来た女は赤かったんだよ、あの地球は。」

「・・・・・どういうことだ?」

気がつけば足は止まり、道を進むことはなくなった。

「死後世界で見る地球は見た死者の心色。さっき言った女は親と夫を殺されて、自分も血しぶきの中で殺されたから地球は赤く、血の塊に見えたんだよ。」

すべてを話し終えたようにカミノセは一息ついた。

「っということは、俺の心色が黒くてヘドがでそうなくらいに最悪な心色だということが言いたいのか?!」

それを聞いたリキョウは怒り狂ったように怒鳴り散らした。

「お前は何故、そんなことを知っている?!俺と同じ死者ではないのか!?」

「ああ、そうですよ。僕は“神乗せ”だから。」

神が乗り移るための人間、“神乗せ”。

昔は死神と呼ばれ死者を導くものとして働いていた。

現在は“神乗せ”として生きて死者に心色を教えている。

それがなんになるのかはわからない。

しかし、それが “神乗せ”の仕事の一部だということだけしかわからない。

「人間ごとき愚民では僕たちを見ることすらできない。普通の人間の場合は地球は青いからな。『わーキレー』でもう死後世界だ。ちなみに僕の心色は銀色だったけどね。」

銀色の地球、それが“神乗せ”になるために必要不可欠なもの。

それを誇りというのか、自信に満ちた顔でカミノセは語った。

普通の人間ではみることさえ許されない存在、“神乗せ”。

ということは、リキョウは普通の人間ではないということか。

「では、俺は何者だ?心色が黒いのは何者なんだ?」

黒い地球は青い地球のように無意味な部類に入ってしまうものなのか。

リキョウはそれが気になってしょうがなかった。

「黒はね、指導者になれる価値のある死者が持つ心色だよ。」

「指導者?」

「うん、地獄でのね、指導者になれるんだよ。」

にっこりと微笑んでいるカミノセだが、もう眼では見捨てるような眼をしていた。

この運命からリキョウが逃げられないように束縛する鎖のような眼を。

そんな眼をみたリキョウはつぶやいた。

「もしかして、お前ら“神乗せ”は・・・・」

言葉をすべて言い終わる前に道が開き、地獄のそこへと落とされていった。

「“神乗せ”は“神乗せ”ですよ、黒き指導者、リキョウさん。」

カミノセはそういい残すとまた、もとの道を戻っていった。

 

あなたの心色はなんですか?

知らない?

だったら、僕たち“神乗せ”がお教えしましょう。

あなたの心色は・・・・

 

 

あとがき

4000Hitありがとうございました〜

九星主様のかわりに『死すべき時の人間姿』をお送りしました。

登場人物の名前を決めるのは一瞬でしたね〜

黒き指導者だからシドウ。

神を乗り移らせ、裁きをかわりにやる神乗せだからカミノセ。

漢字にするとバレそうなので全てカタカナにしました。

結構暗い話だけど深い。(自分でいうか

もし、死後世界がこういう明日路の妄想がピッタシだったら明日路の心色は青いでしょうね。

普通のひとです。“神乗せ”すら見えない普通の人。

変な死に方をしない限りそうでしょうね〜

みなさんも考えてみてください(フフ

そしていい感じな色を思いついたら教えてくだs(殴

それでは、次はLIVELOVEでしょうね。

では、またLIVELOVEで!