ファンタシースター
  〜千年紀の終わりに〜




ファンタシースター 千年紀の終わりに この作品が発売されたのは1993年12月17日で、当時はスーパーファミコン全盛の時代でもあった。
同時期に「ロマンシングサガ2」や、ほぼ同日に「ドラゴンクエストI・II」も発売されていたという事からも窺い知れよう。
そんな時期に、それまでのセガの看板RPGであった、ファンタシースターシリーズの総決算ともいえる、この作品が発売された。

便宜上、筆者は「PS IV」と呼んだり「P☆ IV」等と呼んだりもするが、正式タイトルに数字は振られてはいない。
「ファンタシースターIV 千年紀の終わりに」とはしていない所が、「IIIの続きではありませんよ。」という意味にも取れるし、「もうこれで最後ですよ、続きはありませんよ。」という意味も含んでいるようにも思える。
なんにせよ気になる所ではある。

それはさておき、総決算に相応しく、仲間になるキャラクターはもちろんのこと、登場する脇役やモンスター、乗り物に至るまで、過去のシリーズのエッセンスを散りばめた豪華キャストの応酬で、過去の作品をプレイしてきた人はニヤリとするようなものも、あちこちに用意されている。
筆者が個人的に嬉しかったのは、仲間になるキャラクターに、「モタビアン」や「デゾリアン」がいた事であった。

ゲームシステムも、基本的に「ファンタシースターII還らざる時の終わりに」の方式を踏襲し、それを進化させた物と言える。
移動モードは2Dのフィールドとダンジョンから構成されており、戦闘においては、通常の戦闘モードと、乗り物搭乗時の戦闘モードの2通りが存在する。

戦闘モードにおいては、キャラクターの戦闘コマンド実行時のアニメーションがより多彩になり、戦闘が行われる場所に応じた背景が加わって、臨場感は増している。
戦闘において、新たに、各キャラクター固有の「特技」が追加されたことや、各キャラが使用できる「テクニック」や「特技」の組み合わせと、
戦闘コマンド実行の順番が合致した時に限り発動し、様々な特殊効果や複合効果を発生させるという、「コンビネーションバトルシステム」が追加されたことによって、各キャラに確固たる存在感が生まれた。
このコンビネーションは敵も使って来る事があるため、それを使わせないような戦略を組み立てる等、戦闘の幅を広げる要素もあったと言える。
ただ、一度に戦闘に参加できるキャラクターは4人であるのに対し、仲間になるキャラクターは多く、どうしても使えないキャラクターが出てしまうのは否めない。
筆者は、14種類存在するという、コンビネーションの組み合わせを探し出す事に没頭するあまり、あるキャラクターをパーティメンバーに加える機会が殆どなかった程である。
特筆すべきは、マクロの機能が追加され、「ファンタシースターII 還らざる時の終わりに」のオート戦闘がより進化し、快適になった事だろう。
コンビネーションの組み合わせも、事前にマクロに登録しておけば、確実に出す事も可能であった。
そして、随所に挿入される、マンガのコマ割にも似たビジュアルシーンも、物語の演出にテンポを与えていた。
ただ、これは今思えば、「多数の小サイズの一枚絵を、並べて表示する事に落ち着きました。」といったような、ROM容量と、メガドライブの表現能力の限界から、妥協して、こういった形にせざるを得なかったのではなかろうか、と思われる演出ではある。
ストーリーそのものは、アンドロイドキャラの登場で、一応「ファンタシースターIII 時の継承者」からの流れもくんでいるようだが、「ファンタシースターII 還らざる時の終わりに」の純粋な続編で、舞台は第1惑星パルマが消滅し、マザーブレインが破壊され、千年が経過した後、砂漠の惑星に戻ってしまったモタビア星であり、そこから物語の幕は開く。
あいかわらずな重い雰囲気かと思えば、意外とコミカルなタッチで描かれている部分も多く、物語に登場するキャラが、どこかユーモラスな部分をもちあわせており、悲壮感を感じさせない。
今作で登場した、ギルドからの依頼を受け、サブストーリーをクリアしていくという、「ファンタシースターオンライン」でもおなじみである、ハンターギルドのシステムも相まってか、序盤はそれなりに楽しげに物語は進行していくのだが、物語が進むにつれて「ファンタシースターII 還らざる時の終わりに」と同様の、救われない雰囲気が見え隠れし始める。
筆者は、当時「ファンタシースターII還らざる時の終わりに」の物語の衝撃がまだ生々しく残っていた為「またか、またなのか?」と、ある時点で物語の進行を止めてしまっていた程だ。
何故ある時点で止めてしまったのかは、実際にプレイすれば、理由は自ずとわかるのではないだろうか。
紆余曲折ありながらも、エンディングまで辿り着けば、含みが残りながらも一応は納得のいく形でファンタシースターシリーズの幕はおりる。
ある意味、ありがちな幕の引き方ではあったが。

「ファンタシースターオンライン」が世に出るまでは、ファンタシースターシリーズ最終作であった本作。
「ファンタシースターオンライン」発売後では、かの作品への橋渡しになったとも言える作品である。
この作品があったからこそ、「ファンタシースターオンライン」が世に出されたと言って過言ではないだろう。
まさか、オンラインでソニック達と、「ナウラのケーキ」や、「ろっきい」を探しにいったりするとは、当時は思いもしなかったはずである。


投稿者:オサール菱井


BACK