光の不思議


春夏秋冬、季節により、一日の時間帯により異なる光、光を読むのは本当に難しい。いつもこの光でどんな写真になるか予想しながら撮ってはいるが、計算どおりにいくことは少ない。予想外の写真が撮れるから楽しいともいえるのだが、予想した写りと異なる、どうしようもない写真ばかりが増えてくると言うのも困った話で.......。 もともと写真には興味無く、休日に公園などでカメラマンの集団に出くわすたびに、マナーの悪さに眉をひそめていたものだ。その時は私がその仲間入りをすることになるとは夢にも思わなかった。それが、たまたま日沖宗弘さんの「プロ並に撮る写真術」を読んだのがきっかけで興味を持つようになった。どこかに、映像に対する興味が内在していたのだろう。ライカRやMなど「禁断の味」とか、死ぬほど美味などと書いてあったら、やはり使ってみたくなると言うものだ。最初に価格も手頃だったので委託品のレチナUcを購入、試写の結果は芳しくなかったがメカの凄さには感動した。その頃、友人が見せてくれたフォクトレンダーのビトーマチックカラースコパー50mmで撮った上がりは今まで見たことの無い美しい色だった。特に空の青さが純度の高い色で印象的だった。そうなると、やはり同じカメラが欲しくなった。そして友人と二人でビトーマチックを買いに行って、ローライコードVbを購入して帰ってきた。



ローライコードVb クセナー 1:3.5 f=75mm

在庫が無かったので、小さい頃にU眼レフのファインダーを覗いた感動を思い出して二眼レフにしたのだ。このローライコードのクセナーは素晴らしかった。特にポートレートの上がりには中判ならではの迫力があった。残念ながら、モデルの女性には古めかしいローライコードでの撮影は皆に奇異の目で見られることと、顔が下膨れに写ると嫌がられてしまった。ローライコードは他にも、使いやすさとかシャーッター音が静かだとか焦点の合わせやすさとかメカニカルなものにも魅力があった。

次は、ローライコードが素晴らしかったので、プラナー中のプラナーと言われるローライフレックスのプラナー80mmを確かめたくなった。ローライフレックスプラナー80mmは中古で何処の店でも展示してあったが、程度の違いやお店による価格差が大きくどれを買ったら良いのか皆目見当がつかなかった。そこで、一生大切に使うと決心、思い切って新品の2.8GXを購入した。それが今はほこりをかぶっている。2.8GXが良くなかった訳ではない。ローライコードでも、その後手に入れたフレックスのクセノター1:3.5f=75mmでも十分同等に使える事が判ったからで、同じローライ、どれも定評のあるレンズが悪いわけは無かったのだ。私は使い方がラフなので綺麗なカメラは逆に使いにくかった。そこで今はもっぱらクセノター75mm付きのローライフレックス3.5E2を使っている。

最初から気になっていたフォクトレンダーだが、135mmのスーパーダイナレックスが委託品で出ていたのを見て二週間考えて購入、と言うのはデッケルマウントのレンズを一本購入すると、他のデッケルマウントレンズを集めることにつながるからだ。それからボディを何にするか、インターネットを検索しまくって、色々調べてそれでもボディが決まらない。やはり弄ってみないと決められないのだ。数ヵ月後、デパートの中古市でカラースコパー50mmつきのベッサーマチックをお店の人に勧められるままに購入。レチナやローライU眼を使っていた私にはベッサーマチックはミラーショックやシャッター音が大きく図体も大きくデザインも好きになれなかった。結局、デッケルマウントのレンズは、EOS55にM42マウントアダプターを介してレチナハウス謹製デッケルマウントアダプターを介して使う事になった。

その後、レチナハウスで冬のバーゲンがあったのだが、このバーゲンの目玉商品の中にマクロスイター50mmのRマウントがあった。50mm標準レンズの最高峰と言われているレンズを一眼レフで使えるのである。アルパの壊れやすさは定評があるので、一生使うことの無いレンズと思って諦めていたのがマクロスイター50mmだった。しかし手に入れるためにはバーゲン当日の朝早くから並ばなければならないのと、やはり高価なのでちょっとためらう気持ちがあった。バーゲンは列の最後方に並んだ。もうとっくに売れていると諦めてスコパレックス35mmを購入、帰ろうとしてショーケースを見たら、あった!Rマウントマクロスイター50mmが。まだ、売れていなかったのだ。運命だったのかもしれないと勝手に思いこんで購入した。 マクロスイターは同じくEOS55にRマウントアダプターを介して使い始めた。レンズのギャラリーにも書いたのだが、マクロスイターは最初に晩秋の景色を撮ったが上がりを見て感激もしなかった。優れたレンズだが噂されているような高解像度ではなかったのだ。しかし上がりの晩秋の景色を見ているうちに、映画の一こまのような雰囲気と空間の描写にだんだん魅せられていった。

デッケルマウントのセプトンとも比較してみたりしたのだが、セプトンは色がやや濁っていて、それだけで比較の対象にもならなかった。たがセプトンは、どこかに強靭な主張を感じさせるものがあった。使い方によってはセプトンでなければ出せない描写をする可能性があると感じたのだが、私の使い方ではやはりマクロスイターの魅力が勝った。セプトンの可能性よりマクロスイターの可能性をたしかめてみたかったこともある。マクロスイターはその使いやすさもあって、デッケルマウントのレンズに交換するのが面倒で、デッケルマウントのレンズは、次第に使わなくなってしまった。それよりも、なんでもない景色が絵になるのがマクロスイターの良さと知ってから、しばらくはマクロスイターしか使う気になれなかった。



Rマウント マクロスイター 1:1.9 f=50mm

マクロスイターをEOS55で使うのも、露出計が信頼できるので快適だったが、無限大でレンズの後玉にミラーが当るので、ミラーを削った。削りすぎて最後にミラーを割ってしまったが使うのに大きな支障は出ないのでそのまま使っている。光は常にシャッターに当っているのに光漏れは今まで一度も無かったしミラーの回転で割れているミラーが四散することも無く使えている。さすがEOSだが設計者が見たら怒るかもしれない。EOS55は2年以上使って来たので、そろそろEOS3かEOS1N当りに乗り変えようかと思っているが、またミラーを削るのかと思うと二の足を踏んでしまう。高級機をジャンク品にするのはそれなりに勇気がいる。

それなら素直にRボディを使えばいいんじゃないかと言う人が多いと思う。私もR3を使ってみた。ミラーショックが大きいのと、露出計がのろのろ動いてすぐに定まらない。それと一番の問題は、露出計の指示値が異なるのだ。EOS55の露出計とR3の露出計の指示値がそれぞれ異なるのだ。考えてみればマクロスイターのRマウントにはカムが何も無かった。露出補正が利いていないのだ。ついでに、最もシンプルなセコニックの単体露出計を購入して補正量を調べてみた。これがまた問題だった。EOS55とセコニックの単体露出計は平均して2段分近く指示値が異なっていた。EOS55の露出計とR3の露出計そしてセコニックの単体露出計がそれぞれ別の指示値を出し、しかも状況によりその差がころころ変化する。最後には何が正しいか判らなくなってしまった。結論は、EOS55と勝手に決め付けた。、最も適正露出で写る確率が高かったからだ。そんなややこしい状態が嫌になってR3を使うのは諦めてしまった。

マクロスイターに慣れた頃、マクロスイターがRマウントだったので、次のレチナハウスの夏のバーゲンでとうとうRレンズに手を出した。日沖宗弘さんがとんでもなく良いレンズだと言っていたエルマリート1:2.8f=90mmである。最初に撮った長野での風景写真がそれからの方向を決めることになった。今までにない、なんと表現すればいいのだろうか、私の中のイメージで言えばヨーロッパ調の色彩と言うのだろうか、中間色が美しく大変華やかな色彩がそこにあった。



エルマリートR 1:2.8 f=90mmの作例

このエルマリート90mmの最初の撮影で、Rレンズは本当に素晴らしいと思い込んでしまった。それから色再現に最適な光を見つけようと試行錯誤のまま、2年間続いて今日まで来ている。それ以後いくら撮っても、この時以上の色は再現できなかったのだ。色は好みで最適な発色など存在しないと言う意見もあるのだろうが、そういう意味では好みの発色に最適な条件、いつかその条件も付きとめたいと思っている。
光の違いによる発色と言うと忘れられないのはハッセルのプラナー80mmだ。



これも愛用しているCONTAX AX + ハッセル プラナー 1:2.8 f=80mm重い分だけぶれにくい

同じ被写体をエルマリート90mmと何度も比較して判ってきたのは、ハッセルのプラナーの方が色の純度が高く、光の変化に敏感だということだ。写りも階調が豊かで穏やか、いかにもシャープですと言う写りではなく、器の大きさをかんじさせる写りだ。それなのに結果はどうも思わしくないことが多い。一口でカラーバランスが悪い、色がくすんでいると言ってしまえばお仕舞いなのだが、なにかひっかかるものがある。比較すると色が濁ったようにさえ思えるエルマリート90mmやズミクロン90mm等のRレンズがなぜ好ましい結果を出すことが多いのか。なにか深い理由が潜んでいるように思える。

出番を待つカメラやレンズ達



ベッサーマチック スコパレックス 1:3.4 f=35mm



レチナVc クセノン 1:2.0 f=50mm



ヴィテッサ ウルトロン 1:2.0 f=50mm



コンタフレックス スーパー テッサー 1:2.8 f=50mm



ダイナレックス 1:3.4 f=90mm



MC-JUPITER-9  1:2.0 f=85mm

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