第2話 G・BALL

はるみのプログラミングレッスンでゲームプログラミングを覚えてから 暫くは、オリジナルゲームとはいえ、 はるみシリーズの流儀にのっとったデザインでゲームを作ってきた。 それからスキルが徐々に上がってくると、倉庫番、ロードランナー、 アイスクライマーといった市販ゲームの真似ゲーを作る段階になっていった。 しかし、受験期を経て、この頃初めて、ゲームのオリジナリティというものを 気にしだしていた。すなわち、 それがどんなに面白いゲームであっても、 他のゲームを真似ただけのものでは意味がない、という考え方だ。

これには、ベーマガの影響がかなりあると思う。 ベーマガの論調も、ちょうど「クインティ」が 絶賛されていた頃のあたりから、「アイデアの大切さ」を 強調するようになってきていたと思う。私はそれにモロに影響を受け、 「奇抜なアイデアで作り上げたゲームこそ賞賛に値する」 という 思想を徐々に持つようになっていた(この頃はまだ、それほど 明確には意識していなかったが)。

「ゲームなら何でもよい」から、 「より面白いゲーム」へ。そして、 「今まで見たこともない斬新なゲーム」 へ。ちょうど、ゲームプレイヤーが 辿る「嗜好」の道筋を、「作る」ことを趣味とする私も同様に 辿っていったことになる。もともとゲームを作る原動力となるのは 「こんなゲームがやりたい」であるから、これもごく自然な 流れだったといえよう。

G・BALLは、通学途中の電車の中でふと思い付いた、 「重力反転ブロック崩し」である。もともとは、 小学生の頃に考えていた、「板を動かし、はねるボールを 誘導しつつブロックを消していくゲーム」 (ちょうど卓球ラケットでピンポン球を跳ねさせながら移動する 様子を思い浮かべてみるとわかりやすい) がベースとなっているのだが、それに加え

という要素が加わっている。 早速PC−9801UV2を使ってこれをプログラムしてみた。

・・・だが、つまらない。出来たプログラムは、試しに組んだだけなので 球が壁にめりこんだりしてヘボさ満点ということもあるが、なんともまったりとした、 何が面白いんだかさっぱりわからねえという感じの仕上がりになっていた。

「グラフィックベースでは、面白くならない」こう直感した私は、キャラクタベースで 作り直すことを決心した。とすれば、なにも98で作る必要はない。 8001の出番である。そんな折、「山火事だ!ゲーム」の 快挙を目の当たりにし、「8001版G・BALL 作成計画」はいやがおうにも盛り上がっていったのである。

ある日の日曜日、朝起きるや否や(ちょっと言い過ぎ)、 制作を開始。仕様を決定し、フローチャートを書き、ノートにプログラムを書いていく。 久々にmkIIの電源を入れ、プログラムを入れる。 やはりPC−8001mkIIでのプログラミングは楽しい。快調である。 途中ちょっと休憩して楽器を演奏したりした他は、ほぼ一日中、夜中まで プログラミングに没頭した。

以後も制作は順調に進み、ほどなく「G・BALL」は完成した。

そして、投稿。殆ど何の苦労もなく(ステージデータ作成はちょっと手間取ったが)、 サクサクとここまで漕ぎ着けた。もっとも、プログラム的には、「ボールを キャラクタ単位にもかかわらず放物線っぽく移動させる」ということ以外に ほとんど変わったことをしていなかったので、それも当然といえば当然なのだが。

翌年の1月8日、あえて学校の近くの本屋では結果を見ず、家の近くの本屋まで帰って 立ち読みしてみた。

・・・載っている。山火事だ!ゲームに続き、G・BALLも載った。

嬉しかった。前のときと違い、今回は多少ゲーム内容にも自信があった。 それが(一応)認められてこうして本に載るというのはやはり嬉しい。 このようにG・BALLは、構想から掲載まで極めて順調に進んだゲームであった。 今まで随分といろいろなプログラムを組んできたが、 これだけ順調に行った例というのは殆ど記憶にないというほどのものであった。


G・BALL


タイトル画面。「G」の字を構成するキャラが"_"→"■"→"↑"と変化する。 「G」は重力のGの意。


ボールをうまく跳ね返し、1から順番にブロックを消せ!


これは最難関の8面。ほとんど1本道というとんでもない面。 ちなみに私もクリアしたことありません。


そして感動のエンディング。


タイトル、エンディング、面開始時には音楽が流れる。もちろん単音ですが。 Plesented のスペルが間違っているのが微笑ましい。まあ高校入ったばっかりだったし、 といちおう言い訳。


ちなみに企画書はこんな感じ。

エミュレータ用ファイルは こちらです。