第5章


 中学時代の、私のベーマガに対するイメージは、「ハイレベル」であった。 特に、投稿プログラムは、「初心者のためのベーマガ」というイメージを 覆す、パワフルな作品が多かった。

 象徴的なのが、88年の4月号である。「創刊70号記念特大号」と 銘打たれたこの号のプログラムコーナーは、圧巻であった。
 まず、PC−8001用のシューティングゲーム 「N−TYPE」。 N−BASICでドラゴンスピリットを実現(?)した名作 「Dragon ’N’ Spirit」 の作者、Bug太郎氏が放つ、 待望の新作である。どのくらい待望だったかというと、88年1月号の 「読者のあくせすコーナー」で、「Bug太郎さん、今度は「AFTER ’N’BURNER」か「N−TYPE」を作ってください!」という 葉書が載るほど待望であった。(ちなみに、AFTER’N’BURNERは、 別の作者が、2月号の 「MINX17」で実現している。)

 そして、MSXの 「OUT LAND」。 名前からわかる通り、Out Runの 移植(?)である。このゲームは、それまでの投稿作品とは違い、道路の アップダウンも表現していた。アップダウンの表現は、ちょうど私が 興味を持っていたテーマだったので、それを実現していたこの作品には、 「凄え、ハイレベルだ!」と驚いた記憶がある。

 さらに、PC−6001mkIIの 「FINAL TIGER」。 N−TYPEの 影に隠れてあまり目立たなかったが、これも凄い作品である。縦スクロールで 敵もバリバリ登場する、オールマシン語のシューティングゲームである。

 そのほか、M5のシューティングゲーム「DANGER ZONE」や、 PC−8801のトップビューのアドベンチャーゲーム「消えた王様の冠」など、 とにかくパワフルで、「こ、これは!」と思わせる作品が目白押しであった。

 この中でもやはり特筆すべきなのは「N−TYPE」であろう。
 これは、メインルーチンがオールマシン語であるというハイレベルさも さることながら、そのメジャー性が光っていた作品である。
 グラフィックキャラクターを効果的に使い、味のある敵キャラや派手な爆発を 実現していた。特に凄かったのが、各面最後に登場するボスキャラである。 超巨大なボスキャラが、しっぽを動かしたりヘビのようにウネウネ動き回ったりと、 ド派手な演出を見せてくれる。

 この作品が凄いのは、後のプログラムコーナー、それもPC−8001だけでなく 全ベーマガに影響を与えたことであろう。この後しばらく 「N−BASICブーム」 と呼ばれるPC−8001黄金時代 が到来し、すでに歴史の遺物と化していた筈の N−BASICで、Bug太郎に続けとばかりに、アーケードゲーム顔負け (はさすがに言い過ぎだが)の派手な演出のゲームや、逆にアイデアに富んだ 佳作など、パワー溢れる作品が次々に発表されていくのであった。
 誌上公開質問状のコーナーでは、「PC−88シリーズでN−BASICを 動かすには、どうすればいいのですか?」という質問が幾度となく繰り返され、 他機種のコーナーの作品には、「N−TYPEに負けじと作ってみました」という 投稿がいくつも掲載されていた。とにかく、数え切れないほどの投稿者を 刺激した、図抜けた作品であった。

 このような作品達を目の当たりにし、私は、とり残されたような気分になっていた。 自分のテクニックもそれなりに向上しているつもりだったが、ベーマガのレベルは それ以上に上がっているようだった。自分の成長のスピードが、ベーマガの成長の スピードに追いついていないという焦りを感じていた。
 「もはや、自分の実力では、プログラム投稿はできないのではないか・・・?」
 そのせいかどうか、MOUNTAIN CLIMBER以降、かなり長い間、 ベーマガに投稿することはなかった。


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