第1章


それは、ある冬の午後だった。
その日、われわれ4年生は、笠原小学校の図書室にいた。
何をしていたかは忘れたが、とにかくやるべきことを終え、みんな授業が終わるのを待っているところだった。
そのとき、一緒にいた5年生のお兄さん達が読んでいる一冊の雑誌が、私の目にとまった。
「パソコンの本だ!」当時からマイコン少年だった私は、すぐにその場へかけつけた。
5年生たちが見ていたのはゲームの紹介記事だったのだが、途中、少しだけ開かれた白黒ページを、私は見のがさなかった。
「プログラムの記事だ!」そう、それは、私が初めて見るプログラム雑誌だったのである。
それまで、「はるみのプログラミング・レッスン」や、I/O別冊など、 プログラムの本はいくつか見てきたが、雑誌としてプログラムが載っているものを 見るのはこれが初めてだった。
その日から私は、暇さえあればその雑誌に会いに図書室に通うようになったのである。
マイコンBASICマガジン。それが、その雑誌の名前だった。
それは、まさに夢のような雑誌だった。
なにしろ、一冊の本に、50本以上の面白そうなゲームプログラムが載っているの である。
しかも、それが毎月発売されるというのだから、それは、まさに アイデアの宝庫という感じだった。
とにかくそこにあるゲームをやってみたい。しかし、雑誌は貸し出し禁止であったし、 当時はコピー機などというしゃれたものは図書室にはなかった(今もないが)。
そこで私は、そこにあったゲームの中から、愛機PC−8001mkIIで できるゲームを探し、特に面白そうだった「たかちゃんHOUSE」という ゲームのプログラムを、ノートに書き写す ことにした。が、昼休みを丸々使って10行くらいしか進まないことが判明し、 さすがにあきらめた。

そんなある日の土曜、私は、ヨーカドー杉戸店 の書籍売り場で、その雑誌が売られているのを発見した。たまたまその日の 午前に、プログラムを打ち込むバイトをして親に500円もらっていた私は、迷わずその雑誌を 購入することに決めた。


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