地下の庭
女性専用フィットネスジムサンクンガーデン
設計/施工:2003年
場所:東京都港区
担当:柳原博史、大西瞳、増澤昌
施工協力:(株)東京ガスグリーンテック
クライアント:エスティネーション
□ 地下へのアプリーチ
ランドスケープと地下空間の関係は、元来あまり良好ではない。
特に都心の狭小なビルの地下入口は、入るのに躊躇したくなる場合が少なくない。植栽をしようにも日照条件が悪く、水もあまり映えない。それでも商業施設のエントランスとして、少しでもWELCOMEな雰囲気を作り、地下の無機質な雰囲気を和らげるべく植栽を入れ、女性専用のフィットネスジムという特別な場所に相応しい設えをしたいという要求にどのように応えられるか。
この場所は、約15平米程の階段下のサンクンガーデン。少しの自然光は得られるものの、ジメッとした無機質な空間である。それでもエントランスの前庭として、螺旋階段ではないものの、階段を下りながら、徐々に視点を下に移動させ、このガーデンを回り込んで中に入って行くというアプローチ空間となっている。こうした、階段と一体化した空間において、そこに一歩足を踏み入れた時から、異質な空間性を体験しつつ、徐々に渦中に入り込む。この動線上にどのような可能性があるか。
植栽の選択肢はかなり狭まれるものの、観葉植物で屋外対応が可能なものを中心に、高さのバリエーションとボリューム感、葉の多様な表情を意識した、熱帯系植物で構成。しかしながら、大半の熱帯系植物の濃い緑の葉は、日陰では今ひとつ映えないため、床面にピンク色に染めたサンゴ砂利を敷き詰める。砂地の柔らかいテクスチュアの上に、少しだけ表情を持つ同じ形状の鉢を20鉢程並べる。更に3箇所程度、赤い鳥籠とそれを吊るす赤いポールをアクセントに据える。鳥籠の中に、本当は鮮やかな色の鳥を入れたいところであったが、さすがにメンテナンスの負担が大きすぎるため、少し鮮やかな色味を持つ、鳥の羽根のような小型の植物を入れることに。また、足下の幾つかの鉢には、水と照明、小さな循環ポンプを仕込み、少しだけ動きをつける。そう、水場から鳥が飛び立つ程度の僅かな水の揺らぎが、無機的な空間の中で、ちょっとした気配をもたらすはずである。
階段を移動しながら、横に見るアプローチ空間は、鳥がいるかもしれないようなポケット・トロピカル・ガーデンとなった。扉の向こうで、より激しく汗を流すための、その前奏曲として、熱さと爽快さを、違う表現で表した庭である。
back > |