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「影響力の武器 −なぜ、人は動かされるのか−」







informationお知らせ 本書は、アリゾナ州立大学の社会心理学者・R. チャルディーニによる著作を10人の社会心理学者が翻訳したものです。本文334頁というやや厚めの本ですが、社会心理学の研究に裏付けられた現象をチャルディーニ自身の体験とともに大変読みやすく書かれています。 なぜ、私たちがほかの人たち(友人、親、セールス・パースン、ニュースのキャスター、ウェイターなど)から影響されてしまうのかという問題を取り上げています。その解答として、チャルディーニは、返報性(お返しの原理)、コミットメントと一貫性(一度自分の考えを表明してしまうと、それに縛られた行動を取ってしまう)、他者の反応(他者と同じ行動を取ろうとする傾向)、好意(好きな人からの働きかけには応じやすくなる)、権威(制服を着ている人や専門家と呼ばれている人からの働きかけには応じやすくなる)、希少性(数量が少なかったり、時間が制限されたりすると、ついつい手に入れたくなってしまう)という6つの要因を挙げています。

 第6章 権威 −導かれる服従− (pp. 249-283)  チャルディーニは本書の中で権威について明確に定義はしていませんが、正当性をもつ(制度化された)専門家を一般に権威(者)と呼ぶことができます。例えば、医者、弁護士、研究者などです。本章では、私たちがそうした権威をもつ人たちの働きかけに対して、その働きかけが意味のある、正しいものであるかどうかを自分で判断することなく、すぐに受け入れてしまう傾向のあることを指摘しています。最近よく報道される医療ミスの1つの原因は、権威(医者)に対する単なる服従にあると考えられます。 権威をもつようになることは、一般に多くの努力を必要とします。しかし、権威をもっている振りをすることはたやすくできてしまいます。制服を着たり、名刺を用意したり、聞きかじりの専門的知識をひけらかしたりすればよいからです。多くの人はそうした権威を示す「飾り」に疑問を差し挟もうとはしません。 権威に基づいた不当な働きかけから不利益をこうむらないために、チャルディーニは次の2点を実行することを挙げています。すなわち、(a)その権威者が本当に権威ある人なのかどうか、(b)受け手のことを思って誠実にいろいろな専門的な知識を提供してくれているのかどうかをいろいろな情報源から確認することです。


profile

ロバート・チャルディーニ

1991 誠信書房
\3,466


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