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もう一つの「太平記」
−南朝最後の天皇「自天皇」のナゾ−
    



informationお知らせ この記事においては、宇津木家に伝わる古印と神像、そして、『見聞諸家紋』、『宇津木家譜』に基づいて、宇津木氏と長禄の変との関わりを推測しました。宇津木氏は、北朝方として関与し、北朝が南朝を襲撃した長禄の変に関わっていたようです。北朝方の天皇の命によるとは言え、南朝方の皇子や天皇を襲撃したというのは、あまり心地よいことではなかったと思われます。そのため、自天皇の姿を彫ってお祭りし、古印には「自天皇」と彫ったのではないでしょうか。 宇津木家当主は、1987(昭和67)年に古印をもって、長禄の変が起きた、現在の奈良県吉野郡川上村に赴き、郷土史家の故中谷順一氏に会うことができました。中谷氏は、古印に彫られている文字を「自天皇」と読めるのではないかと判断され、宇津木氏とこの古印との関連性を理解する手助けとなりました。現在でも、川上村には筋目と呼ばれる方々は、長禄の変以来、1年も欠かさず、毎年2月5日に自天皇を供養するために朝拝式を執り行っています。

 なお、長禄の変にまつわる隠れ岩、腰掛け石などが村内(北塩谷)を流れる吉野川にありますが、現在建設中のダムのために、数年後には水没してしまうということです。

 また、自天皇に関連する小説としては、谷崎潤一郎の『吉野葛』があります。


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月刊『現代』

1991年2月号
pp. 292-307

講談社


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