絵から頂く幸せ

会員
山 田 陽 子

 ずっと以前、八木伸子先生は「絵から頂く幸せ」について話されました。実は、私の胸の内を去来している思い出もありました。以来、絵を描くことや見ることの他にも絵を通して頂くたくさんの幸せがあるという実感をつよめて過ごしてきました。その事を気づかせてくださった八木保次・伸子先生との出会いは、まさに私の「絵から頂く幸せ」の第一歩でした。30代半ばの秋のこと、朝日カルチャーセンター水彩画講座に目が留まりました。「絵は心の旅」とのフレーズと初めてお会いする八木両先生の写真が並んでいました。その頃の私は旅など難しく、絵で旅ができるとはなんとステキ!と、気が付いたら八木教室のイーゼルの前でした。絵は大好きでしたが、ほとんど描けない私にとっては幸運のスタートでした。
 当時水彩画教室が増えはじめ三大公募展以外にも発表の場が求められていたようです。間もなく道彩展誕生となる訳ですが、八木先生はじめ他展の諸先生方の熱心なご指導なしに今日の道彩展は語れないと、この時も「絵から頂く幸せ」に感謝しています。唯一の創立会員であり道彩展代表として一筋惜しまぬ力
を注いでくださっている小堀先生もかけがえのない存在です。
 私は第17回道彩展から15年間連絡事務所となり、年々初出品が増えて行く中、美術関係者や道内各地の出品者の方々と「水彩への思い」を享受し交流させて頂いたことなど忘れ得ぬ思い出です。一番「絵も人なり」を感じた時でした。感動的なエピソードが一つあります。第20回記念道彩展でついに念願の図録発
行にこぎつけ会一同喜びに心熱くしていた丁度その時、「道新の記事を見ました―」と全く関係者でない函館のSさんから電話が入り二冊お買上げくださいました。新聞の力は大きい!と思いましたが、あの時の喜びの大きさには叶いません。そのSさん図録を何度も観て「水彩画に魅せられました」と翌年からは出品・入選し続けて、10年後ついに北海道教育長賞に輝いたのでした。
 第35回記念道彩展を迎えた今年、悲しくも八木両先生の姿はありませんが、まだまだ絵や画集から学ぶことも多くあります。今、私はあいの里の空の下「水彩の小さな種」を蒔きながら咲きはじめてきた彩りあふれる花々に幸せを頂いています。



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