印象主義と表現主義
―第35回記念道彩展によせて

作家
札幌時計台ギャラリー代表
荒 巻 義 雄

 写実主義に学びつつも、屋内から屋外に出て、光に満ちた世界をありのまま己の中に受け入れようとしたのが、フランスで起こった印象派の運動であった。
 彼らは、自然というものを光と色が戯れる場として捉えようとしたのだ。まさに、世界観の大きなパラダイムシフトである。
 それまでのコチコチだった世界観が一変、“風光る”動の世界、外光派の作品となった。
 しかし、印象主義は1880年代を頂点として衰退を始めると、20世紀初頭の1905年、ドイツを中心として表現主義が興る。
 両者の明らかな違いは、南欧と北欧の光の差である。気質的には、ラテン系とゲルマン系の気質の差でもある。
 表現主義では、印象主義とは反対に、人間の内なる感情を外部へ押し出すのだ。
 仏語のimpressionnismeと独語のExpressionismus、それぞれの接頭語が意味する、(im/内)と(ex/外)のちがいである。
 わかりやすく英語になおして説明すると、くim+press/心に押しつける→印象を与える〉と〈ex+press/(考えを)外に押し出す〉のちがいである。
 同じヨーロッパでも、南と北とでは、その土地に棲む人々の精神の傾向にちがいがあるということである。

 さて、道彩展の傾向はと言えば、表現派と印象派がせめぎ合っているように見える。そこがおもしろい。
 絵画というものは、期せずして、それを描いた人の心を映し出す鏡でもあるのです…。

 最後に、心より、道彩会の35周年をお祝い申しあげます。



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