限界から可能性を求めて

会員
中 田 やよひ

 水彩画の多様な表現と創造を目指して創立された道彩会が、公募展となった2回展に出品し、道彩展賞を頂いた。
 すぐ会員推挙となり、水彩画を描かずにいられなくなった。
 その頃も今も不透明の白やアクリル絵の具をよく使う。これによって油絵と同じような追求もできるが、反面水彩画の透明性を失いかねない。しかし、真に自分の描きたいものを追求しようとすると、ついつい塗り込んでしまい描いたり消したりを繰り返す。結果、全く救いがたい生気のないにぶい画面となり、水彩画の難しさと限界を感じ泥沼に入り込む。
 いったん制作に取り掛かると、あっという間に大きな筆洗い用のバケツの水は白濁し、まるで牛乳のようになる。
 以前それを台所の流し台に捨てていたら、下水管を詰まらせてしまった。業者さんに来てもらい地中から直径30 cmもあろう下水管を取り出し、詰っている物を出そうと思いっきり振ったところ、白い塊がニョロリと、まるで巨大チューブの口から絞り出される絵の具のように出てきた。瞬間、「あーもったいない。」と思った。
 絵の具を捨てるほうが多くて、一向に制作は進まず無駄ばかりしている、こんな珍事を八木保次先生にお話したところ、「世の中には無駄なことは一つもないんだよハーハーハー。」と言ってくださった。ちょっと救われた気がした。
 後日、主人がサクランボの木の下に穴を掘ってくれたので、以来、そこにせっせと白濁水を捨てている。ふと思う、「サクランボじゃなくて絵の具がなってくれたらいいのに…」と、近頃、飼って1年目の真っ黒猫が、私の筆洗いバケツの水を飲む。「ダメヨその水汚いんだから、白猫になったら困るでしょ。」そんなバカなことを言いながら、いっこうに進まない私の水絵の限界から水絵の可能性を求めて、これは無駄ではなく、追求の証。」とばかり日々絵の具水を、サクランボの木にやっている。



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