Anne
McCaffreyの世界
アン・マキャフリー(わたしの中での略称、アンマキャ^_^;失礼!)と言えば、普通、ヒロイックファンタジーの作家で、《バーンの竜騎士》という名前の通ったシリーズ物を持った人気作家です。が、あえてその作品群は取り上げず、今回は、独断と偏見で、二つのスペースオペラシリーズ、船シリーズとミュータントシリーズから、それぞれはじめの2作、連作短編集と長編というなぜか同じ構成の計4作を取り上げたいと思います。
実は、わたしとアンマキャとの出会いが、右の早川文庫SF『ペガサスに乗る』だったのです。その時は、重い本ばかり読んで滅入っている所だったので、店頭で見つけて、「お、軽そうじゃん!」とポンと買ったのがこの本。シリーズものなら、最初の2冊は買うのが癖なので、『ペガサスで翔ぶ』も一緒に購入。でも、この表紙はしっかり隠しながら読んだな。(おおやちきさん、ごめんなさい)アンマキャが、竜の戦士(程度の認識でした)シリーズなどヒロイックファンタジーの作家という知識はあったのですよ。だから、これは「ペガサスの話か??」なんてね。内容は近未来ミュータントもの、先入観とも、表紙ともまるで違うイメージの作品でした。わたしの頭には、これで、《掘り出し物》、という烙印が押されてしまいます。
雑談はこれくらいにして、
さて、以下がその作品のリストです。
1.『歌う船』(The Ship Who Sang, 1969) 創元SF文庫、640円、酒匂真理子訳
2.『旅立つ船』(The Ship Who Searched, 1992) 創元SF文庫、700円、赤尾秀子訳
3.『ペガサスに乗る』(To Ride Pegasus, 1973) 早川文庫SF、620円、幹遥子訳
4.『ペガサスで翔ぶ』(Pegasus in Flight, 1990) 早川文庫SF、660円、幹遥子訳
アイディアとして秀逸なのは、船シリーズ。なんと言っても、身体で宇宙を感じられる Shell-person という存在が素晴らしい。(酒匂真理子さんが始められた殻人と書いてシェルパーソンとルビを振る訳はどうも馴染めないので、英語で行きます!)サイボーグものなんだけれど、半端ではない、船に人間の神経系統が接続されてしまうという設定が、SF心をそそって素晴らしい。光瀬龍の未来史シリーズの短編の中にも、最後は大脳だけになって、宇宙船に接続されるサイボーグの話があるけれど、その感覚ですね。
しかし、連作短編として成功している作品は、むしろ、ミュータントシリーズの『ペガサスに乗る』だと個人的には思います。このシリ−ズもミュータントという言葉に対する定義が人とは違ったり、なかなか見るべきアイディアがあるのです。もっともこの面白さがシリーズ化されて続かないのが、アンマキャの問題点です。ミュータントシリーズでは、取り上げた最初の2冊がお奨めで、その続きのシリーズ化された九星系連盟ものでは、やはり、初巻の『銀の髪のローワン』が一番でしょう。だんだんとマンネリになります。流行作家の宿命ですかね。とは言っても、SF的に味付けされたラブロマンスというつもりで読めば、やはり標準をはるかに超えた優秀作品で、赤毛のアンシリーズの『アンの娘リラ』が面白い、というのと同様の面白さは持続しています。
ちなみに、このシリーズは、『銀の髪のローワン』(The
Rowan/1990)、『青い瞳のダミア』(Damia/1992)、『ダミアの子供たち』(Damia's
Children/1993)、『ライアン家の誇り』(Lyon's
Pride/1994)と続きます。なぜアンシリーズなのかが少し分かるでしょう?読み出したら気になって読んでしまいますけどね。
船シリーズの長編は、少なくともマンネリ打破を目指して、他の作家との共作になっています。連作短編『歌う船』の中でも、アンマキャらしくない、ひねくれた政治的かけひきを駆使する場面が見られ、その辺りをもっときちんと訳してくれていたら、ずっと面白かったろうに、と残念です。というのも、その辺りの訳文は錯綜してしまって、常人の理解の程度を超えるからです。思うに、アンマキャ=SFチックLOVEストーリーという先入観に取り付かれた訳者の目には、まったくムダで退屈な部分と映っていたのではないかと。(これ以上、書き募って、もし万が一、酒匂真理子さんやそのファンの人のお目を汚したりしたら喧嘩になりそうなので、ここらで止めときます。)第2巻目『旅立つ船』の解説を書いている、青井美香さんも「パートナー選び」をアンマキャの重要テーマとして取り上げています。確かにそういう面もあるのだけれど、強調されすぎているキライがないかな。ラヴロマンス仕立てにすることで、読者に安心感を与える、アンマキャは、そういうテクニックを駆使しているとは思うのです。この安心感は、わたしのようなひねくれ読者には、時に、マンネリとして感じられるのです。船シリーズは、そういうマンネリ打破の試みを随分していますよね。でも、アンマキャ・ファンでもある翻訳者が、ラヴロマンスにこだわるのです。
そういう意味で、ミュータントシリーズ、ペガサスもの2編は、その類の読者サーヴィスをしていないから、すっきりとした読み心地の作品に仕上がっています。表紙のイメージとは異なり、辛口です。殊に、2作目の『ペガサスで翔ぶ』はわたしの個人的お奨め作品。主人公の少女ティーラを中心にワクワクドキドキの冒険活劇の割には、読後感がさっぱりすっきり、ドライなおいしさの作品です。最近(April
4, 2000)、このシリーズで、Del Reyから"Pegasus in
Space"が出たそうです。もちろん未訳です。ちょっと読んでみたいかな。(^o^)丿
でも、訳者さんの悪口書いちゃったから、訳してくれないかな。(^_^;)..
幹遥子さんどうでしょうか?