武蔵野市内(東京・多摩)で見える航空機
千葉晃

2010年10月に羽田空港が再国際化して、航空機の出発形式が大きく変更になったようです。武蔵野市内を比較的低空で飛行するコースができました。下で記したSEKID ONE RNAV DEPARTURE(セキッド ワン アールナブ デパーチャー)北周りで出発。羽田の16Lからライトターンで一旦北区にあるHILLSポイントを通過、そのままダイレクトでMAGOH(長野県)に引っ張られるコースのようです。

毎朝7:50に、全日空のNH241便 福岡行きが武蔵野市内上空を低空で通過します。4発機なのですぐにわかります。福岡行きが武蔵野市上空を飛んでいるようです。



2011年7月16日 8時1分 500mmレフレックスでANA241便福岡行きを撮影 自宅より。B44です。


羽田空港飛行コース解析です。たぶんこの74Dが撮影したものです。

午前1時ジャスト頃にJALの041便パリ・シャルルドゴール行きが、狛江、吉祥寺、板橋上空を北に向かって通過するようです。羽田00:35発で、機首はB72です。この先、新潟にダイレクトで行って、ハバロフスク経由でCDGまで行くのでしょう。

もひとつ夜1時台にゴーっという音が聞こえます。午前1時から2時くらいは、全日空のカーゴ専用機が2便飛びます。2便とも1:05に羽田発で、NH8553(B6F)が佐賀行き、NH8551(B73)が新千歳行きです。8551のほうは、旅客型でパッセンジャーを乗せずに、ベリー(お腹のカーゴスペース)にカーゴを入れています。

https://www.ana.co.jp/cargo/ja/int/air_info/timetable/pdf/freight.pdf

中国便などは通常通り、武蔵野市の南側を飛びます。

福岡便に乗って、上空から武蔵野を見てみたいです。

 成田−香港便で東京上空を飛行するとこんな感じです。7月下旬の午後7時


 同じく成田−香港便です。冬12月の夕方です。明治神宮、御苑などが見えます。新宿の高層ビルの影がはっきりとわかり、ビルの凹凸がわかります。

※月刊エアライン 2011年8月号64p 木村(2011)都心を抜ける航空機を追え!、同9月号122p 木村(2011)KG-ACARSで航空機の現在位置、情報を入手しよう、 が詳しいです。

↓過去の記載です。

−2008年9月25日 横田基地空域一部解放と
SEKID ONE RNAV DEPARTURE−

東京都内は日本のなかでも飛行機、殊に旅客機を目にしにくい特異な場所です。三鷹・武蔵野上空は、大宮から座間にむけてVFRで飛ぶ自衛隊機が南方面に飛ぶのと、調布飛行場に着陸するセスナなどが田無や井の頭公園を目標としている場合はあります。しかしながら、大型の旅客機を見たいとすると、羽田空港、横田基地などの臨空地域以外に行かないと見れません(横田へは米軍輸送の為に米国籍レジのチャーター便の離発着はあります)。

特に東京の多摩地区での航空路は、今年の9月24日までは上空かなりの高度で、真西向けの1本だけでした。この航空路はソウル、北京便等で利用され、長野県のチノというポイント、そして隠岐の島付近のサプラへ向けて飛行します。以前、ソウル便に乗ったときには、ほぼJR中央線上空を飛んでいました。このため、多摩地区で上空を飛ぶ旅客機は小さくしか見えなく、よほど飛行機に興味がある人以外は、その存在や航空路に気づかなかったと思います。

 ただし、この9月25日木曜日から大変革がありました。以前から議論に上がっていた横田基地の空域解放(一部)があったのです(何故木曜日かというと、旅客機のエンルート情報が更新されるのが、世界的に木曜日と決められているからのようです)。

まず武蔵野市内で上空を飛行する航空機のパターンを洗ってみました。このくらいしかないと思います。2と9が追加されました。
 1:高々度(機体小さくしか見えない)、成田発韓国・北京便(上空、真西向け)
 2:中高度(機体判別可能)、羽田発福岡行き(南側を機首上げでクライム)
 3:低高度(機体判別可能)、大宮から座間・厚木への自衛隊機(南向けで三鷹駅上空通過)
 4:低高度(機体判別可能)、調布飛行場に着陸するセスナ等の軽飛行機(田無から井の頭公園を経て調布に着陸)
 5:中高度(機体判別可能)、横田基地に着陸するため空域に入る大型旅客機(DC-10など米軍のチャーターが多い)
 6:高々度(機体小さくしか見えない)、羽田及び成田から西向けのクライムする機体(成田香港便など 2よりずっと南側)
 7:低高度(機体判別可能)、立川基地から飛び立つ、東京消防のヘリコプター(東西向け)
 8:高々度(機体小さくしか見えない)、北側で非常に高々度で西向け(おそらく熊谷上空を飛行する国内、国際便)
 9:中高度(機体小さくしか見えない)、北側で中高度で東向け(板橋上空を飛行する北陸便)


▲写真1 武蔵野市の自宅ベランダより 300mm望遠で747を撮影(2008年11月23日)
(写真を拡大してみたら、垂直尾翼がトリトンカラーだったので全日空のものだと判明)

 横田基地を含め、東京都内の航空管制は米軍の管理下にあります。関東地方のかなり高い高度まで横田基地の管制に従わないといけません。ですから、羽田空港から飛び立つ飛行機は、東京湾内で急上昇して、その空域を飛び越えなくてはなりません。本来、航空機は目的地に行くまで徐々にクライムしていけばよいのですが、近いところに「ハードル」があるため、時間がかかったり、燃料代がかかるということで、米軍などと調整が進められていたようです。具体的には多摩地区は12000ft以下は飛行できなかったのが、8000ftまで制限が下げられたのです。国土交通省さんの報道資料によれば、CO2の削減のため、というのが第一義的な理由となっています。また、航空会社さんにとっては時間節約の意味が多いのではないでしょうか。

 さて、その前日の晩、ネットのニュースで記事を確認して、「えっ?!空域解放、明日からなんだ!」と思いました。翌日空をみたら、なんと武蔵野市の南側のかなり低空のところを、777や747が飛んで行くではないですか。それも、赤社(JLさん)のか、青社(NHさん)のかはっきり識別できるのです。天気によっては、ジェットの音も聞こえます。都内でジェット機の機影や、ジェットブラストの音を聞くチャンスはほとんどなかったのに(真冬で西向きの高高度便はたま〜に聞こえます)。


▲写真2  武蔵野市の自宅ベランダより 300mm望遠で777-300を撮影(2008年11月23日)
(写真を拡大してみたら、R1ドア付近にJALと書かれていました。)

色々調べてみたら、羽田空港のSID(出発形式)が変更になり、SEKID 1 RNAV DEPARTURE(セキド ワン アールナブ デパーチャー)が追加されたようです。RNAVとは高精度航法の意味で、従来のようにVOR(ブイオーアール)やTACAN(タカン)そしてVORTAC(ボルタック)の上をわざわざ飛ばなくてもよいような航法のことのようです。SEKIDとは多摩川にかかる関戸橋のことです。このSEKIDポイントまで多摩川上空をクライムしていく機影を、武蔵野市からは望むことができるようになりました。羽田から出発した福岡、広島、山陰便などが利用する空路です。中央線電車に乗って南側の窓を見ると、機首上げの状態のまま、西に向かう飛行機が見えます。武蔵野市からみて南西の方角になると、左にバンクして、曲がっていきます。このバンクしているところが関戸橋になるのでしょう。バンク後は高尾にあるTAKAOポイントを目標にしているようです。

加えて成田から韓国、北京方面の上空の飛行機は、若干北側を飛行するようになりました。また今回の空域解放で、小松などに飛ぶ航路は、東京都の北側、板橋区などの上空をとるコースも設定されたようです。


▲写真3 武蔵野市の自宅ベランダより成田から飛ぶ韓国・中国方面便 747。2006年1月26日撮影。

この出来事は、私のような航空ファンにとっては興味深いものですが、大田区などの住民からは国土交通省へこの航空機騒音についての問い合わせが多数あった模様です。これは12月中旬の日曜日に報道されました。私はよく目黒区に用事で出かけます。確かに信号待ちなどをしていると轟音が聞こえてきます。

長い間、羽田空港に発着する航空機は、モノレール以西は飛行禁止になっていました。何年か前に、タイのチャーター便が、東京タワーが見えるほど内陸まで入っていって(たぶん16Lのボルデメ チャーリー アプローチ)ニュースになったことがあるくらいです。ただし、この間に早朝のジェット機だけ、ハミングバード デパーチャーという特殊なSIDが許されてきた経緯はあります。いずれにせよ、都内の住民は航空機の音には慣れていない、静かな環境に守られてきたということになるでしょう。

国土交通省の飛行コース公開ページにて、航跡図を確認すると、このSEKID 1 RNAV DEPARTUREで飛び立つ旅客機は、六郷橋あたりで1万フィート(3000m)に達しているようです。

おそらく航空局のかたも、騒音問題が出るのではないか、ということは想定していたと思います。が、環境問題が叫ばれる時勢だけに、それを追い風として利便性を追うためにすすめた政策ではないかと思います。

以上、武蔵野から比較的低空の旅客機が見えるようになった背景とその影響などについて綴ってみました。


参考:写真上 武蔵野市の自宅ベランダより夕方に南向けで飛ぶC-1輸送機(低空のVFRです)
写真下、同じく八戸基地から厚木基地に戻る途中ではないかと思われるYS-11(海自のキャラバンかな?)
これら低空の自衛隊機は、平日の夕方7時頃武蔵野上空をよく飛びます。撮影:2004年6月28日

2009年1月1日
2011年8月14日 追記
 
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