夢枕 獏 代表作(私撰)
6. キマイラ如来編
"大鳳はやはりここの身内か。おれは大鳳のあれを見た"−円空山を訪れた埴輪道潅は、半月程前、渋谷の街でキマイラ化し、ヤクザを叩のめした後、建築中のビルの壁面をよじ登って姿を消した大鳳の情報を、雲斎と九十九に伝えた。
新宿の高層ビルのホテルの一室で大鳳からの連絡を待ちわびる久鬼麗一のもとにも、また宇奈月典善に大鳳の捕獲を依頼している久鬼玄造のもとにもその情報はもたらされ、大鳳の出生の秘密を求めて北海道に渡っていた由魅の父親・亜室健之と謎の外人ボックもからんで、大鳳をめぐる情勢は一気に風雲急を告げることになった。
その大鳳は、久鬼を訪れるべく、ビルとビルの峡間の暗い路地を歩いていた。
面出帽で顔を隠し、美しい黒い瞳にたまらない怯えを宿して−