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アクリル曲げ加工用ヒーターの自作
Wrote:2010/07/31〜2010/08/09  K2000
くれぐれも自己責任でお願い致します。
何らかの問題が発生しても当方は一切の責任を負わないものと致します。

アクリル加工との戦い

 アクリル板を使ったオリジナルケース作りは昔からやっていますが、やり方が、6面分を切り出して、接着剤やネジを使って箱形に組み立てる方法でした。

 

 

 この方法のメリットは、上のようなスイッチやギミックの加工がしやすい点です。 デメリットはやはり耐久性です。スペーサーなどの補強を行っているとはいえ、接着剤で6面を組み合わせた箱ですから当然といえば当然です。

 もっとも、このくらい小さいスイッチボックスならば耐久性の心配は不要なんですが、次のような大きめのケースになってくると話は変わってきます。(自作デジタルタコメータ

 

 

 そこで考えるのが、アクリル板を切断せずに、曲げて筐体を作る方法です。
 (将来的には3Dプリンタが実用化されて一般家庭でも使える時代がくるかもしれませんが)
 しかし、それを実現する為の専用工具「アクリル曲げヒーター」は、実売で6〜7千円という値段で売られています。 私の場合、使用頻度は年に1回あれば良い方なので、ちょっと割に合わない出費です。

 幸い構造はシンプルで自作してる人も多く、部品点数も多くはないので自作します。
 



まずはパーツの調達

 必要なパーツは次の通り。
 大型のホームセンターならば、全てサクッと揃ってしまう材料ばかりです。

 ・土台となる板(450x60x12mm、\210)
 ・金属製のパイプ(私は直径16mm、長さ300mmの熱伝導性の高いアルミパイプを使用、\230)
 ・パイプ用の横受×2コ(内径16mm、パイプの固定が目的なので片空き、\190x2)
 ・ニクロム線(ダイソーの0.27mm、\105)
 ・シリコンガラスチューブ(ニクロムとパイプの絶縁目的、内径3mmのものを使用、\315)
 ・あとは必要に応じて木ネジ、電線等...

 もともと持っていたパーツ類を料金に含めても、\1,500程度でしょう。
 土台の板などは端材(\0)でも作れますし、\1,000以下に抑えることもできそうです。

 

 ちなみに、シリコンガラスチューブだけは置いている店が少ないようです。 近所の大型ホームセンター(カインズホーム、スーパービバホーム)では店員に尋ねるも無いとの回答。 なかば店頭での入手を諦めていたところ、ジョイフル本田の瑞穂店でようやく発見。 ここは他ではあまり見ない製品も扱っているので助かります。

 ニクロム線は100W〜600Wの品が、安いところでは80円台からホームセンターで売られていますが、今回使う材料によっては計算通りにはいかないでしょうし、温度調整が手探りになることは必至。 ということで、ダイソーで売られている太さ0.27mm×長さ4mの105円のニクロム線を選択。 なんでダイソーでニクロム線が売られているのかはわかりませんが助かります。

 あと一つ、抜けているものがあります。 電源。
 曲げヒーターを自作される方はAC100Vの直取りをしますが、幼少時代にコンセントで感電を経験してからというもの、AC100Vの直利用は極端に慎重になっているので高出力ACアダプタを使います。 丁度良いものが手元にありました。

 

 IBMのノートパソコン「ThinkPad R30」で使用していたもので、16V/4.5Aと高出力です。
 基本的にノートパソコンはメーカーを問わず高出力のアダプタを利用していることが多いです。
 本来の用途外での使用はあまり薦められませんが、貧乏性なので、使える物があれば使います。
 



製作開始

 まずはニクロム線。
 後でニクロムの長さを調整するため渦状に丸めます。 初めて電気を通した時に、いきなり高温で発熱しないよう多めに巻いておき、後から短くしていくと良いです。

 

 尚、このような渦を作らずに直線で張ると抵抗が低すぎてニクロム線が一瞬で真っ赤に発熱してしまいます。 これは絶縁材として大役を果たすシリコンガラスチューブの耐熱温度(180℃)を遥かに超えた状態なので厳禁です。

 次に、シリコンガラスチューブをアルミパイプより長めに切断し(330mm)、巻いたニクロム線を軽く引っ張ってから中に通します。

 

 次はアルミパイプを固定する横受を加工します。
 金具が片空きなので、そのままではニクロム線を通したシリコンガラスチューブを通せません。
 なので金具にも3mmの穴を空けて、通せるようにします。

 あとはパイプと横受にシリコンガラスチューブを通し、土台に固定するだけです。

 

 

 ニクロム線は、一度木ネジに巻き付けた方が良いかもしれません。

 あとは、期待の温度が得られるよう、アルミパイプに通したニクロム線の長さを調整して完成です。
 (温度が低すぎると曲がりにくく(最悪割れ)、高すぎると白濁し気泡ができたりします)

 

 室温にもよりますが、予熱時間は約3分といったところです。
 1mm厚程度のアクリル板ならば、電源投入から1分程度で曲げられる温度になります。

 ということで、早速アクリル板を曲げまくってみました。

 

 面白いようにクネクネ曲がります。 これは楽しい(笑)
 ヒーターに当てるとすぐにクネッとなります。
 ちょっと温度高めかなと思いましたが、高い分には調整が利くので問題なしです。

 次は少し厚手のアクリル板(アクリサンデーEX / 3mm厚)の切れ端で試してみます。
 私のケース作りでは最も使用頻度が高い板で、曲げ加工の推奨温度は150℃のようです。

 

 割れや白濁もありません。 実に綺麗に曲がりました。
 ただ、やはり1mm厚のアクリル板と違い3mm厚になると、熱が浸透するのに時間がかかるのでしょう。 1分ほどヒーターに当てたままにしておくと、ようやく曲げられるようになります。
 



早速実用してみる

 早速ヒーターを作成した目的を果たします。

 2年前からずーっと気になっていた 自作デジタルタコメータ の筐体。
 これをアクリル板の曲げ加工で作り直します。

 

 まずは設計から。 筐体から土台、支えまで、1枚のアクリル板(アクリサンデーEXガラス透明色3mm厚)で作りたいと思います。

 

 アクリル板に油性ペンで直接描いてますが、油性ペンで書いたものはエタノールで簡単に消せるので気にする必要はなし。

 で、次が設計どおりに切り出してみた状態。
 1カ所スベってキズを付けてしまったー。 レーザー加工機が欲しい(T_T)

 

 初めての曲げ工作――は、やはりうまくいかないものです。
 ケースの下部にあたる部分が期待より大きすぎて箱形にならないトラブルが発生。
 ですがこのアクリル板は1枚1200円とバカにならないもの。 使うしかありません。

 結局、1枚で作り上げるのは諦めてカットしました。
 ダサイですけど。

 

 どうでしょう。 アクリル板を組み合わせた箱より、はるかに見栄えが良いですね。 建築資材としても使われるガラスよりも耐久性の高いアクリル板なので剛性も申し分ありません。

 

 ということで自作デジタルタコメータの新しい筐体が完成しました。

 

 ちなみに低反射化していないために視認性が悪すぎたので、表示面だけマット加工しました。

 

 

 運転の視界の邪魔にはなっていないけど、もうちょっと土台が低くても良かったかもしれない。 それにこの程度の筐体に3mm厚は過剰な気がするので次は2mm厚で作ってみたいかも。
 



曲げヒーターを仕上げる (2010/08/09追記)

 冒頭で、曲げヒーターの使用頻度について「年に1回あれば良い方」と書きましたが、完成してみると色々と使い道が出てきまして、このページの公開からわずか10日程度で既にいくつかのケースを組み立てました。 こう使用頻度が高いと最初の作りでは使い勝手が悪いので、配線周りを少しだけ真面目に作り直すことに。

 要するに、ブラブラしてた電源コネクタを固定します。
 で、完成したのがコチラ。(↓)

 

 上は、筐体となるアクリル部材を裏側から撮った写真。 自作デジタルタコメーターのケース作りで余ったアクリル板(アクリサンデーEXガラス透明色3mm厚)の切れ端をヒーターで曲げて、軽くマット加工をしてから土台に木ネジで固定しています。 筐体の上に空いている2コの穴はドライバー用の穴。

 ちなみに、使用しているケーブルが極端に細く見えると思いますが、これは耐熱耐圧に優れた単線の架橋ポリエチレン電線なので問題ありません。

 

 アクリル板の切れ端の再利用なので、筐体とスイッチパネルは別々に作成しています。
 両者は、頭の1本の化粧ネジで固定されています。

 それと、この数日間、ヒーターを使っていてずっと気になっていたのが電源の状態。 ニクロム線が赤く光るほど発熱してるならまだしも、そこまでは加熱しないし、電源が入っているのかスグにはわからなかったので、直感的に判るようパイロットランプを付けました。 部品取りで丁度余っていた超高輝度青LEDを使用。 DC16V電源なので1KΩの抵抗を噛ませて弱めに発光。 軽く施したマット加工でアクリル全体がほのかに光るのが良い感じです。

 次にスイッチ。 最初に使っていたのはプッシュ式でしたが、直感的にON状態なのかOFF状態なのか判らなかったのでトグルスイッチに変えました。 ACメスコネクタはアクリルへの固定方法に困るので、グルーというホットボンドで裏側から接着固定しています。

 ところで、グルーガンを使ったグルー接着の難点は、仕上がりの見栄えの悪さ。
 筐体をマット加工した目的の一つは、この汚い状態を隠すためでもあります。
 グルーガンは、ここでも利用。(↓)

 

 ニクロム線の「遠い方」の配線は、土台の裏側を通しました。
 彫刻刀で土台に溝を掘り、ケーブルを通します。
 そして、土台とケーブルを固定するため、少量ずつグルーを出しながら接着します。

 そして、完成した全体像。

 

 スッキリしました。
 



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