フッ素の慢性毒性


 フッ素の慢性中毒としてよく知られているのは歯牙フッ素症(斑状歯)と骨フッ素症である。専門家ならば誰でも知っているので詳述は避けるが、私が気になるのはフッ素の慢性中毒の実体である。エナメル質に障害が及ぶのはエナメル質形成の移行期が最大であると言われているが、小学校低学年からフッ素洗口を始めると第二大臼歯、第三大臼歯が飲み込みや粘膜からの吸収によって影響を受ける可能性を考えなければならない。斑状歯の分類は厚生省分類などあるが、肉眼的症状は簡単に分ければ・軽度では白斑、・中度の白濁や着色、・重度の実質欠損と着色。とされる。

 虫歯予防と両刃の刃で現れる斑状歯は、脆く咬耗などを起こしやすく顕微鏡下における組織学的観察でも「エナメル質の密度が著しく減少し初期のう蝕病変と同様の変化がみられた」(Applebaum)。更に、実質欠損を伴うような重度の斑状歯でなくても、石灰化障害の病変はエナメル質だけでなく象牙質にまでおよぶと言われている。

骨フッ素症はよりフッ素濃度の高い水を長期にわたって飲んだ場合に生じるとされている。「JollyによるインドのPanjap地方の骨フッ素症の発生頻度は、飲料水中のフッ素含有量 2.4ppmの地域では全住民の22%、3.0ppm前後では20〜42%に、5ppmでは60%、9.4ppmでは81%で、フッ素濃度の増加に伴い、発生頻度も骨変化の程度の高くなることが示されている。」(骨フッ素症の治療経験、 吉川靖三ら 整形外科Vol.27,no7,1997 p675-681) 飲料水のフッ素濃度の高い地区で生じた人の骨フッ素症は骨周囲への異常骨添加だけでなく骨周囲組織にまでフッ素の影響は及び関節の機能障害(腰、腕など関節が曲がったままになる)を起こす。

もう少し摂取量が増えると肝臓腎臓などへの影響が指摘されている。

 又高濃度のフッ素を与えた母親ラットから生まれた仔ラットは脊椎棘突起等に異常形態(奇形)を起こす。

これらの所見から考えるに、生体に対するフッ素の目に見える害の実体は、まず第一に“歯牙、骨などの硬組織を標的臓器とした形成障害である。”といえる。軽度斑状歯を美観の問題と言って軽視する学者もいるが形成障害の初期症状であるという認識が医学的には重要であろう。 


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