スペイ川の東30キロ。デヴェロン川流域の村ハントリーからさらに東へ14キロ。
麦畑が広がるフォーグの小さな清流をまたいで、古色蒼然として石造りの蒸溜所が立っています。
小川の名前は「グレンドロナック」。古ゲール語で「黒いちご」を意味するこの名にちなんで、蒸溜所は「ザ・グレンドロナック」と呼ばれてきました。
蒸溜所の周囲は、ヒースに覆われた丘陵か、牧場か、さもなければ麦畑。花崗岩に磨かれた水が丘のあちらこちらに湧き出して、ピート層の大地を潤しています。
ザ・グレンドロナック蒸溜所は、ボインズミル農場主J・アラディーズが館の隣りにつくったもので、1826年にライセンスを取得しました。
以来、昔のままの製法。ウイスキーの原料である大麦を狙って来るネズミ。
それを狙って蒸溜所に棲みつくウイスキー・キャットと呼ばれる猫がいます。
フロアモルティングによる麦芽づくり、木桶での発酵、石灰による直火蒸留。
ここザ・グレンドロナック蒸留所では、そのすべてを昔のままに熟練の職人たちが行っています。
使用大麦の一部は地元産。ピートの香りがする清水を吸って大麦は目覚め、床に広げられます。
モルトマンが時折シャベルでひっくり返し、熊手で鍬き返し、新鮮な空気を混ぜています。
発芽した大麦はキルンに運ばれ、ピートで燻されます。仕込みの水も、浸麦の水と同じ蒸溜所敷地内の井戸から汲み上げます。
これが、グレンロナック蒸留所です。