もう一つの仏教学・禅学
新大乗ー現代の仏教を考える会
仏教学・禅学の批判
指導は人、進度に応じて=十二巻「正法眼蔵」
- 指導は進度に応じて、師が鞭を打つ
同じことを説いても、受けての解釈はまちまち。
御者は鞭を打つ。
それが、鞭とも見えないことがある。しかし、鞭を打つ。
軽く打っても、鞭と知り、最後まで走る馬がいる。
ひどく打たないと走りださない馬もいる。
指導は人、進度に応じて
「正法眼蔵」
- 阿含の四馬
「雜阿含經曰、佛告比丘、有四種馬、一者見鞭影、即便驚悚隨御者意。二者觸毛、便驚悚隨御者意。三者觸肉、然後乃驚。四者徹骨、然後方覺。初馬如聞他聚落無常、即能生厭。次馬如聞己聚落無常、即能生厭。三馬如聞己親無常、即能生厭。四馬猶如己身病苦、方能生厭
(雜阿含經に曰く、佛、比丘に告げたまはく、四種の馬有り、一つには鞭影を見るに、即便ち驚悚して御者の意に隨ふ。二つには毛に觸るれば、便ち驚悚して御者の意に隨ふ。三つには肉に觸れて、然して後乃ち驚く。四つには骨に徹つて、然して後方に覺す。初めの馬は、他の聚落の無常を聞きて、即ち能く厭を生ずるが如し。次の馬は、己が聚落の無常を聞きて、即ち能く厭を生ずるが如し。三の馬は、己が親の無常を聞きて、即ち能く厭を生ずるが如し。四の馬は、猶ほ己が身の病苦によりて、方に能く厭を生ずるが如し)。
これ阿含の四馬なり。佛法を參學するとき、かならず學するところなり。眞善知識として人中天上に出現し、ほとけのつかひとして祖師なるは、かならずこれを參學しきたりて、學者のために傳授するなり。しらざるは人天の善知識にあらず。學者もし厚殖善根の衆生にして、佛道ちかきものは、かならずこれをきくことをうるなり。佛道とほきものは、きかず、しらず。
しかあればすなはち、師匠いそぎとかんことをおもふべし、弟子いそぎきかんとこひねがふべし。
いま生厭といふは、
佛以一音演説法(佛、一音を以て法を演説したまふに)、
衆生隨類各得解(衆生、類に隨つて各解を得)。
或有恐怖或歡喜(或いは恐怖する有り、或いは歡喜し)、
或生厭離或斷疑(或いは厭離を生じ、或いは疑ひを斷ず)。
なり。」(1)
- 涅槃経の四馬
「大經曰、佛言、復次善男子、如調馬者、凡有四種。一者觸毛、二者觸皮、三者觸肉、四者觸骨。隨其所觸、稱御者意。如來亦爾、以四種法、調伏衆生。一爲説生、便受佛語。如觸其毛隨御者意。二説生老、便受佛語。如觸毛皮、隨御者意。三者説生及以老病、便受佛語。如觸毛皮肉隨御者意。四者説生及老病死、便受佛語。如觸毛皮肉骨、隨御者意。
(大經に曰く、佛言はく、復た次に善男子、調馬者の如き、凡さ四種有り。一つには觸毛、二つには觸皮、三つには觸肉、四つには觸骨なり。其の觸るる所に隨つて、御者の意に稱ふ。如來も亦た爾なり、四種の法を以て、衆生を調伏したまふ。一つには爲に生を説きたまふに、便ち佛語を受く。其の毛に觸るれば御者の意に隨ふが如し。二つには生、老を説きたまふに、便ち佛語を受く。毛、皮に觸るれば御者の意に隨ふが如し。三つには生及以び老、病を説きたまふに便ち佛語を受く。毛、皮、肉に觸るれば御者の意に隨ふが如し。四つには生及び老、病、死を説きたまふに、便ち佛語を受く。毛、皮、肉、骨に觸るれば御者の意に隨ふが如し)。
善男子、御者調馬、無有決定。如來世尊、調伏衆生、必定不虚。是故號佛調御丈夫(善男子、御者の馬を調ふること、決定有ること無し。如來世尊、衆生を調伏したまふこと、必定して虚しからず。是の故に佛を調御丈夫と號く)。
これを涅槃經の四馬となづく。學者ならはざるなし、諸佛ときたまはざるおはしまさず。ほとけにしたがひたてまつりてこれをきく、ほとけをみたてまつり、供養したてまつるごとには、かならず聽聞し、佛法を傳授するごとには、衆生のためにこれをとくこと、歴劫におこたらず。つひに佛果にいたりて、はじめ初發心のときのごとく、菩薩聲聞、人天大會のためにこれをとく。このゆゑに、佛法僧寶種不斷なり。
かくのごとくなるがゆゑに、諸佛の所説と菩薩の所説と、はるかにことなり。しるべし、調馬師の法におほよそ四種あり。いはゆる觸毛、觸皮、觸肉、觸骨なり。これなにものを觸毛せしむるとみえざれども、傳法の大士おもはくは、鞭なるべしと解す。しかあれども、かならずしも調馬の法に鞭をもちゐるもあり、鞭をもちゐざるもあり。調馬かならず鞭のみにはかぎるべからず。たてるたけ八尺なる、これを龍馬とす。このむまととのふること、人間にすくなし。また千里馬といふむまあり、一日のうちに千里をゆく。このむま五百里をゆくあひだ、血汗をながす、五百里すぎぬれば、清涼にしてはやし、このむまにのる人すくなし。ととのふる法、しれるものすくなし。このむま、神丹國にはなし、外國にあり。このむま、おのおのしきりに鞭を加すとみえず。
しかあれども、古徳いはく、調馬かならず鞭を加す。鞭にあらざればむまととのほらず。これ調馬の法なり。いま觸毛皮肉骨の四法あり、毛をのぞきて皮に觸することあるべからず。毛、皮をのぞきて肉、骨に觸すべからず。かるがゆゑにしりぬ、これ鞭を加すべきなり。いまここにとかざるは文の不足なり。
諸經かくのごときのところおほし、如來世尊調御丈夫またしかあり。四種の法をもて、一切衆生を調伏して、必定不虚なり。いはゆる生を爲説するにすなはち佛語をうくるあり、生、老を爲説するに佛語をうくるあり、生、老、病を爲説するに佛語をうくるあり、生、老、病、死を爲説するに佛語をうくるあり。のちの三をきくもの、いまだはじめの一をはなれず。世間の調馬の、觸毛をはなれて觸皮肉骨あらざるがごとし。生老病死を爲説すといふは、如來世尊の生老病死を爲説しまします、衆生をして生老病死をはなれしめんがためにあらず。生老病死すなはち道ととかず、生老病死すなはち道なりと解せしめんがためにとくにあらず。この生老病死を爲説するによりて、一切衆生をして阿耨多羅三藐三菩提の法をえしめんがためなり。これ如來世尊、調伏衆生、必定不虚、是故號佛調御丈夫なり。」(2)
- (坐禅をしてある種の安楽、おちつきどころを得て、これが悟りだと勘違いするのを師は戒める。正師に聞法していれば、その誤りはない。)
「第十四祖龍樹祖師言、佛弟子中有一比丘、得第四禪、生増上慢、謂得四果。初得初禪、謂得須陀@(おん)。得第二禪時、謂是斯陀含果、得第三禪時、謂是阿那含果、得第四禪時、謂是阿羅漢。恃是自高、不復求進。命欲盡時、見有四禪中陰相來、便生邪見、謂無涅槃、佛爲欺我。惡邪見故、失四禪中陰、便見阿毘泥梨中陰相、命終即生阿毘泥梨中(第十四祖龍樹祖師言く、佛弟子の中に一の比丘有りき、第四禪を得て、増上慢を生じ、四果を得たりと謂へり。初め初禪を得ては、須陀@(おん)を得たりと謂へり。第二禪を得し時、是れを斯陀含果と謂ひ、第三禪を得し時、是れを阿那含果と謂ひ、第四禪を得し時、是れを阿羅漢と謂へり。是れを恃んで自ら高ぶり、復た進まんことを求めず。命盡きなんとする時、四禪の中陰の相有りて來るを見て、便ち邪見を生じ、涅槃無し、佛、爲に我を欺くと謂へり。惡邪見の故に、四禪の中陰を失ひ、便ち阿毘泥梨の中陰の相を見、命終して即ち阿毘泥梨中に生ぜり)。
諸比丘問佛、阿蘭若比丘、命終生何處(諸の比丘、佛に問ひたてまつらく、阿蘭若比丘、命終して何れの處にか生ぜし)。
佛言、是人生阿毘泥梨中(是の人は阿毘泥梨中に生ぜり)。
諸比丘大驚、坐禪持戒便至爾耶(諸の比丘大きに驚き、坐禪持戒して便ち爾るに至るやといふ)。
佛如前答言、彼皆因増上慢。得四禪時、謂得四果。臨命終時、見四禪中陰相、便生邪見、謂無涅槃、我是羅漢、今還復生、佛爲虚誑。是時即見阿毘泥梨中陰相、命終即生阿毘泥梨中(佛、前の如く答へて言はく、彼は皆な増上慢に因る。四禪を得し時、四果を得たりと謂へり。臨命終の時、四禪の中陰の相を見て、便ち邪見を生じて謂へらく、涅槃無し、我れは是れ羅漢なり、今還つて復た生ず、佛は虚誑せりと。是の時即ち阿毘泥梨の中陰の相を見、命終して即ち阿毘泥梨の中に生ぜり)。
是時佛説偈言(是の時に佛、偈を説いて言はく)、
多聞、持戒、禪(多聞、持戒、禪も)、
未得漏盡法(未だ漏盡の法を得ず)。
雖有此功徳(此の功徳有りと雖も)、
此事難可信(此の事信ずべきこと難し)。
墮獄由謗佛(墮獄は謗佛に由る)、
非關第四禪(第四禪は關るに非ず)。
この比丘を稱じて四禪比丘といふ、または無聞比丘と稱ず。四禪をえたるを四果と僻計せることをいましめ、また謗佛の邪見をいましむ。人天大會みなしれり。如來在世より今日にいたるまで、西天東地ともに是にあらざるを是と執せるをいましむとして、四禪をえて四果とおもふがごとしとあざける。
この比丘の不是、しばらく略して擧するに三種あり。第一には、みづから四禪と四果とを分別するにおよばざる無聞の身ながら、いたづらに師をはなれて、むなしく阿蘭若に獨處す。さいはひにこれ如來在世なり、つねに佛所に詣して、常恆に見佛聞法せば、かくのごとくのあやまりあるべからず。しかあるに、阿蘭若に獨處して佛所に詣せず、つねに見佛聞法せざるによりてかくのごとし。たとひ佛所に詣せずといふとも、諸大阿羅漢の處にいたりて、教訓を請ずべし。いたづらに獨處する、増上慢のあやまりなり。第二には、初禪をえて初果とおもひ、二禪をえて第二果とおもひ、三禪をえて第三果とおもひ、四禪をえて第四果とおもふ、第二のあやまりなり。初二三四禪の相と、初二三四果の相と、比類に及ばず。たとふることあらんや。これ無聞のとがによれり。師につかへず、くらきによれるとがなり。」(3)
(注)
- (1)「四馬」、「道元禅師全集」第2巻、春秋社、1993年、414頁。
- (2)同上、415頁。
- (3)「四禅比丘」、「道元禅師全集」第2巻、春秋社、1993年、419頁。
@=さんずいに亘(おん)。
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