もう一つの仏教学・禅学
新大乗ー現代の仏教を考える会
仏教学・禅学の批判
信だけではいけない=十二巻「正法眼蔵」
(A)信だけではいけない
「正法眼蔵」
- 「おほよそ壯士の一彈指のあひだに、六十五の刹那ありて五蘊生滅すれども、凡夫かつて不覺不知なり。怛刹那の量よりは、凡夫もこれをしれり。一日一夜をふるあひだに、六十四億九万九千九百八十の刹那ありて、五蘊ともに生滅す。しかあれども、凡夫かつて覺知せず。覺知せざるがゆゑに菩提心をおこさず。佛法をしらず、佛法を信ぜざるものは、刹那生滅の道理を信ぜざるなり。もし如來の正法眼藏涅槃妙心をあきらむるがごときは、かならずこの刹那生滅の道理を信ずるなり。いまわれら如來の説教にあふたてまつりて、曉了するににたれども、わづかに怛刹那よりこれをしり、その道理しかあるべしと信受するのみなり。世尊所説の一切の法、あきらめずしらざることも、刹那量をしらざるがごとし。學者みだりに貢高することなかれ。極少をしらざるのみにあらず、極大をもまたしらざるなり。もし如來の道力によるときは、衆生また三千界をみる。おほよそ本有より中有にいたり、中有より當本有にいたる、みな一刹那一刹那にうつりゆくなり。かくのごとくして、わがこころにあらず、業にひかれて流轉生死すること、一刹那もとどまらざるなり。かくのごとく流轉生死する身心をもて、たちまちに自未得度先度他の菩提心をおこすべきなり。たとひ發菩提心のみちに身心ををしむとも、生老病死して、つひに我有なるべからず。」(1)
- 「龍樹祖師云、如外道人、破世間因果、則無今世後世。破出世因果、則無三寶、四諦、四沙門果
(龍樹祖師云く、外道の人の如く、世間の因果を破せば、則ち今世後世無けん。出世の因果を破せば、則ち三寶、四諦、四沙門果無けん)。
あきらかにしるべし、世間出世の因果を破するは外道なるべし。今世なしといふは、かたちはこのところにあれども、性はひさしくさとりに歸せり、性すなはち心なり、心は身とひとしからざるゆゑに。かくのごとく解する、すなはち外道なり。あるいはいはく、人死するとき、かならず性海に歸す、佛法を修習せざれども、自然に覺海に歸すれば、さらに生死の輪轉なし。このゆゑに後世なしといふ。これ斷見の外道なり。かたちたとひ比丘にあひにたりとも、かくのごとくの邪解あらんともがら、さらに佛弟子にあらず。まさしくこれ外道なり。おほよそ因果を撥無するより、今世後世なしとはあやまるなり。因果を撥無することは、眞の知識に參學せざるによりてなり。眞知識に久參するがごときは、撥無因果等の邪解あるべからず。龍樹祖師の慈誨、深く信仰したてまつり、頂戴したてまつるべし。」(2)
- 「おほよそこの因縁に、頌古、拈古のともがら三十餘人あり。一人としても、不落因果是れ撥無因果なりと疑ふものなし。あはれむべし。このともがら、因果をあきらめず、いたづらに紛紜のなかに一生をむなしくせり。佛法參學には、第一因果をあきらむるなり。因果を撥無するがごときは、おそらくは猛利の邪見おこして、斷善根とならんことを。
おほよそ因果の道理、歴然としてわたくしなし。造惡のものは墮し、修善のものはのぼる、毫釐もたがはざるなり。もし因果亡じ、むなしからんがごときは、諸佛の出世あるべからず、祖師の西來あるべからず、おほよそ衆生の見佛聞法あるべからざるなり。因果の道理は、孔子、老子等のあきらむるところにあらず。ただ佛佛祖祖、あきらめつたへましますところなり。澆季の學者、薄福にして正師にあはず、正法をきかず、このゆゑに因果をあきらめざるなり。撥無因果すれば、このとがによりて、@@(もうもう)蕩蕩として殃禍をうくるなり。撥無因果のほかに餘惡いまだつくらずといふとも、まづこの見毒はなはだしきなり。
しかあればすなはち、參學のともがら、菩提心をさきとして、佛祖の洪恩を報ずべくは、すみやかに諸因諸果をあきらむべし。」(3)
- (「信」は108のうち、ごく一部にすぎない。信以外に多くある)
「これすなはち一百八法明門なり。一切の一生所繋の菩薩、都史多天より閻浮提に下生せんとするとき、かならずこの一百八法明門を、都史多天の衆のために敷揚して、諸天を化するは、諸佛の常法なり。
護明菩薩とは、釋迦牟尼佛、一生補處として第四天にましますときの名なり。李附馬、天聖廣燈録を撰するに、この一百八法明門の名字をのせたり。參學のともがら、あきらめしれるはすくなく、しらざるは稻麻竹葦のごとし。いま初心晩學のともがらのためにこれを撰す。師子の座にのぼり、人天の師となれらんともがら、審細參學すべし。この都史多天に一生所繋として住せざれば、さらに諸佛にあらざるなり。行者みだりに我慢することなかれ、一生所繋の菩薩は中有なし。」(4)
(注)
- (1)「発菩提心」、「道元禅師全集」第2巻、春秋社、1993年、336頁。
- (2)「深信因果」、「道元禅師全集」第2巻、春秋社、1993年、391頁。
- (3)「深信因果」、「道元禅師全集」第2巻、春秋社、1993年、392頁。
@=さんずいに莽(もう)
- (4)「一百八法明門」、「道元禅師全集」第2巻、春秋社、1993年、450頁。
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