スタンド・バイ・ミー
神架 憐 様







そばにいてよ。

ねえ、そばにいてよ。















あー、回ってる。


ステンバーイミステンバーイミィダーリンダーリン・・・


この曲、一回回りだすと止まらないんだよ。

スタンド・バイ・ミー、俺、七原秋也の手に掛かれば、コードでなら初見でも弾ける簡単な曲。

あんまり好きなメロディって訳でもないんだけど。

何でこの曲思い出したんだっけか。眠れないじゃん。

少しでも多く休んどかなきゃいけないのにさ。


診療所の薄暗い天井を眺めながら、思う。

このままじゃ、いらない事まで考えちまう。

実はもうすっかり遅かったりするんだけど。


この曲、確か、同じタイトルの映画の主題歌だったんだよな。

音楽だけならまだしも、アメリカの映画なんてモノはこの大東亜共和国において

そうそう見られるもんじゃない。

結局俺はあらすじを誰かに聞いただけで、その映画そのものを見たことは一度もない。


あらすじ。

四人の少年が連れ立って、死体を捜しに徒歩で旅に出るんだ、確か。

彼らはずっと歩いて行く、色んなことを話しながら、色んな思いを、抱きながら。


・・・ああ、畜生。


やっぱ余計な事、考えてる。

浮かんじまったイメージはどうしようもない。



俺らもさ、ずっと歩いて行くんだ。

俺と、慶時と、三村と杉村と、四人で。

イヤ、四人でも十人でも四十二人でもいいんだけど。

とにかく、皆で。


ルールは無し──あえて禁止事項を挙げるなら、旅の終わりを考える事、オーケイ?

何処までもだだっ広く続く大地、地平線(実物は見たことない、正直な話。水平線ならいやって言うほど見たけど)

その果てまで真っ直ぐ続くハイウェイ、熱を孕んで揺れる景色。

夜には360度貸し切りのプラネタリウム。おお、ロマンチック。


んで、横を見るとさ、いつもお前が立ってるの、隣に。


お前は笑う、俺はそれだけで何処までだって歩いていけるような気分になる。

そんで、その通りに、俺たちは何処までも何処までも歩いて行く。



スタンド・バイ・ミー。



だから、傍に居ろよ。

・・・なあ、慶時。





俺、今からちょうどたった二十四時間前に、お前とは絶対離れていく事はないって、そう思ったんだぜ?

それとも、お前は今頃一足先に、アメリカの無制限ハイウェイを旅行中?

隣に俺が居なくて、寂しいんじゃねえの。


光のない部屋で、手首を眺めてみる。

触れると、どくどく波打つ血の流れを感じる。

ああ、俺の馬鹿野郎。

俺はその手で自分の頬を強打した。痛え。


俺は生きている。

生きている限りは、走り続けなきゃならない。

守りたいものがある、やらなきゃならないことがある。

立ち止まったら負け。

俺は、負けたりしない。


だったらせめて、そこで笑っててくれよ、慶時。

そんな顔で(俺の知ってるお前の表情全部、そんなかに要らないのはソレ、死に顔、

だけなのに)俺のこと、見ないでさ。





苦しいって。

寂しいってば。





祈る事は知らない。

願う事すら、今の俺にはもう無駄な事だったけれど。


いつか、一緒に歩こうぜ。


翻る砂と、照り付ける太陽だけが全ての、銀色のハイウェイを。

そしたら俺は歌うよ。



ステンバーイミステンバーイミィダーリンダーリン・・・















そばにいてよ。

ねえ、そばにいてよ。


















(神架さんのコメント)
■私、スタンド・バイ・ミー観たことないんですけど・・・間違っていたらごめんなさい。



またもや神架さんから頂きました!
七国は駄目だって仰っていたので、まさか七国頂けるとは・・・!!

秋也が健気で、かっこいい。強さの中に、脆さも内包していて、
思春期の男の子って感じが絶妙に表現されてます。
アメリカの情景も、目に浮かぶよう。
私も銀色のハイウェイを何処までも歩いてみたい。

スタンド・バイ・ミーって、原作スティーブン・キングでしたっけ?
映画二回観ましたが、何せ遠い昔の事なんで、私も良く憶えて無い・・・。
確かリバー・フェニックスが出てたよなぁ。


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