黄泉比良坂(よもつひらさか)







本当に、『あの世』と言う世界が存在すると仮定して。

だとしたら、彼は一体どちらへ行くのだろうか。





人は肉体が滅んだのち、魂を秤に掛けられるのだと言う。

結果、その人間の住処──行く場所が決まるのだと言う。

天国か。

地獄か。

彼は、どちらへ?





彼の魂は穢れてはいない。

否、魂など無いのかもしれない。










彼に歓喜を。

彼に憎悪を。

彼に哀しみを。

彼に愛を。


彼に痛みを。


幸も不幸も知らない者に。

敢えてそれを与えてはいけない。

わかっているなら。

余計に。












人は死したのち、己の人生で最も充実した時間の姿に戻ると言う。

ならば、彼は。

傷を負って彼が、『心』を失くす前の、胎児に戻るのだろうか。

母の羊水に抱かれながら、永遠にそこでたゆたうのだろうか。





それが彼にとって天国で、幸福なのだとしても。

それでも。





願わくば。

もう一度、あの頃に戻って。

頼りない、金糸のような光を手繰り寄せ。

何かを捕まえて欲しい。

例えそれが、残酷な仕打ちだとしても。

















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