| 黄泉比良坂(よもつひらさか) |
本当に、『あの世』と言う世界が存在すると仮定して。 だとしたら、彼は一体どちらへ行くのだろうか。 人は肉体が滅んだのち、魂を秤に掛けられるのだと言う。 結果、その人間の住処──行く場所が決まるのだと言う。 天国か。 地獄か。 彼は、どちらへ? 彼の魂は穢れてはいない。 否、魂など無いのかもしれない。
人は死したのち、己の人生で最も充実した時間の姿に戻ると言う。 ならば、彼は。 傷を負って彼が、『心』を失くす前の、胎児に戻るのだろうか。 母の羊水に抱かれながら、永遠にそこでたゆたうのだろうか。 それが彼にとって天国で、幸福なのだとしても。 それでも。 願わくば。 もう一度、あの頃に戻って。 頼りない、金糸のような光を手繰り寄せ。 何かを捕まえて欲しい。 例えそれが、残酷な仕打ちだとしても。 |
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