| 待ってる |
暗い闇夜でなんか、あたしは泣かない。 とても良い天気。 広い広い牧草地を仕切る木の杭に凭れて、空を眺めていた。 抜けるような、青空。 あたしは知った。 空の色が見る場所によって違うのを。 自分がかつて住んでいたあの国で見た青空と、今ここで目にする青空とは、色彩が異なる。 14歳の夏に海で見た、人生最高だと思っていたあの青空も、今は過去の話。 この国の青空は、洗いたてのジーンズように濃く、青かったから。 初めて知った空の色。 新しいものを目にすると言うこと。 生きていると言うこと。 直ぐ近くでは、焦げ茶色の毛並みをした牛が、のんびりと草を食んでいる。 青々と生い茂った牧草が目に眩しい。 平和すぎて涙が出そう。 泣く理由なら、掃いて捨てるほどにある。 目にする景色が美しければ美しいほど。 周囲が穏やかさと平和で満たされてゆくほど。 あたしは悲しくなる。 許してね、みんな。 寂しい夜に泣いたりしない。 昼の明るさがあたしを悲しくさせる。 涙を流す時は、いつだってひとりきりで。 眩しい陽の光の下、あたしは静かに涙を落とすの。 あの人の前では泣けないから。 あたしの涙はきっと、彼を悲しませてしまう。 許してね、みんな。 あたしは幸せにならなきゃいけない。 あたしは幸せになってはいけない。 あたしの幸せは、誰の物? 逝ってしまった、あの人達の物? それとも、あたしひとりだけの物? 相反する思いが、流れ出そうになる心を、立ち行かなくさせてしまう。 二人で、声を上げて泣けたなら。 強くそれを望んでいる筈なのに。 そうなった情景を思い描くと、とても恐ろしい気持ちになる。 勇気が欲しい。 許してね、みんな。 あたしは待ってる。 ふたり一緒に泣ける日を。 幸せを素直に受け止められる日がくるのを。 待ってるの。 |
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