| 夜は嫌い |
偶に、本当に偶になんだけれど、眠れない夜が、ある。 自慢じゃないが、俺ははっきり言って、寝付きは良い方だと思う。 何時もだったら、布団に入ってから直ぐに意識が飛ぶくらいなんだぜ? でも。 最近、なかなか寝つけない事がある。 本当に、ごく稀なんだけれど。 そう言う夜が、ある。 朝起きて、学校行って、部活出て、慈英館に帰って来て、飯食って、風呂入って、 それから、喋ったりテレビ見たり、ギター弾いたり。 そうして、今日も一日が終わる。 夜も更けて、子供はもうお休みなさいの時間だ。 普段通り、俺と慶時は布団を少し離れたところに敷いて、慶時が先に自分の布団へと潜り込む。 何時も通り。 俺が『お休み』と言ってから、電燈を消す。 これも、何時も通り。 慶時は身体を縮こまるように丸めて、俺に背を向けるような体勢で寝る。 俺は、仰向けになって、天井とにらめっこだ。 目を閉じて、今日あったことをぼんやり思い出してみる。 こうやって、色んなことを考えているうち、何時の間にか眠りに落ちる。 これだって、何時も通りで。 まどろみかけた俺の頭の中、六弦が奏でるリズムが木霊し始めて。 急速に意識が飛んで行く。 ところが。 『・・・ん・・・』 既に眠っていた慶時が、小さな声と共にがさごそと寝返りを打つ音が 聞こえて一気に目が覚めた。 視線をそちらにやると、背を向けて眠っていたはずの慶時はこちらを向いていて、 穏やかな寝顔が視界に映った。 ああ。 今日はもう、駄目だ。 きっと、なかなか寝つけない。 俺はほんの少しだけ、眉をしかめた。 1メートルほど離れたところにある慶時の顔を、じっと見る。 どちらかと言うと、男らしい造りの顔だと思う。 眉は太いし、肌だって、決して白くない。寧ろ黒いほうかも知れない。 愛嬌のある大きな目を縁取る睫毛も、自分に比べたら短くて。 どう考えたって、慶時は男で。 女の子と見間違うことなんて有り得ないのに。 可愛い女の子を見たときドキっとする感じ。 それと同じ感じを、慶時に対して感じることがある。 女の子らしいとこなんて全然、慶時にはないのに。 今もこうして、慶時から視線を逸らせなくて、見入ってしまう。 眠らなきゃ、いけないのに。 何だかワルイコトをしてるみたいで、こんなのは嫌なのに。 でも。 本当は。 こんな夜が来るのを、少しだけ楽しみにしてたりする。 俺、どっかおかしいのかな? 俺は時々、眠れない夜がある。 本当に、稀になんだけれど。 そう言う夜が、ある。 そんな夜が、何だかとてもいとおしい。 |
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