| うちに来るかい?(4) |
自分の机に頬杖をついて呆けていると、目の前に折り畳まれた紙を持つ白い指先が現れた。 見上げると見慣れた無表情。 『ボス・・・何コレ?』 そう訊いても、桐山は何も言わず、無言でその紙を俺に差し出している。 四つ折りにされたその紙を開くと、「婚姻届」の文字が目に入った。 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』(←状況良く呑み込めず) 『記入事項の確認をしてくれ』 紙を持つ手が、ぶるぶると震え出した。 ・・・・・・・・・・ちょっと待て。 ここ、学校の教室だぞ?クラスの連中が大勢いるんだぞ? そんな状況でどうして俺はこんな物を渡されなきゃいけないんだ!!? 手渡された婚姻届を学ランのポケットに突っ込むと、俺は桐山の腕を引いて教室を飛び出した。 人気のない廊下までくると足を止め、桐山に向き直る。 『教室であんなモン渡すなんて、何考えてんだよ!!』 『拙かったか?』 全く悪びれた様子のない目の前の人間に、俺は溜め息を吐いた。 ああもう、どうしてボスってこうなんだろう。(涙) 『さっきも言ったが、記入事項の確認をして欲しいんだ』 『え?ああ・・・』 胸ポケットから例の紙を取り出して広げると、その紙面に目を走らせる。 あ・・・これボスの字だな。几帳面で綺麗な字。 それに、こっちは俺の字だ。 わー、ボスの字と比べると汚いなぁ・・・・・・・・・・・・・って、俺の字!? 『ちょ、ちょっと!ボスの欄が記入済みなのはわかるけど、 何で俺の方まで署名捺印してあるんだ!?俺、こんなのにサインした憶えねぇんだけど!』 『ないだろうな』(さらり) 『・・・・・・・・・。(絶句)・・・じゃあ、誰が?これ、俺の字そっくりだぜ?』 『細かいことは気にするな。それより、記入に間違いはないな?』 全然細かくねぇ!!これって偽造じゃねーかよ!!! ・・・またしても桐山財閥にしてやられた・・・。 ああ、俺の人生はボスに、桐山財閥に弄ばれている。 いいさ・・・そうやって好きなだけ俺を蹂躙すればいいさ・・・。(←頑張れ充〜!) 混乱して半泣き状態の俺に、「それじゃあ行こうか」と桐山が声を掛けた。 『行くって・・・どこに?』 『町役場』 桐山はそう言うと、指に挟んだ婚姻届を翳して見せた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジ? 『なぁ、ホントに?ホントにそれ出しちまうのか?』 学校を無断早退した俺達は、とうとう町役場の窓口の前まできてしまった。 俺はさっきから繰り返し、同じ質問を桐山にぶつけている。 婚姻届を職員に渡そうとしていた桐山が振り返って俺を見た。 『何か問題でもあるのか?』 『だってさ、それ出しちゃったら入籍しちまうんだぜ?・・・その、結婚したってことになるんだろ?』 『・・・そうだが。やはり嫌なのか?俺と結婚するのは』 切なげな瞳で(←充の思い込み)そう言われ、俺は二の句が継げなくなる。 戸惑いはあるものの、嫌じゃない。 桐山は世界で一番俺が好きだと思う人だし。(←また惚気てるし・・・) でも、本当に俺なんかで良いのだろうか。 どう考えても俺と桐山じゃ、釣り合わない。 『俺はボスが好きだから、結婚してもいいって、そう思うけど・・・。 ・・・ボスは?ボスはホントに俺でいいのか?』 俺の問いに、桐山は沈黙した。 「やっぱり結婚は止めよう」なんて言われたら、ちょっと悲しいかも。 不安な気持ちで答えを待っていると、桐山が口を開く。 『始めは月岡に、「手を付けた責任を取れ」と言われて、そう言うものなのだろうかと、 その程度の認識しか持っていなかった。・・・けれど、俺なりに色々と考えてみたんだが、 お前と結婚して、家族になって、ずっと一緒に暮らすのも悪くないと、そう思ったんだ』 『・・・・ボス・・・』 『充・・・俺は、お前がいい。お前と結婚したいんだ』 信じられない。桐山からこんな言葉が聞けるなんて。(←私も信じられない) 俺は感極まって、桐山に抱きついた。 『ボス!!』(ぎゅうv) 『充』(ぎゅっv) 背中に桐山の細い腕が廻って、優しく抱き返してくれる。 ああ、地球って俺達のために回ってたんだ。(←・・・・・) 花畑で死んだ婆ちゃんが手を振ってるよ・・・。(臨死体験中)
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ・・・・・ 俺が感動に打ち震えていると、突然周りから拍手喝采が起こった。 驚いて周囲を見回すと、いつの間にか山のような人だかりが俺達を取り囲んでいる。 役場の職員を含め、老若男女、様々な人間が俺達に笑顔で熱い視線を送っていた。 『いいぞー!兄ちゃんたち!お熱いねぇっ!』(梅田隆/大工/23歳) 『お幸せに♪』(依沢ゆかり/主婦/31歳) 『らぶらぶー!』(依沢みのり/幼稚園児/5歳) 『感動したよ!ふたりの愛は本物だね!』(伊藤弘明/農業/46歳)←あっ! 『若いのう・・・青春じゃのう・・・』(山田太吉/無職/78歳)・・・その他城岩町民の皆様沢山。 『!!!!!???』(激赤) 口々に祝いの言葉を投げ掛けられ、俺は顔から火が出る程真っ赤になった。 不覚!よりよって役所内なんかで愛の告白合戦をするなんて!! 桐山は無表情で、「ありがとう」と手を振りながらギャラリーの声援に応えている。 ボ、ボス!?何故そんなサービスを!!? 唖然としている俺を他所に、桐山はギャラリーと握手までし始めた。 更に桐山は、押し寄せる群集のサイン攻めに遭い、(←なんでやねん) 挙句の果てには、胴上げまでされている。(城岩町民の皆様はノリが宜しいようで) 辺りは祭りムード一色。城岩音頭やサンバのリズムが聞こえてきそうな勢いだ。 俺は・・・俺はサンバなんか踊れねぇ!!!(混乱値MAX) 何がなんだかわからなくなった俺は、カウンターに置かれたままだった婚姻届を職員に押し付けると、 室内に響く万歳三唱を背に、外へと飛び出した。 俺は、その場の勢いで婚姻届を提出してしまった・・・。(ちーん/ご愁傷様) 『充』 役場を出てから、外で蹲っていた俺に声が掛けられる。 顔を上げると、そこには変わり果てた姿の桐山が立っていた。 オールバックの髪は乱れ放題で、学生服のボタンも全部外れている。 そして何故か、頬に真っ赤な口紅の跡が残っていた。 ・・・どさくさに紛れて誰だコノヤロウ。(怒) 『どうして急に飛び出して行ったりしたんだ?』 『あんな状況であそこにいられる訳ねぇじゃんか!』 俺の言葉を聞くと、桐山は不思議そうに首を傾げて見せる。 駄目だ・・・全然わかってないや。 思わず頭を抱えそうになったけれど、何とかそれを我慢して、俺は桐山の腕を取り歩き出した。 役所の前、広場になっている場所に設置されたベンチへ、とりあえず腰を下ろす。 乱れた桐山の衣服と髪を整えて、最後に頬の口紅を拭き取った。(世話女房) 『まったく・・・婚姻届出すだけなのにどうしてこんなになるんだよ・・・』 『盛大に祝って貰ったからな。胴上げをされたのは初めてだが、あれは中々面白い』(ご満悦) ソーデスカ。面白かったですか。そりゃあ良かったっスね。(投げ遣り) つーか、普通はサイン攻めにあったり胴上げされたりはしないと思うぞ。 婚姻届と言えば・・・ホントに出しちまったんだよな。 俺もう、「沼井充」じゃなくて、「桐山充」なのかも。 ただの紙切れ一枚出しただけだから、実感湧かないけど・・・。 隣に座っている桐山の顔を覗き見る。 綺麗な顔・・・この人と俺って、もしかしてもう夫婦? そう思っただけで、顔が熱くなるのを感じた。 『あ、あのさ、・・・ボス』 『・・・何だ?』 『えっと、俺達結婚した訳じゃん?ボスのこと、これから何て呼べばいいのかな?』 自分の結婚相手を、「ボス」って呼ぶのも変な気がするし。 かと言って他の呼び方なんて俺には思いつかない。 桐山は答えを探しているように黙り込んでいたが、暫くすると俺の方を見て言った。 『今まで通りでいいと思うが。・・・そうだな、ダーリンなんてどうだろう?』(真顔) 『今まで通りボスでいいです』(キッパリ) 何てことを言うんだこの人は。 ダーリンなんて死んでも呼べるか!旦那様とかご主人様だったらまだしも・・・。(←それもどうかと思うぞ) 俺がそんなことを考えていると、桐山はズボンのポケットからケータイを取り出した。 『今から迎えを寄越すんだが、お前も連れてくるように言われているから、一緒にこい』 『え?それってボスの家にこいってこと?』 『そうだ。まだ俺の両親に挨拶をしていないだろう?』 『・・・うん。・・・結局一度もボスの親に会わないまま、婚姻届なんて出しちまったけど、大丈夫なのか?』 『それは了承済みだから、心配ない』 その言葉に安心したけれど、子供の結婚相手に会わないまま婚姻届を出させる親ってのも凄いと思う。 俺は今からそんな人間に挨拶しに行くのか・・・不安だ。 自分の義理の両親になる人達のことを想像して、少し緊張している俺に、 桐山は手にしたケータイの液晶画面を見ながら訊いた。 『迎えの足だが、ヘリと車、お前はどちらがいい?』 『車!!車車車車車くるま!!!』(必死な目) ヘリなんかでこられて堪るか。今度は俺が大気圏外まで吹き飛ばされかねない。 桐山はケータイの電源を入れると、慣れた様子で電話の向こうの人間に迎えの指示を出していた。 特に会話を交わすでもなく、暫くぼうっとしていると、桐山が俺の顔をじっと見ていた。 散々見慣れている筈なのに、そうして桐山に見詰められる度、俺はどぎまぎしてしまう。 『・・・充』 『な、何?』 『末永く宜しく』 そう言って、桐山はぺこりとお辞儀をした。 ボス、可愛い・・・。 なんか・・・キス、したいな。 頭を上げた桐山と視線がぶつかる。 距離を詰めて俺が顔を近づけると、桐山は一度瞬きをしてから、ゆっくり瞼を閉じた。 『お取り込み中申し訳ないのですが』 『わああッ!!』 あと数センチと言う処で突然声を掛けられ、俺は叫び声を上げた。 び、吃驚した。(ドキドキドキドキドキドキドキ) 俺達に声を掛けた男は、ひと目で運転手とわかる格好をしている。 『和雄様、お待たせ致しました』 丁寧に頭を下げた男に桐山は、「ああ」と頷くと立ち上がった。 動揺している俺の腕を桐山は取ると、同じように立ち上がらせる。 歩き出した桐山の向こう、役場の門の横に黒い高級車が止まっているのが見えた。 お預けを食らってちょっと残念だったけど、先に車へ乗り込んだ桐山に促されて、俺も車内に体を滑り込ませる。 初めて乗るような高級車に落ち着かない気持ちでいる内に、車は動き出した。 車が走り出すと、桐山が脇に置いてあったリモコンを手にして、その中の青いスイッチを押した。 すると、運転席と俺達の乗っている後部座席の間に、黒い硝子がせり上がって、 俺と桐山がいる空間は、個室状態になった。 スゲー、映画でこう言うの見たことあるけど、本当にあるんだ。 感心している俺の腕に、桐山の指先が触れた。 『続き』 そうひと言発した桐山の腕が、俺の体を抱き寄せた。(←ラブラブだなぁ・・・) 俺達を乗せた車は、一路、桐山邸を目指し走る。 何だかまた波乱が待ち受けている、そんな予感がした。 続く 桐山家に行く前に、入籍済ませてしまいました。ふたりはもう夫婦(めおと)です。 次回、桐山家に乗り込む新妻(爆)充の運命や如何に! 今回のコンセプト、「ふたりを無闇矢鱈にラブラブにする」です。 周りの迷惑顧みず、ラブ光線乱射させてみました。お陰でボスが益々偽者臭いです。 ギャグを通り越して意味不明の境地に達しているような気がします。 私だって何も365日面白おかしい事が思いつく訳じゃないのです。 私の本分は絵を描く事です。絵描きですからね。 だから別に小説がつまらなくたっていいじゃないかと! |
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