| うちに来るかい?(3) |
気まずい。 怪訝そうな表情を浮かべる両親を目の前にして、俺は脂汗をかいていた。 居間に入室してから、全くの沈黙が続いている。 どうしようも無く、気まずい。 ベットの裏に隠しておいたエロ本を、親に見つけられた時と同じくらい気まずい。(←14歳・思春期) 『ええと・・・俺のボ・・・じゃなくて。友達・・・なんだけど・・・』 『・・・初めまして、桐山和雄です。充君にはいつもお世話になっております』 この場の雰囲気を打開しようと、俺はやっとの思いで、それだけ口にしたが、 桐山の方は、流石は良いトコの御曹司だけあって、確りした挨拶をした。 隣に正座する桐山の姿を改めて見ると、上等なスーツをきちっと着て、 髪もいつものオールバックでは無く、前に降ろしていた。 どこから見ても、育ちの良いお坊ちゃんである。 『桐山和雄さんて・・・あの、桐山財閥のご子息の?』 突然学校の友人を紹介され、更にその人間の素性を知って、親父とお袋は互いに顔を見合わせた。 『・・・それで今日は何の御用でしょう?ウチの充が何か失礼をしでかしたとか・・・?』 不安そうに尋ねた母親に、桐山は首を横に振った。 俺はと言うと、まるで彫像のように固まってしまい、額から噴出す汗も拭えずにいる。 俺の人生、もう後が無い。(←大げさな・・・) 『今日はご両親に是非お聞きして頂きたい話が御座いまして、お訪ね致しました』 『・・・お話、ですか?何の話でしょう?』 あああ。とうとう話が本題に近づいて来ている。 夢なら早く覚めてくれ。(残念ながら現実です) 『単刀直入に申し上げます。充君を僕に・・・』 バキッ!!バサバサバサ・・・ドサッッ!!! その時、桐山の言葉を遮るように、庭先から唐突に凄い音がした。 緊張で張り詰めていた俺は飛び上がる程驚いて、反射的にそちらの方を振り返った。 視線の先、俺が見たものは、さっきヘリの爆風で吹き飛ばされた隣家の伊藤さん(サラリーマン・46歳)が 見事なまでに植え込みに嵌っている姿だった。(伊藤さんお帰りなさい) 『伊藤さん!?』×3(沼井ファミリー) そう叫んだ後、両親は立ち上がって庭側の窓を開けた。 『伊藤さん!どうなさったんですか!?しっかりして下さい!』 『あなた今、空から降ってきませんでしたか!?』 『・・・うぅん・・・』 母親の呼びかけに、伊藤さんは小さなうめき声を上げた。 良かった。生きてはいるみたいだ。 『・・・庭で日曜大工をしていたら、突然凄い風に吹き飛ばされまして・・・』(伊藤さん家庭的) 『まぁ怖い。竜巻かしら?ご無事で何よりですわ』 竜巻じゃ無いです、お母さん。桐山ヘリです。(←笑) 『かなり高い処まで飛ばされました・・・。奥さん、地球は青く美しかった。 そして世界に国境線なんて物は存在しませんでしたよ・・・』(遠い目) アンタは何処まで飛ばされたんですか!?大気圏外!!? 俺は原因を作った本人を盗み見たが、桐山は涼しい顔をして、庭での遣り取りを眺めていた。 ボス、アンタ鬼だね。 余談だが、その後、宇宙体験をした伊藤さんは人生観が変わってしまい、 サラリーマンを止めて農業を始めたそうだ。 『・・・話を中断して悪かったね。それで、何だったかな?』 満身創痍の伊藤さんを見送ってから、席についた父親はそう話を切り出した。 その言葉で、俺の体に再度緊張が走る。 そうだ。今日は結婚の話をする為に、桐山はウチに来たんだった。 伊藤さんの乱入ですっかり忘れていた。 『・・・実は、僕達の結婚を許して頂きたいのです』 早ッ!!ボス、単刀直入過ぎ!!超直球!!! 桐山の言葉に、両親は全くの無反応で、室内には長い間沈黙が流れた。 父親はタバコを取り出して火を点けると、白い煙を吐き出しながら、母親に声を掛けた。 『・・・母さん。充は女だったかな?』 『いいえ、男の子です』 『桐山君。君は?』 『男です』 また長ーい沈黙。 何だ、この雰囲気は。(嫌な汗) 『・・・充も男で、桐山君も男。そして結婚の申し込みをしに来ている・・・・・・・・・・。 ・・・結婚・・・・・・・結婚だと!!?』 父親は机に身を乗り出して、そう叫んだ。 親父・・・気付くまで間があり過ぎ。コントみたいだよ。(半泣) 『・・・いや、取り乱して済まない。余りに驚いたもので・・・』(そりゃそうだ) そう言って額の汗を拭っている父親に対して、母親は案外落ち着いているようだった。 父親を気遣うように向けられていた視線が俺に移されたので、思わず下を向く。 居た堪れなくて、とても目を合わせられない。 情けないし、恥ずかしい。 『しかしだね。幾ら憲法改正で同性同士の結婚が認められたと言っても、やはりな・・・。 そもそも、まだ二人とも結婚出来る年齢じゃ無いだろう?』 意外。豪くまともな意見だ。 そう言われてみればそうだよな。俺まだ14歳だもん。 男って確か18歳じゃないと結婚出来ないんじゃなかったっけ? 『その件は既に話がついていますので、問題は無いと思って下さい。 勿論、公には出来ない特例措置としてですが』 トクレイソチって何!?でも、話が付いてるって事は・・・まさかまた裏金!!? 桐山財閥の暴走を止める精錬潔白な政治家は居ないのか!? この国はもうお終いなのか!!?(お終いかもね) 『まぁ、仮にそうだとしても、余りに急じゃないか。こう言ったら何だが、君も充もまだ子供だ』 『・・・仰る通り、僕達は子供です。それは重々承知して居ります。けれど、僕が事を急ぐには 理由が有るのです』 『理由?いったい何だね?』 会話の流れに、俺は物凄く嫌な予感がした。 まさか、まさか・・・・。 『・・・ご両親にはお詫びの仕様も無いのですが、僕は、充君をキズモノにしてしまいました』 だぁぁああ!!余計なこと言うんじゃねぇッ!!この鉄皮面!!!(←酷) 『何だと!?ウチの充に一体何を・・・!充!この男に何をされたのか全て包み隠さず、 その時の状況を仔細明らかに説明しなさい!!』 『説明なんて出来る訳ねーだろこのアホ親父!!』(赤面) 『親に向かってアホとは何だ!!』(パパ逆ギレ) 『アホにアホって言って何が悪ィんだよ!! そんなんだから息子が不良になるんだ!!!』(自分で言うな) 『二人とも落ち着いて下さい』 相変わらず冷静な桐山が、そう口を挟んだ。 誰のせいで揉め事になったと思ってんだ!! 『・・・わかりました。僕が充君に代わって説明します。・・・まず充君の■▲を★●して、 それから僕の×●★を・・・』(無表情で放送禁止用語連発) 『ぎゃあああ!!ストーップ!!それ以上言うなぁッ!!!』 とんでもない事を喋り出した桐山の口を、俺は自分の掌を押し当てて塞いだ。 もう嫌・・・神経持たない。何で俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ? 押し付けた俺の手を桐山は外すと、慌てふためいている俺の顔を見て言った。 『・・・いきなり何をするんだ』 『ボスが変な事言い出すから悪いんだろッ!!』 『俺は嘘は言って無いぞ』(淡々) 俺と桐山の遣り取りを聞いていた父親が、突然机をドンと叩いたので、 俺は吃驚して親父の顔を見上げた。 『ボスだと!?充、お前はこの男を、『ボス』と呼んでいるのか!?つまり何か、 心も体もあなたの奴隷ですと公言している訳なんだな!!? 何て破廉恥な!!父さんは恥ずかしい!!!』(当たらずも遠からず) 『アラ、良いじゃないですか。母さんも桐山君なら奴隷になっても良いわねぇ。 桐山君とっても素敵だもの♪』(←私も奴隷になりたい・・・)←ヤメロ 『なっ!お前は夫を前にして何て事を言うんだ!主婦はそんなに刺激が欲しいのか!? 出会いを求めていると言うのかっ!?』 父親は激昂してお袋を睨み付けた。 駄目だ。親父壊れた・・・。(嶋国も壊れた) 呆れて物も言えないでいる俺を、桐山はちらりと見ると、『充は父親似だな』と呟いた。 それってどー言う意味!? 『嫌だわあなた。冗談ですよ。・・・それより充の事なんですけれど・・・』 父親の怒りを微笑でかわした母親が、急に真面目な顔をして、俺と桐山を交互に見た。 『・・・確かに二人ともまだ若いけれど、私は・・・充が結婚したいと思っているのなら、 それで良いと思うんです』 『・・・しかし、お前。世間体と言うものが有るだろう。【息子を嫁にやった】なんて知れてみろ。 職場でもご近所でもいい笑い者にされるのが目に見えてるじゃないか』 父親が発した【世間体】の言葉に、俺は正直、心底腹が立った。 結局、俺の結婚に反対するのも、世間の目を気にしてるからだけの事かよ。 ムカムカする。これだから大人は嫌なんだ。 『矢張り私は君達の結婚を許す訳には行かない!!』 立ち上がった父親はそう絶叫すると、人差し指を桐山に向かって突きつけた。(いい度胸だ) 桐山は無表情で、突きつけられた指を見た後、続いて父親の顔を見上げた。 そして、右手をすっと持ち上げると、親父に向かって中指を立て・・・そうになったので、 俺は飛びついてそれを阻止した。(←健気だ充) 止めてから俺は後悔した。 あのまま放っておけば、桐山は親父にファックユーを決めて(←笑)結婚話がご破算になった筈だったのに。 もしかして俺、本当は結婚したいのかなぁ? 『・・・いつまでそうやって引っ付いているつもりなんだね?』 怒りを滲ませたような父親の声色に、自分の状況を確認すると、俺は桐山に抱きついていて、 桐山の方もちゃっかりと俺の腰に腕を回している、とんでも無い状態だった。 『・・・こ、これは・・・その・・・』(汗) 『・・・充・・・』(更に強く腰を抱く) 『ちょっ・・・!ボス!』(大汗) 『したい』(床に押し倒す)←コラコラコラコラ!! 『・・・したいって・・・嘘!・・・やっ・・・』(滝汗) 『いー加減にしなさい!!』(怒) スパーンと父親が手にしたスリッパで桐山の後頭部を叩いた。(←ボスご免!) 親父、桐山財閥の御曹司にスリッパでツッコミ入れるとは、見直したぜ。(そんな事で見直すな) 当の桐山は叩かれた事など全く気にも留めない様子で、体をすっと起こすと居住まいを正した。 『・・・ところで、結婚の件は許して頂けるのでしょうか?』(あくまで無表情) 『この状況でまだそれを言うかね君は・・・』(充パパ/怒微震) 『承諾して頂けないと?』 『悪いが、この話は無かった事にしてくれ。充は悪さばかりして良い子供とは言えないが、 それでも私達の子供だからな。そう簡単にやる訳には行かん』 桐山は一度瞼を伏せると、上着の内側に手を入れ、メモ帳のような物を取り出して机の上に置いた。 『・・・何だねこれは?』 『小切手です』 『金で解決するつもりか!?それは私達に対して余りに失礼じゃないかね!!』 ダン、と机を叩いて、父親は怒りを顕わにした。 こんなに怒る父親を俺は生まれて初めて見たので、かなり驚いた。 不安になって桐山の顔を見ると、いつもと変わらず、落ち着き払っている。(充既に結婚に乗り気です) 桐山は小切手を一枚破ると、それを父親の前に差し出した。 『お好きな金額を書いて下さって結構です』 『なっ・・・!』 『百万でも、一千万でも』 『・・・・・・・・・・・・・・・・・』(絶句) 『一億でも構いません』 『一億!!?』×3(沼井ファミリー/二回目) 驚きの余り、両親も俺も後ろに仰け反った。 誰も言葉を発する事が出来ないまま、静寂が室内を支配した。 『充』 長い沈黙を破って、父親が俺の名前を呼んだ。俺はそちらの方に首を向ける。 目が合った父親の瞳は、今まで見たことが無い程に真剣で、俺は思わず息を呑む。 『幸せになるんだぞ』(超笑顔) 親父はそう言うと、桐山が差し出した金額未記入の小切手を懐にしまった。 ガーーーーーーーーーーン!!! 俺は金で売られたのか!?俺は『ドナドナ』の仔牛か!!? 荷馬車でゴトゴト揺られるのか!!?(←混乱中)
ドナドナが頭の中を延々と繰り返し流れたまま、無常にも時だけが過ぎ去って行った。 気が付いた時にはもう、すっかり話は纏まっていて、俺は桐山を見送るために 玄関先に立っている状況だった。 後ろで母親が桐山に何か言っているようだったが、その会話すら耳に入らない。 何だか、茫然自失。焼肉定食。(←しっかりして、充!) 『充』 名前を呼ばれて振り返る。 いつも通りの、無表情な桐山の姿が視界に入って、その手に何か紙切れのような物が握られていた。 『受け取れないと、返された』 軽く持ち上げられた桐山の手の紙切れは、先ほど彼が父親に手渡した筈の、金額無記入の小切手だった。 『それから、充の母親に、『充をお願いします』と言われた・・・』 『・・・・・・・・・・』 その言葉で、混乱していた俺の頭がすうっと冷静さを取り戻して行く。 落ち着いたら急に体の力が抜けて、少し泣きたくなった。 俺、小さい頃から悪さばっかりしてたし。 大人の意見を押し付けて、勝手な事ばかり言う親なんて大嫌いだったけど。 それでも、俺の親なんだよなって、ちょっと思った。 『・・・俺達、ホントに結婚するんだ・・・』 『どうした?突然』 『ん・・・なんかそれもイイかなって・・・思ってさ』 桐山は表情ひとつ変えず、『そうか』と言った。 全く、何考えてるんだか全然わかんないよ。 今日だって、ヘリで来るし、月面宙返りはするし、放送禁止用語は連発するし、 親の前でサカるし、金で俺を買おうとするし、ドナドナ流れるし。(←それは桐山関係無いだろ) とにかく、桐山はやはり只者じゃないと思い知った1日だった。 別れ際、触れるだけのキスをして、桐山を見送る。(←自分で書いてて恥ずかしい・・・) 吹っ切れて、少し晴れ晴れとした気持ちで家に戻る間、俺はある事実に気が付いた。 そう言えば、俺はまだ桐山の両親に一度も会った事が無い。 その内挨拶に行かなければいけないのだろうかと考えると、 また胃がキリキリ痛んで来るような気がした。 俺の心に平穏が訪れる日は遠そうだと、改めて溜め息を吐く。 でも今は。 ちょっと幸せかな。 続く 修羅場中に何書いてんだか・・・。 桐山でも充でも無く、一番目立ってるのパパだし。(笑) 充の家庭はもっと荒んでいると思われますが、荒んだ家庭ってのでギャグを 書くのが私には無理だったので、何か普通の母親と父親に・・・。 |
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