うちに来るかい?(2)







悪ふざけだとばかり思っていた俺が甘かった。

良く考えてみれば、今まで一度だって、桐山は冗談など口にした事が無いと言うのに。

今回の話も、桐山は本気だったのだ。

しかし俺はそれを失念していて、俺達に持ち上がった一見馬鹿らしい話の事も

自然と忘れてしまっていた。

そのまま何事も無く時が過ぎ去ってくれれば良かったのだが、実際はそうじゃなかった。





『充』


授業の合間、耳慣れた声に呼ばれて、俺は振り返った。

勿論そこに居たのは、俺達不良グループのボス、桐山和雄。


『何?ボス』

『来週の日曜、お前の両親に挨拶をするから、家に居るようにしておいてくれ』

『・・・は?何の話?』

『あの後考えたんだが、ウチの親にお前を紹介する前に、まずはお前の両親に承諾して

貰う事が先決だと思ったんだ』


桐山の言葉に、俺はこの間起こった、まるで悪夢のような出来事を瞬時に思い出した。

余りに馬鹿馬鹿しい内容だったし、あれから一ヶ月経つが、桐山はそれきり何も言って

来なかったので、すっかり忘れていたのだ。


その話とはつまり、
俺と桐山の結婚話である。(本当に馬鹿・・・)

笑い話にもならない、冗談みたいな話を、桐山はまた持ち出して来たのだ。

自分でも、血の気がみるみる内に引いて行くのが解った。


『・・・ちょっ・・・、アレは冗談で言ったんだろ?』

『俺は到って本気だが』

『・・・だ、だって、あれから一ヶ月経つけど、ボス俺に結婚の話なんて一回もしなかったじゃん。

なのに、何で今更・・・』



パニックを起こし掛けている俺に対して、桐山はあくまで冷静沈着だった。


『憲法を改正させるのに、思いの他手間取ってな。結局ひと月掛かったんだ』

『・・・はぁ?憲法変えるのと俺達が結婚するのに、何の関係があるってんだよ?』

『この間話しただろう?同性同士の婚姻を認可させると』

『・・・まさか、それ・・・認められたのか・・・?』

『ああ。明日には、憲法改正がテレビや新聞で報道されると思うぞ』


信じられない。
本当に憲法変えやがったよ。

恐るべし桐山財閥。恐るべし桐山和雄。

俺はショックを受けるより、寧ろ感心してしまった。


『・・・マジで?・・・しかし良くそんな無茶苦茶な話が通ったな・・・』

『政治家なんてものは、金さえ掴ませればなんとかなるものだ』


金!?それって裏金ですか!?

そんな下らないことに金使う余裕があるなら、
アフリカで飢えてる子供をなんとかしてやれ!!

いやそれより、
今の平成不況をなんとかしろ!!!(全くだ)


『大分出費が嵩んだらしいが。『最近の政治家は欲が深い』と父も漏らしていたな』

『・・・・・・・・・・・・・・・』
(絶句)


出費が嵩んだと聞いて、一体幾ら使ったのか金額を訊きたかったけど、怖いので止めた。

畜生。結局世の中
なんだな。(沼井充、世の中の不条理を知る)


『・・・そう言う訳だから、滞っていた結婚の話を、漸く進めることが出来るようになったんだ』

『・・・・はあ、そうですか・・・・』


淡々と話を進める桐山に、俺は生返事をした。

とてもじゃ無いが、今更もう、断ることなんか出来ない。

自分の為に憲法まで変えた人間相手に、嫌だなんて言えるもんか。

そこまでしてくれた桐山の愛に、俺も応えなければ・・・とは思う。
(←愛とか言うな)

俺はちょっとだけ、覚悟を決めた。


『では、来週の日曜、お前の家に挨拶に行く。いいな?』

・・・はい・・・(でもやっぱり意気消沈)


俺の返事jを聞くと、桐山はさっさと背を向けて、どこかへ行ってしまった。

ああ・・・俺が『桐山充』になる日も近い。

白いチャペルが俺を呼んでいる。
(呼んでない呼んでない)



聞いてたわよ〜♪沼井君!!


俺が沈み込んでいる処へ、月岡がスキップで現れた。
(←怖)

出たな。三村スキーのオカマ野郎。(罵詈雑言)


『とうとう本格的に話が進んで来たな』(黒長)

『で、どうなの?お前の親許してくれそう?』
(笹川)

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
(充/失語症発症中)

『大丈夫よぉ!なんたって相手はあの、桐山財閥の御曹司ですものっ♪』
(月岡様上機嫌)

『だよなぁ。断る奴なんていないよな』
(黒長)

『結婚式には呼べよ。盛大に祝ってやるからさ!』
(笹川)



どこから湧いて来たのか、わらわらと悪友達が俺を取り囲んで、次々と言葉を浴びせて来る。

俺の脳裏には、
渡る世間はばかりの文字と、

ニコニコ笑う
えなりかずきの顔がくっきりと浮かんだ。(←何故にえなりなのか・・・)

ぎゃあぎゃあ騒ぐ月岡達の間で、俺はがっくりと項垂れる。

ピン子さん・・・現実って厳しいんですね・・・。





来るな来るなと祈っていた日曜日は、あっと言う間にやって来た。

悲しい事に、家にはきっちりと両親が居る。

一度は覚悟を決めたものの、結婚となると、やっぱり抵抗があった。

すっぽかすか、親を家に居させないようにするかのどちらかにしようとも考えたが、

それをしてしまった後が怖いので、
(正確に言うと桐山が怖い)結局は適当に理由を付けて、

親を外出させず、家に留まらせた。

俺も今、自宅に居る。


約束の時間はPM:2時。

只今の時刻、PM:1時30分。

ああ、胃がキリキリする。

部屋にじっとしているのが耐えられず、俺は外に出て、玄関の前に体育座りで蹲った。
(←情けねぇ)


別に、桐山が嫌いな訳じゃない。寧ろ大好きで。
惚気

だからキスもするし、エッチもする。
惚気惚気

もっと凄いことだってしてるし。(←何だ!?もっと凄いことって一体何だ!!?)

とにかく、一緒に居ると嬉しいし、凄く幸せ。惚気∞


でも、
それと結婚するのとは話が別だ。(←仰る通りで御座います)


だいいち、『お宅の息子さんを嫁に下さい』なんて言われて、ウチの親がどんな反応をするかと思うと、

地平線の彼方まで走って逃げたい気分になる。


鬱々とそんな事を考えている処へ、バラバラバラ・・・と、聞き慣れない音が耳に届いた。

始め小さかったその音が、徐々に近づいて来たかと思うと、あっと言う間に爆音になった。

何事かと思い上空を見上げると、銀色のヘリコプターが俺の家の上を旋回していた。

機体には、『桐山コンツェルン』の文字。


った!!


同じ町内に住んでいるのに、何故わざわざヘリで来る必要があるのか。

ヘリが高度を落とすと共に、猛烈な風が辺りに巻き上がる。


その風で、塀の上でうたた寝をしていた
野良猫がどこかへ飛ばされた。(動物虐待)

楽しそうに笑いながら歩いていた
小学生(複数)もどこかへ飛ばされた。(児童虐待)

ついでに隣家の
伊藤さん(サラリーマン・46歳)もどこかへ飛ばされた。(中年虐待)


俺も危うく巻き添えを食う処だったが、何とか踏ん張ってその強風に耐えた。
(←偉い!)

ドアが開いて、その隙間から人影が覗く。それは間違いなく桐山だった。

この付近は住宅街で、ヘリが着陸出来る広い場所など無い。

一体どうやって降りるつもりなんだろうと思っていると、まだ2・30メートルはあろうかと

言う高さから、桐山は飛び降りた。


嘘ぉ!?
うわあああああ!!
ボスが死んじゃう!!!!


桐山は、くるくると回転しながら落下して行く。

目の前の光景に俺の頭の中は真っ白になり、何かがブツッと切れる音がした。





















  

      



                                               【沼井充・心の俳句】


                                           (ネタ元/ちびま●子ちゃん)




















しかし、次の瞬間、俺の心配も五七五
(←笑)も見事に消え去った。

桐山が華麗に月面宙返りを決めて、スタッっと地面に着地したからだ。


ボス!
超かっこいい!!もう好きにして!!!(恋は盲目)


『ボス!ボスっ!!大丈夫か!!?』


駆け寄ると、桐山はすっと立ち上がって俺の方を見た。


『・・・ああ。足の裏が少し痺れたが、特に問題は無い』

『良かったぁ!俺、ボスが死んじまうかと思ったよ!!』

『・・・?あの程度の高さから落ちても、そう簡単には死なないだろう?』


死にます!
普通は死にますって!!アンタは特殊なの!!


でも、ボスが無事でホント良かった。

俺、ボスが居なかったら生きて行けねぇもん。
(恋は盲目2)


轟音と共に、桐山を乗せていたヘリが方向転換をした。

操縦している男が、桐山に向かい白い歯を見せて、親指を立てた。

おお、サムズアップだ。かっこいい。

まるでアメリカ映画みたいで、ばっちり決まっている。

それに応えるように、桐山も操縦士に向かって
中指を立てた


ちょっとアンタ!!
ファックユーかましてんの!?


さてはアイツ等(桐山ファミリー)の誰かが、面白がって教えたんだな。
(←犯人/黒長博・男・14歳)

それにしても、あの操縦士のオジサンが可哀想過ぎる・・・。
(←同感)

銀色のヘリは、悲しげな音を立てて去って行った。


『・・・行こうか。約束の時間だ』


服に付いた埃を払うと、桐山は俺の家の玄関に向かい歩き出した。

腕時計を見ると、2時ちょうど。

それで俺は、桐山が今日、何をしに俺の家を訪れたのか思い出して、青くなったのだった。










続く。(マジに)次回はとうとう桐山様が充のご両親と対決します。


ボスぶっ壊れとります。充も然り。
自分でも真面目小説とのギャップに吃驚しますが、
こちらの方が素に近いです。って言うかそのまんま。

面白いんだか面白くないんだか、自分じゃ全然解らん。


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