うちに来るかい?







今日は行こうかなー、ってノリで学校へ行ったら、桐山は休みでいなかった。

なんだ、つまんねぇの。

二時間授業を受けたけど、何だかもう、学校にいるのが馬鹿らしくなって、俺は早々に帰ることにした。


『俺、帰るわ』


仲間にそう声をかけて椅子から立ち上がると、鞄を引っ掴んで教室を後にした。


『待って、沼井君』


ちょうど教室を出たところで、野太い声に呼び止められる。

見なくても誰だかわかる。この声、喋り方、月岡以外に有り得ない。


『何か用か?俺もう帰るんだけど』

『何よその言い方、つれないわねぇ・・・っと。まぁ、今はそんなことどうでもいいわ。

あのね、桐山君から伝言。『アジトにいるから来てくれ』ですって』

『ボス、アジトにいんの?』

『そうみたいよ』

『ふーん・・・』

『じゃ、ちゃんと伝えたわよ。・・・うふふ、桐山君直々にご指名がかかるなんて、沼井君愛されてるのねぇ』


月岡はそう言うと、にやにや笑って俺を見た。

ムカツク。睨んでやったけど、目の前のオカマには全く通じなかった。


校庭の横を抜けて、学校の門を出る。

歩きながら俺は考えていた。


『アジトに来い』・・・か。

暇潰しにケンカでも・・・と思ってたけど、ボスの命令とあれば、アジトに行くしかない。

どうせ暇なんだし、いいか。ボスにも会えるし。


桐山ファミリーの溜まり場、つまりアジトは、桐山の家が所有しているビルの一室を使っている。

俺たちなんかが使ってもいいのかと戸惑ったが、桐山は、『構わないから自由に使え』と

言ったので、遠慮なく使わせて貰ってる。


・・・ボスん家ってホントに金持ちだよな。持ちビルもアジトのあるあそこだけじゃなくて、他にも沢山

有るみたいだし、家に召使いまでいるって聞いたことがある。

召使いだぜ!?いるか?フツー?映画とかドラマの世界だよ、まるで。

多分執事とかもいて、『お帰りなさいませ、坊ちゃま』とか言われてんだろーなー。

いいなー、俺も言われてみてぇ。


なんて、アホみたいなことを考えているうちに、目的地に着いた。


アジトの前まで来ると、部屋のドアに、


【充以外立ち入り禁止】


と、何故か墨(書道だ、つまり)で書かれた、達筆な字の張り紙がしてあった。


『・・・・・・・・・・・・・・・・・』


一気に体の力が抜けた。

何ですか?コレは。

ボスって偶にやることが謎だ。謎すぎる。


扉を開けると、ソファに桐山が寛いだ感じで腰を下ろし、競馬新聞を読んでいた。


どっかのオヤジみたいだ。まるっきり。

これで耳に赤青二色鉛筆挟んでたら完璧ですよ、ボス。

俺は更に脱力した。


『早かったな』

『あ、うん。学校途中でフケて来たから』


何とか気を取り直して、俺は桐山の隣に座った。

桐山は、相変わらず新聞の紙面に目を走らせている。


『あのさー、何で競馬新聞なんか読んでんの?』

『・・・なんとなく』


はぁ、そう。なんとなくね。


桐山はまだ競馬新聞に興味があるらしく、俺のことなんかお構いなしで、読み続けていた。

暇だったので、俺は部屋の中を見回したりしていた。


この部屋は結構広い。

二十畳くらいの室内には、デカいソファとテーブルと、各人が持ち込んだ私物、

盗みに入った時の戦利品などが置いてある。(テレビとかビデオとかコンポ。ゲーム機にゲームソフト

なんかは、殆ど盗んだヤツだ)あと酒。不良の必需品だな。

もう一部屋、八畳くらいの部屋があって、そっちはベットもあるし、シャワールームまで付いていて、

寝室みたいになっている。

ま、そっちの部屋は俺とボスくらいしか使わないんだけど。(何に使うかは訊くな。恥ずかしいから)


『充』


ぼうっとしているところに、声をかけられて、俺は桐山の方を向いた。

さすがにもう、新聞は読んでいなかった。

憐れ、競馬新聞は折り畳まれてゴミ箱行きになっている。


『何?』

『大事な話があるんだ』

『・・・なに?』


何だろう?大事な話って。

一体何の話をされるのか、全く検討がつかない。

なんか、胸騒ぎがする。


『充は、俺の家に来たことはないな?』

『・・・うん。ないよ』


外から見たことはあるが、中に入ったことはない。(はっきり言ってデカい。豪邸だ)

だいいち、桐山は、家に俺たちを上げることだけは、拒んでいるようだった。

別にそれを不満に思ったことはない。

桐山の家は、俗に言う上流階級だったし、自分たちが行ったところで、どうしたら良いのか困惑するだけだ。


『それがどうかした?』

『今度、うちに来て欲しい』

『・・・・は?俺が?何で?』

『親にお前を紹介する』

『何で???』

『結婚の了承を得るためだ』





『けっ・・・!』





今なんて言いました?聞き間違い?俺の耳おかしい?





『けっこ、け、け、け、けっこ!!?』

『・・・ニワトリの真似か?』
(←ベタな突っ込み)

違う!!ニワトリカンケーなし!!そうじゃなくて!結婚って、誰と誰の!?』

『俺とお前の』
(無表情/断言)


そう来たか。


『言われたんだ。責任を取れと』

『は?』

『俺はお前を、『キズモノ』にしたんだから、責任を取らなければいけないと、そう、言われた。

だから、お前の面倒は俺が一生見ることにした』



誰だ!!そんなアホなことボスに吹き込んだのは!!?

ヅキだな!?アイツだ!!
アイツに決まってる!!!

あのオカマ野郎、今度会ったら自慢のリーゼント
高枝切りバサミで切り落としてやる。


こんな馬鹿みたいな話は、もう終わりにしたい。心の底からそう思う。


『あのさぁ、ボス。俺男なんだけど』

『見ればわかる』

『ボスも男だろ?男同士で結婚なんか出来ねーって』

『それは、何とかなる』


何ともなりませんてば。無茶言わないで・・・。
(涙)


『桐山財閥の力で政府に
圧力をかければ、同性同士の婚姻を認可させるくらい、何てことはない』


マジだよ。マジで言ってるよこの人。

俺、玉の興だね。オメデトウ。
(←半壊)

そうかぁ、俺、『桐山充』になるのかー。
(←完壊)


こうなったら、この馬鹿話にとことん乗ってやる。もうヤケだ。


『俺、子供なんか産めねぇよ?』

『養子を貰えばいい。うちはそう言うことに拘る人間はいないから大丈夫だ』

『・・・・・男なのに、俺がお嫁サン?かっこ悪ィ・・・ワルが聞いて呆れるよな』

『俺もお前も男なんだから、両方新郎だろう?』

『・・・あー、そっか。それならいいや』
(投げ遣り)


なんか、良く考えたらいいかもしれない。

ボスお金持ちだから、働かなくても良さそうだし、家事とかお手伝いさんが全部やってくれそうだし。

それに、ずっとボスと一緒にいられるなら、幸せかも。
(ドリー夢)


本気でそんなことを考えていたら、部屋のドアが突然、バーンと音を立てて開いた。





『ボス!!沼井!!婚約おめでとーッッ!!!』





月岡と笹川と黒長が、部屋に雪崩れ込んで来た。

唖然、
呆然座禅。(←かなり動揺している模様)

一気に正気に戻った。


馬鹿か俺は!?
一体今俺は何を考えてたんだ!!(←幸せな結婚生活についてです)


『おっ、お前ら!!聞いてやがったな!!』

『あらー♪沼井君。ご機嫌いかがかしら?』

『ヅキ!!てめぇだろ!?ボスに妙なこと吹き込んだのは!!てめぇなんか
高枝切りバサミの刑だっ!!』

『は?なあにソレ?やだわー、沼井君たら。嬉しすぎて混乱してるのね。言ってることが支離滅裂よ』


コイツ、あとでゼッテーぶん殴る。
(憤怒)


月岡はご丁寧に花束まで持っていて、それを桐山に手渡した。



『婚約おめでとう。桐山君。幸せになってね♪』

『ありがとう』



桐山は礼まで述べて花束を受け取った。



バカーーッ!!受け取んなっつーの!!!



もうひとつの花束を、月岡は俺にも差し出す。



『はい。沼井君にもア・ゲ・ル♪婚約おめでとう』

『ありがとう・・・・・って
言う訳ねーだろ!!コラぁッ!!!

『やあねぇ。何怒ってるのよ。こんなおめでたい日に』

フザけんなー・・・(目が据わってます)



月岡とガンの飛ばし合いをしていると、隣に立っている桐山が言った。


『充は俺と結婚するのが嫌なのか?』


その言葉に、思わず俺は戦闘体勢のまま固まってしまった。


『そうだよ。嫌なのか?』
(黒長)

『まさか嫌な訳ないよなー?』
(笹川)

『まさかね♪』
(オカマ)←酷ぇ。


イヤに決まってんだろーが!!俺は男だぞッ!!』(噴火)


『わー、ボスカワイソー。お前酷いヤツだなぁ』
(黒長)

『ボス遊ばれてたんだな』
(笹川)

『サイテー!!汚らわしいわ!沼井君て悪いコね!!』
(性悪オカマ)←エスカレート。


『そうか・・・俺は遊ばれていたんだな・・・』
(桐山/哀愁)


ちょっと待てーーっ!!いいようにされてんのは俺の方なのに!!


『遊びなんかじゃねーよ!勝手に決め付けんな!!』

『じゃあいいじゃない。結婚しても。ねぇ?』
(オカマ×××)←放送禁止用語。

『なぁ?』
(笹・黒)


駄目だ、埒が明かない。お前ら全員グルだな?

つーか、何でこんな馬鹿話マジになってしなきゃなんねーの!?

とりあえず適当に誤魔化して、こいつらを退散させた方がいい。


『わかりましたよ。すりゃあいいんだろ?結婚でも何でもしますよ、ええ』


俺はそう吐き捨てた。あー、馬鹿馬鹿しい。


『充』


顔を上げると、桐山の顔が間近にあって、何の前触れもなく、いきなりキスされた。

それはもう、『ぶちゅう』って感じで。

『おおー』と歓声が上がった。『きゃー』ってのもその中に交じってたが。


『ボ、ボス・・・!!』
真っ赤

『披露宴は、
新高輪プリンスホテル(著名人御用達)にしよう』

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
(絶句/真っ青

『・・・充』


そこでまた、桐山が俺にキスをしようとしたので、焦った。

みんなの目の前だぞ!!
アンタに節操ってモンはないのか!?(←皆無です)


『結婚の問題も解決したことだし。邪魔者は退散しましょうか』


うふふ、と月岡は笑うと、笹川と黒長を引き連れて、部屋を出て行った。


はぁ、助かった。こう言う時だけは、あいつの存在がありがたい。

でも、桐山と二人っきりになってしまって、ちょっと気まずいかも。

なんか、妙な空気だ。



『充』



そう名前を呼ばれたあと、桐山は俺の顔をじっと見た。

キスするんだとわかったから、俺は目を閉じる。

いつも通りの冷たい唇が触れて、凄くドキドキした。





あー、俺やっぱりボスが好きだな。

大好き。





『充』

『ん?』

『新婚旅行はどこがいい?』



まだ言ってるよ。

もー好きにして。嫁にでも何でもなりますよ、俺は。



『・・・そうだなぁ、アメリカがいいな。最新モデルのスニーカーとか、ヴィンテージ物のジーンズとか欲しいし』

『そうか、わかった』





どこまで本気なんだか。

いや、本気だったら困るんだけど。


でもまぁ、偶にはいいよな。

こう言う、馬鹿みたいなのもさ。














続く。



充!!ボスは本気だぞ!!
良し。二人とも幸せだ。私の悲願は成就されたね。(いいのか・・・?こんなんで)


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