| カンケイ |
『充は暖かいな』 俺の胸元に額を押し付けていた桐山が、不意にそう言った。 ここは俺の部屋。 点けっ放しにしてあるテレビの音を聞きながら、俺は床に座ったままの姿勢でベットに寄りかかり、 タバコをふかしていた。 桐山は、そんな俺の体に凭れてじっとしている。 『そうかな?俺別に、特別体温高いわけじゃねぇと思うけど』 『暖かい』 もう一度同じことを言って、桐山は目を閉じた。 何だか、心地好さそうに見える。 まぁ、俺の思い込みなんだろうけど。 『充の心音』 『ん?』 『ずっと鳴っているな』 『当たり前だろ。途中で止まったらヤバいって』 桐山の言葉に俺は軽く笑った。 何故か桐山は俺の鼓動を聴くのがお気に入りらしく、よくこうやって、胸に耳を押し当てては聴いている。 そんなもの聴いて何が面白いのか、俺にはさっぱりわからない。 でも、甘えられてるみたいで、悪い気はしない。 『充の心臓が欲しい』 俺は思わず、咥えていたタバコを落としそうになった。 何だか、恐ろしいことを言われた気がする。 『・・・・・・・はああ?』 『お前の心臓が欲しい』 『無茶言うなよ。欲しいって言われてもあげられねえって、コレばっかりは』 『そうか』 短くなったタバコを、灰皿に押して付けて消す。 何となく、次のタバコを吸う気にはならなかった。 【充の心臓が欲しい】 そう言われて。 本当は、『俺は全部ボスの物だから、心臓もアンタも物だよ』って、言おうと思ったんだけど。 何だかそれを言ってしまうのは、少しだけ悔しくて、言うのを止めた。 ギブ・アンド・テイクだなんて、そんなことを望んでる訳じゃない。 桐山相手に、そんな希望を持つことは無意味だと、俺はもう知っていた。 思い知らされていた。 ちょっと、意地悪したかったんだ。 困らせてやりたかった。 『なあ、ボス。そんなに欲しい?俺の心臓』 『ああ』 『でも無理なんだよ。俺の心臓は、俺だけの物だからさ』 『・・・そうだな』 がっかりした? でも、安心していいぜ。 そんなの嘘だからさ。 俺はもうとっくの昔に桐山の物になっていて。 だから。 遠慮なんかせず、好きなように奪えばいい。 心臓でも、肝臓でも。 好きなだけ、掻っ攫えばいいんだ。 『充の心音を聞いていたいんだ』 何だか、独り言みたいな言い方だった。 少し間を置いて、桐山は続けた。 『・・・俺とお前の心臓、交換出来ないかな』 それは、全く現実的な思いつきじゃなかったけど。 驚いた。 それって、『ギブ・アンド・テイク』? 一体いつ、どこでそんな芸当憶えて来たのだろう、桐山は。 少し嬉しかったから、大盤振る舞いしてやることにした。 俺ってつくづく、この人に甘いよな。 『交換なんてしなくていい。やるよ、俺の心臓』 『・・・無理なんじゃないのか?』 『出来るよ、きっと。だから、あげる。心臓だけじゃなく、俺の全部、ボスにあげるよ』 桐山は暫く俺の顔をじっと見ていたが、やがて、ゆっくりと俺の背中に腕を回して、抱き寄せた。 『俺のものだ』 確認するように、覚らせるように、桐山は言った。 その言葉に、ぞくぞくする。 体が熱くなった。 俺今、興奮してるのかも。 ヤバいな、変態だわ、コレじゃ。 でも、これでいい。 俺たちには、こんな関係が似合ってる。 さあ、思う存分。 俺を奪ってくれ。 |
| Back |