ケニヤからエチオピアに入ると道路はいきなり左側通行から右側通行にかわる。それと同時に町には記号みたいなアムハラ語があふれ、シバの女王以来の長い歴史を持つ独特の世界が展開する。
そんなエチオピアの中央部にある青ナイル川の水源、タナ湖に面した町バハルダールでこの湖にシャークフィシュと呼ばれる巨大な魚がいるとの噂を聞いた。なんでもその魚は細長くて青黒い色をしていて、成長すると1メートルぐらいになるらしい。それは一体なんなのか?言葉通りに想像すると気持ち悪くなるが、ともかくそんな物がいるのならやはり見てみたい。そこでアムハラ語を教えてくれた村の子供と一緒にその怪魚を探してみる事にした。
まずは少年が前にその魚を見たという場所でスピナーを引いてみる。1投、2投、何の反応もでない。それで少しずつ湖岸を移動しながら探ってみるが、やはり全くアタリがでない。しかしそれにしてもこの湖に漂う妖気は何なのだろう。ルアーを投げ込む事にすらも罪を感じるほどの圧倒的な神聖さがある。
とにかくルアーじゃダメみたいなので今度はミミズのエサでオモリをつけて投げてみた。オモリが底につく感覚からすると岸の近くは思ったより浅く、底は泥のようだ。ナマズ系がいそうな気がしたが、ミミズのエサもタナ湖の魚達は気にいらないらしく食ってくれない。
もうこうなったらシャークフィシュじゃなくても釣れたら何でもいいと思ったのだが、タナ湖の魚はとうとう僕には振り向いてくれなかった。しかしそれにしてもシャークフィシュとは一体何だろう?その正体がどうしても知りたい僕は竿をしまってからバイクで町を走り回っていろんな人にその魚について聞いて回った。
そうするとその内なんとなくシャークフィシュの正体は巨大なウナギのような気がしてきた。しかしとうとうその正体は分からなかった。走り回って疲れた僕を見た少年は気の毒に思ったのか村人しか知らないタナ湖の魚を料理してくれる食堂に連れていってくれた。そこで出してくれた魚フライのうまかった事!今でも忘れられない。 |