今、世界一地雷が埋もれている国。それがアフリカ南西部にあるアンゴラだ。長引く内戦に東西両陣営がからみ、多くの難民が国外に逃げ出した。そんな難民キャンプの一つ、ザンビアのメヘバに知人を訪ねて行ってみた。
名目上は通訳ということで手伝いに入ったものの実際の仕事はベースの犬達のフン拾い。そんなある日キャンプの少年を家までバイクで送っていって遊んでいると、彼は「魚のいる川に案内してやる」と言い出した。これはおもしろい事になった。何が起こってもおかしくないアンゴラ国境に近いこの辺りでのんびり釣りするヤツなどいないはず。ということは手付かずの魚が居るんじゃないか?
翌朝、キャンプのボランティア江川さんと少年二人と一緒に“魚のいる川”を目指した。キャンプから60キロ、軍の検問を二か所越えて辿り着いたのは畑の脇の小川。なんの変哲もない小川だが少年達はここに大物がいると言う。何がいるのか分からないのでまずはためしに小さい目のスピナーを投げてみた。一回、二回何のアタリもでない、そこでポイントを代えて投げる。そうこうしているうちに村人達が集まってきた。彼等は多分リールを見たことないのだろう、ただ投げるだけで後から“オー”という喚声が上がる。
こんなに観客がいると何かやりづらいので、もっと上流に移動するが困ったことに観客はさらに増えプロゴルファーが次のホールに移動する時のような状態になった。とりあえずこれでは釣らないとカッコがつかないのでエサ釣りに代えてみる。
そのエサだが、少年が用意してくれたのは難民キャンプの巨大なアリ塚から取ってきた真っ赤な大アリだった。その牙のある頭をむしりとって腹にハリをさす。これがザンビア流らしい。
エサに代えると急にアタリが出始め、タナゴみたいな小魚が釣れる。なんか拍子抜けするような大きさだが、こういう繊細な釣りもこれはこれでまたなかなかいいものだ。釣りの初心者江川さんも最初は「こんなの釣っても仕方ないなー」といっていたが、いつのまにかこの釣りの魅力にはまってしまったようだった。 |