アフリカ南部ボツワナに野生動物の宝庫オカバンゴ湿原はある。象やヒヒの現れるワイルドなキャンプ場でテントを張っているとここに釣りに来ているアメリカ人トムにあった。彼は明日ここから400キロ離れた川にタイガーフィッシュという魚を釣りに行くというので僕も一緒に行くことにした。
朝8時、トムと現地ガイド、ゼブラと一緒に川に出る。予想外に寒い船の上で震えること一時間ゼブラは『タイガー』と言って船を止めた。信じられないが彼には魚が見えるらしい。
すかさずトムがフライの準備を始めたので僕もすぐにタイガー用のワイヤーとルアーをセットして投げる。釣り始めて10分ぐらいだった。いきなりガツンと衝撃があり合わす間もなく竿が絞り込まれた。なんだこれは!と慌ててリールに手をかけてもラインが出ていくばかりで為す術がない。
竿をのされないよう耐えていると20メートルぐらい向こうで銀色の魚体が舞った。「タイガー!」二人が叫んだ。しかしまさかこんなにあっさり釣れるとは思ってもいなかった。素晴らしいジャンプを見せたタイガーは60センチ近くもある大物だった。
それからもアタリは出たが向かい風が強くなりトムのフライが飛ばなくなったのでポイントを移動する。すこし行くと立ち木の下に3メートルぐらいのワニが気持ち良さそうに寝ていたがゼブラはおかまいなしに前を通り過ぎる。彼にはワニなんてカエルみたいなものなんだろう。
ゼブラは川を熟知しているようで次に入ったポイントもまた素晴らしかった。キャストする度にタイガーが強烈な体当たりをしてくる。その時今までとは違う妙なアタリが来た。タイガー以上の重量感で上がってきたのは80センチのナマズ。ゼブラいわく岸近くの草にはナマズが潜みタイガーに追われた小魚を狙っているという。しかしそのナマズも鳥やワニに狙われるので木の下では釣れないらしい。
さて軽快にヒットしている僕を尻目になぜかトムのフライはなかなか釣れない。しかもルアーを勧めても彼はガンンとして受け付けない。その彼にタイガーがヒットした時はこっちまで感動した。
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