アマゾン川源流ペルーのプカルパから河口に近いブラジルのグルパまで4ヶ月イカダで流されてみた時、最初から最後まで僕らと遊んでくれたのがブランキーニョと呼ばれる白いナマズだった。もっとも5000キロ近く下る間にはその名前も「モタ」、「ピラピチンガ」などといろいろ呼ばれていたが日本でいえばフナみたいに誰もに親しまれている魚だ。
初めてこいつに会ったのはプカルパでイカダを作っている頃で、肉をエサに目の前にチョイと投げるとあっという間に釣れた。その時は嬉しくて仕方なかったが、イカダ生活を続けるうちに毎日こいつしか釣れないのにウンザリしてきた。だいたいアマゾンていえば魚の宝庫じゃなかったの?
ところが現実には日本と一緒で魚はいる所にしかいないのだ。しかも同じような景色が毎日続く広さではポイントがどこかはなかなか分からない。そんな中で浅い所にならどこにでもいたのがこいつだった。おかげでこの魚の生態及び料理法についてはちょっとは詳しくなった。まずこの魚は昼でも夜でも釣れる、特に川幅の狭い源流付近ではその傾向が顕著だった。ただし注意すべきはアマゾンの夜釣りは凶暴な蚊との戦いでもある。食性は基本的には肉食だけどバナナやメリケン粉でも釣れたから雑食なのかもしれない、アマゾンでは魚もタフでないと生きていけないのだ。
しかもなんと、こいつらは共食いもする、ある日夜釣りで釣れたブランキーニョを一匹掛けして大物を狙ってると何者かがそれを攻撃している。グッと手応えがあった瞬間に上げてみると、さらに大きいブランキーニョが釣れた事があった。またある時、イカダの上にあった腐りかけたブランキーニョを川に捨てると、それをめがけて透明度の全くない泥水の中から長いヒゲがうかび上がって来た事もあった。その様子はホラー映画を見ているようでゾッとしたのを覚えている。
さてアマゾンにいたころは食料は現地調達だったのでブランキーニョはよく食べたが味は残念ながらもうひとつか?現地の人達は魚に対してはすごいグルメなので、ブランキーニョは哀れにも犬に食われたりしていた。 |