オヒョウという魚がいる。世界最大のヒラメだ。日本では北海道でまれに網にかかるというのを聞いた事があるが釣ったというのは聞かない。しかしアラスカではこの怪物が結構誰にでも釣れるのだ。だいぶ以前開高健が『オーパ!』という本で紹介しているので知っている方もおられると思うが、開高さんみたいにアリューシャン列島まで飛行機で飛ばなくてもアンカレッジから350キロの港町ホーマーでオヒョウは釣れる。
この日朝港を出た船に僕と日本人がもう一人、アメリカ人が三人と船長とアルバイトが乗っていた。道具は頑丈一点張りの船頭仕掛け、餌はこれまた豪快なニシンの一匹掛けか鮭のブツ切りで岸からそれほど遠くない水深20メートルぐらいの場所で仕掛けを下ろす。いきなり隣のアメリカ人に80センチぐらいのオヒョウが来た。 そのあまりの迫力にボーゼンとしているとこちらにもアタリが来るがこれは1メートルぐらいのサメ。以後周囲にも次々と上がり始める。しかもそのほとんどが80センチオーバーでどうやらここではこのクラスが標準らしい。しかしその巨体のわりにアタリはコツコツと微妙でどうも合わせづらい。
船長が言うには合わせた後、竿を立てたままリールを巻く方がいいというのでそうしてみるとその日最高の50ポンドクラスが来た、真下に潜る腕が痛くなる引きに耐えて船ベリに寄せたオヒョウの頭を船長はなんと36口径の銃を取り出して打ち抜いた。これはもはや釣りというより猟じゃないのか?
結局この日50センチから1メートル20センチのオヒョウ8匹、サメ一匹、タラ一匹ここでは50センチクラスは放流サイズということだったが一番小さいヤツを持って帰り浜で料理してイヤになるほどヒラメを食った。夏場のアラスカは雨が多く天気が安定しない日が多い。しかし一度沖に出れば獲物は確実みたいでこの日港には80センチぐらいからなんと235ポンドという超大物まで上がっていた。なんか海底を想像すると気持ち悪くなってくるが、ぜひまた行ってみたい所だ。 |