駿河台大学現代文化学部における本多啓担当の

授業の紹介

(2000年度。外国語科目は除く)
最終更新 2000/1/21 17:40

言語文化論入門 (2000)

(オリエンテーション科目、1年/2単位)

意味論と語用論の基礎

  1. 目標と内容

    この授業は、現代の日本語と現代の英語を対象として言葉の「意味」について考えてみようというものです。ポイントは次の2点です。

    A)言語表現の「意味」は、「その表現が何を指しているか」だけで決まるものではない。

    たとえば「しお」と「塩化ナトリウム」はほぼ同じ物を指すと言えるわけですが、「意味」はかなり違います。その証拠に、「ちょっとそこの しお とって」と「ちょっとそこの 塩化ナトリウム とって」では使える場面が全く違います。

    言葉の意味には「指すもの」に加えて「別の何か」が関わってくるのです。

    B)言語表現の全体としての意味は、それを構成する部分の意味を足したものと同じではない。

    たとえば「嫁さん」という語は、「嫁」を丁寧に言ったものではありません。つまり「嫁さん」の意味は「嫁」の意味と「さん」の意味を足したものではないのです。さらに、「お嫁さん」も「嫁さん」を丁寧に言ったものではありません。(どう違うかについては授業で説明します。)言語表現の全体としての意味には、「部分の意味の足し算」に加えて「別の何か」が関わってくるのです。

    この「別の何か」には、人間が周囲の環境や他の人間たちとどのように関わり合っているかという問題が関わっています。これには、人間の生得的な知覚のメカニズムから文化的な慣習に至るまでの様々な要因が関係してきます。

    このような事柄について、「語」「構文」「文」「テクスト(実際に使われたまとまりのある言語表現のこと。「教科書」のことではありません)」「会話」などのレベルについて考えていくというのがこの授業の内容です。

  2. 関連科目など
  3. この授業を理解するうえで特に必要な科目はありませんが、他の先生の授業と内容が重複する部分があります。また、英語の例が出てくるので、英語の学習をきちんとするよう努力してください。また、大学での授業以外でも日頃から言葉についての関心を深めるよう心がけてください。授業で解説した事柄に関して質問等がある場合には関連する資料(プリント、ノートなど)を持ってオフィスアワーの時間などに研究室に来てください。

  4. 教科書等
  5. 授業時に配布するプリントを使用します。やむを得ない欠席等で受け取れなかった分は研究室(本部棟1311)前の箱に入れておきますので、各自取りに来てください。

    その他の指定図書

    【指】『もし「右」や「左」がなかったら』(井上京子、大修館書店)
    【指】『日本語ウォッチング』(井上史雄、岩波新書)
    【指】『ディスコース』(橋内武著、くろしお出版)
    【指】『意味論2---認知意味論---』(杉本孝司、くろしお出版)
    【指】『ことばの詩学』(池上嘉彦、岩波書店)
    【指】『意味の世界』(池上嘉彦、日本放送出版協会)
    【指】『記号論への招待』(池上嘉彦、岩波新書)
    【指】『ことばと文化』(鈴木孝夫、岩波新書)
    【指】『日本語と外国語』(鈴木孝夫、岩波新書)
    【指】『教養としての言語学』(鈴木孝夫、岩波新書)
    【指】『英語の使い方』(今井邦彦、大修館書店)
    【指】『社会言語学入門』(東照二、研究社出版)

  6. 成績評価
  7. 学期末試験およびレポートによります。

    試験の内容:

    授業で解説したことについて問題を出します。教科書、プリント等何でも持ち込み可としますが、授業中の説明を聞いていなければ的確な解答はできない問題となっています。

    レポートの内容

    日頃から言葉についての関心を深めてもらうという趣旨で、レポートを書いていただきます。新聞、雑誌、書籍等の記事のなかで ことば について取り上げたもののうち、各自興味をひかれたものを選び、その現物またはコピーに各自のコメントを以下の要領で添えたものを3回提出してください。

言語文化論A (2000)

(専攻基幹科目 分野C、2〜4年/4単位)

日英語対照文法

  1. 目標

    この授業では、現代英語の文法に関わる基本的な事項を復習しながら、言語学の立場からの解説を加えていきます。その際、可能な限り対応すると思われる現代日本語の表現と対照させ、類似している部分と違っている部分を考えていきます。また、必要に応じて英語・日本語以外の言語にも言及します。

    たとえば英語の進行形( be プラス動詞の ing 形)は日本語の「ている」に対応すると覚えている人もいるかと思います。これは全くの間違いとも言い切れませんが、全面的に正しいとも言えません。 He is reading the newspaper now. は「彼は今新聞を読んでいます」と訳せますが、 They are getting married. を「彼らは結婚しています」と訳したら間違いです。これに関して授業では「英語の進行形はどのような範囲の意味を表すものであり、他方日本語の「ている」はどのような範囲の意味を表すものであるのか」「その二つの「範囲」はどのように重なっているのか、またどのようにずれているのか」という形で考えることになります。

    また、英語の現在完了形に対応する形式は日本語には存在しないといわれることがありますが、日本語を専門に研究している人々は必ずしもこの見解に賛成していません。それでは、英語の現在完了に近い日本語の形式とは何なのでしょうか。

    このように、英語を日本語との対照から考えるということは、裏返せば日本語を英語との対照から考えるということにもつながります。したがってこの授業は私たち(の大部分)にとっての母語である日本語を見直す機会にもなるでしょう。

  2. 内容

    基本的には教科書に沿って解説しますが、文の最も重要な構成要素である動詞を中心に考えていきます。

    文の構造と種類/動詞について(動詞の意味と構文の意味/動詞の分類/語彙的なアスペクト/文法的なアスペクトとしての完了と進行/日本語・英語・その他の言語の完了、進行、受動)/時制/助動詞 など。

  3. 関連科目

    この授業の内容は一部「言語文化論入門」と重複する部分がありますが、受講していなくても理解できる内容にする予定です。また、英語を対象とした科目ですから、外国語科目としての英語に力を入れるなどして英語力を高める必要があることは言うまでもありません。また、日本語(国語)についての科目を履修していると理解が深まるでしょう。

  4. 教科書等

    『English Grammar Today --- 学習者中心の最新英文法 --- 』(長谷川瑞穂・木全睦子、朝日出版社)

    および、授業時に配布するプリント。(やむを得ない欠席等で受け取れなかった分は研究室(本部棟1311)前の箱に入れておきますので、各自取りに来てください。)

    【指】『英文法用語がわかる本』(田上芳彦著、研究社出版)
    【指】『機能的総語論』(高見健一著、くろしお出版)
    【指】『日英比較・動詞の文法』(吉川千鶴子著、くろしお出版)
    【指】『日英比較・話し言葉の文法』(水谷信子著、くろしお出版)

    【指】『認知文法論』(山梨正明著、ひつじ書房)
    【指】『世界の言語と日本語』(角田太作著、くろしお出版) 【指】『日英語比較選書』(全10巻、研究社出版)
    【指】『テイクオフ英語学シリーズ』(大修館書店、全4巻)

  5. 成績評価

    年間数度の課題および学期末試験によります。


比較文化演習 I (2000)


教養演習 I (2000)

(総合発展科目、2年/4単位)

『OL進化論』で学ぶ思考の技法と英語

  1. 概要

    4コママンガはギャグの宝庫です。その中には、「人はどのように物を考えるのか」ということの本質的な部分を直観的な形で衝いたものが数多く見られます。認知心理学の立場からその点に着目し、「人はなぜ正しくない考え方をしてしまやすいのか」「きちんと考えるにはどうしたら良いのか」ということを『OL進化論』というマンガを題材に分かりやすく解説した本が、この授業で教科書として使う『クリティカル進化論』です。

    授業では、みんなでこの本を読み(担当を決めて分担して内容の紹介をしてもらいます)、そこで学んだことを日常生活の中で起こる可能性のある事柄に適用したらどうなるか、ということを考えていきます(プリントを使用)。そのなかで「勝手な思いこみや決めつけをせず、いろいろな可能性を考慮に入れてじっくりとものを考える」という姿勢を養っていきたいと思っています。論理的な思考に関心のある人の参加を望みます。

    また、日本のマンガには英語に翻訳されているものも数多くあります。 『OL進化論』にも英語版があります。そこで、この授業では英訳版を参照することで、日本語と英語の違いについての理解を深めることもしたいと考えています。

  2. テキスト

    教科書: 『クリティカル進化(シンカー)論: 『OL進化論』で学ぶ思考の技法』 (道田泰司・宮元博章、北大路書房)

    指定図書

    【指】『クリティカルシンキング入門編: あなたの思考をガイドする40の原則』(E.B.ゼックミスタ・J.E.ジョンソン、北大路書房)
    【指】『クリティカルシンキング実践篇: あなたの思考をガイドするプラス50の原則』(E.B.ゼックミスタ・J.E.ジョンソン、北大路書房)
    【指】『論理的に考えること』(山下正男、岩波ジュニア新書)
    【指】『超常現象をなぜ信じるのか』(菊池聡、講談社ブルーバックス)
    【指】『不思議現象なぜ信じるのか』(菊池聡ほか編著、北大路書房)
    【指】『考える練習をしよう』(バーンズ、晶文社)

  3. 成績評価

    平常点を重視しますが、必要に応じてレポート、試験等を課します。


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