クリティカル進化 (シンカー) 論 : 『OL進化論』で学ぶ思考の技法

道田泰司, 宮元博章著

北大路書房


本多 啓 (現代文化学部)

 私たちは、日々、さまざまな経験をし、いろいろな情報を受け取っています。それらをただ受け身の姿勢で丸呑みにするのではなく、日々の経験から正しく 「事実」を認識し、多様な情報から「信頼できるもの」と「そうでないもの」を区別して、「主体的な判断」を下すことが重要であるとは、しばしば言われるこ とです。しかし、人間の下す「判断」は、常に間違いを犯す可能性をはらんでいます。そして、「主体的な」判断を下すときには、その判断が間違っていた場合 にその責任を他の人にゆだねるのではなく、みずからそれを引き受ける覚悟をもつことが前提となります。そこで、「主体的な判断」のためには、「正しい事実 認識」や「適切な判断」のための訓練をすることが大切になります。
 4コママンガはギャグの宝庫ですが、そのギャグの中には「人はどのように物を考えるのか」ということの本質的な部分を直観的な形で衝くことによって「落 ち」を成立させているものがしばしば見られます。認知心理学の立場からその点に着目し、『OL進化論』というマンガを題材として適切なものの見方・考え方 の手ほどきをしているのが、この『クリティカル進化論』です。
 「人間は事実を認識したり判断を下したりするときにしばしば間違いを犯すが、そのような間違いはなぜ発生するのか」「どうすればそのような間違いを防い で、正しい事実認識や適切な判断ができるようになるのか」「そもそも人間のものの見方・考え方にはどのような特徴、ないしは「くせ」があるのか」が分かり やすく解説されています。「勝手な思いこみや決めつけをせず、いろいろな可能性を考慮に入れてじっくりとものを考える」という姿勢を養うことができる本で す。