霧の雪







その霧は雪だった


無数の真白な粉雪は

純白の霧のドラゴンの身体

翡翠の少女を守るため

自らの身体を削って吹雪く





真白い霧のドラゴンは

かつての少女の母だった

悪しき炎の精霊が 

村へとやって来る最中

守護なるドラゴンを呼び出して

霧の中へと砕けて散った







少女の声が 遠くに聞こえる


おかあさん!おかあさん!目をあけて!!





うっすら開いた瞳には

白の世界しか 映らない










ああ 霧だ

これは冷たい 霧の雪なんだ


もはや見ることはできない

愛しき姿を、見ることはできない

手を伸ばせば触れるであろう

柔らかな翡翠の髪よ

零れ落ちた翡翠の涙よ

触れることすら 許されぬのか



たったの独り 遺してしまう

これが私の 贖罪なのか





幻獣神バハムート



この声が届くであれば聞いてください

愚かで弱き母親の

最期の願いを聞いてください

いつまでもこの子の傍にと、いられるように

どこまでもこの子の守りと、なるように



私の中に微かな光が宿るのならば


どうかこの霧の中へと 導いてください



















真白い霧のそのドラゴンは

今は亡いた母の姿

翡翠の少女を守るため



自らの身体を 削って 吹雪く