| 軍事大国化の経済的意味 | |||||
| ポール・ケネデイ | 軍事に国家予算の多くを割いて軍需物資の開発や生産を行えば、軍事部門の技術革新はそれだけ大きくなると考えられます。冷戦構造時代のアメリカの軍事技術の中には携帯電話やナビゲーションシステムそしてインターネットなど、現在では民需にも大きく波及してくる技術開発が含まれていました。軍事的な手段として考え出されたものが民間に開放されそれらが民間の経済活動にも無視できないものになり得たわけです。インターネットなどは冷戦構造下で核攻撃を受けても通信手段を維持するために考え出されたものですが、その技術がこのページをも含めて多くの我々民間人でも利用できるようになったというわけです。
しかし軍事技術の最たるものと言えば兵器であることは言うまでもないと思います。現在では核兵器を筆頭にした強力な大量殺戮兵器が存在しています。核兵器の開発は第二次世界大戦においてアメリカで行われました。その開発においてはアインシュタインの『特殊相対性理論』が大きな役割を果たしたことはみなさんご承知の通りです。すなわちE=mc^2という「エネルギーは質量掛ける光速度の自乗」と言う公式が元です。核を移動し投下する手段は日本の広島・長崎の原爆投下の時点では航空機すなわちエノラゲイという名称の爆撃機でしたが、現在では大陸間弾道弾(ICBM)ですみます。すなわちミサイルです。ミサイルはナチス・ドイツのV2に示されるように近代ロケット技術から始まりました。近代ロケットは火薬のような固体燃料ではなく液体酸素と液体水素を燃料にしたものを言います。人工衛星を打ち上げるのもスペース・シャトルの打ち上げにもこのロケット技術は欠かせないものです。しかしこの技術はV2が軍事技術として開発されたように兵器としても重要な役割を持っています。 しかし兵器を経済的に見たときどのように見えてくるのでしょうか。経済活動は迂回生産から成り立っています。現在生産されているものを手段として使いながら次の生産物を生産するのです。すなわち現在存在するものを生産過程に再投入しながら次の生産物をも生み出すのです。ブラウン式テレビと言うものが開発され生産されていたところに液晶が現れると液晶テレビやパソコンのモニターなどに利用され始めます。テレビが発明されたが故にテレビ局というものが生まれニュースキャスターなどの職業も生み出されてくるわけです。テレビという手段やパソコンなどの新しい手段が生まれるとそれらを利用して新しい分野の仕事も生み出され次の生産活動や生活スタイルなどが現れてきます。それらが迂回生産という経済活動の姿です。 では、兵器を生産過程に再投入して何が次ぎに生み出せるのでしょうか。先に述べた兵器としてのミサイルを生産過程に再投入することで何かが次ぎに生み出せるのでしょうか?軍用トラックなら平時の時にも戦時体制の時にも物資や人員輸送に使えますがミサイルの場合には破壊目的以外には使い道がなく生産過程に再投入しようがないと私は思います。ミサイル技術あるいはロケット技術そのものは人工衛星の打ち上げなどにも使え放送衛星・商業衛星・自然情報収集の科学衛星・気象衛星など我々の日々の暮らしにも大きな恩恵をもたらしてくれるものを可能にしてくれているのですが、それが軍事用に使用された場合には次ぎに何も産みだしはしないと言うわけです。ある技術的な生産物を利用しながら次の生産物を作り出して行くというサイクルはミサイルの場合にはそこでとぎれてしまいます。ミサイル技術の改善は宇宙科学の飛躍にもつながるかも知れません。すなわち技術的な派生物は存在するだろうからです。しかしミサイルそれ自体には次の経済的な生産場面に再投入されると言う側面が全くないのです。従ってミサイル技術の開発はそれ自体では相手国への脅威とはなり得ても自国経済には大きな負担となるかあるいは自国経済の破綻へとつながって行く可能性があります。 軍事技術からも多くの民需に転用できる技術が生み出されていることは携帯電話やインターネットなどで明らかに証明されてはいますが、それらの技術を民需に転用し経済活動が活発化してミサイルなどのように生産過程に再投入できない軍需物資を生産しても余りある税収が得られると言うのであれば軍事技術に大きな財政的な支出をしても財政は破綻状態にはならないと言えますが、現実には冷戦構造の立て役者だったアメリカもソビエトも財政赤字や債務国への転落あるいは財政破綻を経験してしまいました。最先端の軍事技術はその重要度が低下したり国際情勢が変化したりしない限り民間に開放されることがないという性質を持っているので軍事技術の開発に費用を割いている時期とその技術が民間に開放されてたとえその技術を応用して民間の経済が活況を呈することになったとしてもそこには時間的な落差(タイム・ラグ)が存在してしまいます。すなわち重要で開発されたばかりの軍事技術は後に一般人に開放されることがあったとしても開発された当初は軍事機密とされてほとんど部外者には明らかにされない期間があるわけです。だからこそスパイが活動する場面も必要にもなってくるわけです。最先端の軍事技術を即民需にも反映させる事ができるのであれば軍事技術の開発にかかる経済的な負担もそれだけ速やかに回収できるのですが現実にはそのようなことにはならないわけです。長い歴史的な過程で軍事大国化の道を歩んだ国々の歴史を見た人がポール・ケネデイであり、それは『大国の興亡』として著されました。ましてや経済規模がそれほど大きくはない国が世界のトップレベルの軍事力を短期間で形成し保持しようとすれば財政はたちまち破綻し国民は惨憺たる生活状態に陥ることをも意味しているでしょう。北朝鮮の状態は私にはそのようなものに見えてきます。それは第二次大戦の時の日本の国内状況にも当てはまると思います。そして戦後の日本は軍事を捨てて経済オンリーでやってきた結果世界第二位の経済大国にはなりましたが、その日本であっても再び軍事大国化の道を歩もうとすればやはりこれまでの軍事大国が経験した歴史を経験せざるを得ないのではないかと私は思います。そして戦争が起きたときには戦争の当事国に物資を輸出している国は大きな経済的な恩恵(経済的利益)を得られ世界大戦のような大規模な戦争の場合には世界の鉱工業生産高は大きく伸びるのですが、戦争当事国は大きな財政負担を負わされてしまいます。
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