ブライアンの追い上げから逃げ切れるものはいないと言われている。ライダー
時代からそうなのだ。バイクの場合はもっとシビアで、4輪以上に追い上げが
凄かったと言われている彼、常に速さをキープしてきた要因もここにあるのだ。
(へッ、ここから見せてやろうか、シビックの怖さってのをな)
ロッドはさらにペースを上げていた。だが、NOSを使っていないブライアンのシ
ビックが後ろから段々と追いついてくる。
(冗談じゃないぞ!幾ら後付けターボが速いからって、テンロク相手に負ける
なんて冗談じゃない!しょうがない、もう一丁噴射してやるか!)
というと、ロッドはまたNOSを噴射!一気に加速が上がった。だが、そこに致命
的なミスがあった。ここでNOSを使ってしまえば、勝負どころでもう使えなくなる
のだ。つまり、「負け」ということに繋がる…。
(バーカ、こんなところでNOS使うだなんて、初心者がやる事だぜ)
そして、いよいよ次のコーナーが近づいてきた。と、なんとここでブライアンがNO
S噴射の準備をしていた。そして、ブレ−キングの直後、NOSを噴射!一気に
スピードがアップした。そして、リアがさらに横に向いた。ここで、信じられない光
景をロッドは見てしまった…。
(はあ?ふざけてるんじゃなねえよ!そんなのありかよ!?)
あっという間にロッドのレガシイを抜いていって、その後NOSを噴射、20秒後に
ロッドのSPがなくなり、バトル終了。ここでブライアンの勝利が決まった。
二台はPAに戻ってきた。ロッドはブライアンに話を掛けた。
「あんなところでNOSを使うだなんて邪道もいいところだ」
「NOSの使い方ってのを知らないドシロウトに言われたくないな」
「なにぃ?」
「直線で使えばいいってモンじゃないんだ、分かるか?」
「いや、俺には理解できない、どう考えたって、コーナーでNOSを使うだなんて、
馬鹿がやることだ」
「直線で使うだなんて誰でも出来る、それをコーナーで応用するとこうなるってい
ういいサンプルってことだ、今回の走りはな」
「分からない、お前の走りが」
「結構だ、それで結構、ところでジャックってやつはどうした?」
「もうバトル中だ。結果はジャックの勝利が濃厚だがな」
「それはどうかな?ハチロクだからこそ、勝利が見えて来るんだよな、あのエンジ
ン、普通の2JZじゃないんだぜ」
「2JZだと?」
「テンロクの4A−Gじゃあ首都高だとハナシにならない位使えないからな。まだ
俺のB16−Aならハナシは別だが」
「だが車が良くても、ドライバーの力量でもう決まったようなものだ」
「ならなおさらだ。奴の正体知ってるか?」
「は?」
「元トヨタのワークスドライバーなんだよ、公には出てないが、向こうだと有名な
ハナシなんだよ」
「まさか、ウソをつくなよ」
「確信じゃないが、テレビに出てたんだよ、奴にそっくりのレーサーが、しかも、名
前まで丁寧に」
「だが、ジャックのテクは本物だ」
「そりゃどうかな?ドラテクの問題じゃない、首都高での適応力の問題だ」
そして、ジャックとジョニーが帰ってきた。
ロッドはすぐジャックに結果を聞いた。
「どうだった?ジャック」
「惨敗だ、正直ショックだ」
「ウソだろ?」
「奴はレーサーだぞ、走りといい、まるでF1レーサーのようなライン取りだ、絶対
勝てるわけが無い」
「どうなってるんだよ?ジャック」
「その後、奴とのバトルを終えた時なんだ、一台のカマロが俺を抜いていってな、
相当速かった、それで二重のショックだ」
「そんな…」
Boxingのメンバーは、さっさとPAを抜け出すように出て行った。一方のジョニー
だが、なんだかモヤモヤがあるような表情をしていた。
「ナイスじゃないかよ、ジョニー」
「いや、それ以上に気になることがあってな」
「気になること?」
「ああ、カマロがとんでもないスピードで私の前でドリフトをしたんだ」
「カマロ?」
「恐らく、最近脅威になっているアメ車軍団だとは思うが」
「野朗、ついに現れたか」
「今度もまた特別連合チーム作るしかないな」
「ようし、早く済ませないとな」
「交流戦はハチロク最速決定戦の後だ」
「分かった」
どうやら突然現れたカマロについて喋っているようだった。
その頃、大黒では何か話し声が聞こえてきた。
「ドミニク、環状の奴らはどうだった?」
「シビックRの奴が速かったな、俺のシェルビーに比べたらカメだがな」
「当たり前だろう、お前のシェルビーGT500はモンスターだからな」
「エレノアっていうんだ、こいつ。とにかく素直じゃないんだよな」
「だけど、一度手なずければ」
「誰にも負けないモンスターに変貌する」
「この車の怖さってのはものすごいからな、ドミニク」
「お前のカマロだって、ここを走るような車じゃないだろう」
「それもそうだな、だがお前のシェルビーほどじゃない」
「そうだな、こうなれば、環状の威張ってる走り屋小僧をいじめてやろう」
「チョロイもんだな」
「10秒で終る」
「ゼロヨンより簡単だ」
「おいところでキョウコのやつは今日どうした?」
「奴は欠席だ」
「しかし、あいつも速くなったもんだ」
「その通り、いつのまにか俺らについてくるようになっちまったからな」
「他の奴らもそれ位成長してくれればいいんだがな」
「今度奴も出すのか?ハチロクのどうのこうのに」
「当たり前だ、だがちょっとひねった車を出すつもりだ」
「え?ひねった車?」
「普通じゃ絶対使わない車、つまり」
「まさか、”あれ”を使うんじゃあ…」
「そう、アメ車的な乗り味のハチロク、いやあのハチゴーを使うんだ」
「あのハチゴーはただものじゃないからな」
「簡単にウイリーはするわ、サスはやっこいし、コーナーだと遅いわで、いいとこな
いんだが、エンジンだけは馬鹿にならない位凄いんだぜ」
「エンジン?」
「特注のヘミエンジンを載せてある」
「何?ヘミだと?」
「そうだ、あんな3A−Uじゃあ話にならないからな」
「そらそうだろう、一回ドノーマルのを乗ってみたんだが、最低だったからな」
「ヘミハチゴーを乗りこなすには相当な技術が必要になるんだ、もちろん、並
の野朗じゃあヘミハチゴーを操る事だなんて、無理だ」
「当たり前だ」
「これにキョウコが乗るんだからな、最高に面白い組み合わせだ」
「こいつは楽しみだ」
その後、二人はどこかへ消えてしまった。その後、その二人はPAを訪れた。
そこには、ジョニ−とその一味がいた。と、二人は話し掛けた。
「あんたジョニーとか言ったな、俺はドミニクってもんだ」
「ドミニクだと?久々だな」
「もしやあのジョニーか?、こんなところでばったりだなんて奇跡だな」
「最近調子はどうだ?そのエレノアは?」
「エレノアは最高に順調だ。勝負するか?そのハチロクと」
「やめておく、あんただって嫌だろ?小排気量の車とだなんて」
「それもそうだな」
「ところで君はハチロク最速決定戦に出るのか?」
「ああ、俺じゃないがな」
「アメ車チームなのにか?」
「ヘミハチゴーだ」
「シャレにならないな」
「289ヘミを載せてある。足回りも特注品だ。やっこい足だからとにかくすべる」
「だが、足回りは普通固くするのが常識だぞ」
「わかってねえよ、俺らの特徴覚えてないのか?」
「君の特徴?」
「まあいい、今度の大会は俺らの勝利で決まりだ」
「そいつはどうかな?こっちも特別なハチロクを用意してある」
「ふん、笑えるじゃねえか」
「俺らはもう解散するんだ、それじゃあ」
「ふん、かっこつけやがって」
そして、ジョニー達はPAを出て行った。
と隣にいたカマロに乗った男が、
「何だあいつ?調子こきやがって」
「奴はジョニ−って言うんだ」
「ああいうやつ見てると後ろを煽りたくなるんだよな」
「やめておけ、やつは実力派だ」
「あんなボロのハチロクなんだぜ、俺のカマロの方が圧倒的にパフォーマンスだ
って勝ってるはずだし」
「いいか、俺はあのハチロクに木っ端微塵にやられたんだ。そこのGT500で勝負
して、あのハチロクに負けたんだ」
「ウソだろ?」
「奴のハチロクはロスでも有名なんだ。ストリートレーサーとしては四天王に入る
位凄いんだ」
「それだけ速いってことか?」
「当たり前だ。曲がってよし、飛ばしてよし、止まってよしの3拍子そろった最強の
ハチロクだ。2JZスワップは伊達じゃない」
「なんだって?2JZだと!?」
「そうだ、とんでもないモンスターなんだぜ、ヘタすると俺のGT500以上だ」
「ハナシにならないじゃねえか…」
「乗ってる本人も上手いから、無敵状態なんだよな。奴を倒した者は未だにいない」
「矛盾ってのがあるもんなんだな」
「いや、今の時代ハチロクに乗ってるってことは、極めたっていうことなんだよ。115
馬力ちょっとの4A−Gを取り除いて、それであの2JZをつんでるんだから、相当の
金を使っただろうな」
「金持ちなのか、奴?」
「そうだ、金持ちの息子で、しかも元トヨタワークスだ」
「ワークスドライバーだと?」
「そうだ、トヨタを1から100まで知っているような男だ」
「だからあんなバケモンを…」
「もうこんな時間だ、今日は解散、じゃな」
「おう」
というと、彼らはとっと帰っていってしまった。
新たな勢力がまた現れ、益々忙しくなるブライアン達、だがそんなこと以上の出来事
が彼らの身に起きる事になる…。